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022 噂の発端

 ヒューズ王国のヴァルト城の謁見の間でフォルト王にラッセ宰相が、人払いをした後に報告をしていた。


「何者かにスヤロウ将軍が殺されました」


「馬鹿な!」


「その場を目撃した者もほとんど殺されたようで、生き残りを尋問したところ黒鎧の人物が関与しているとの事ですが、他の証言が支離滅裂で犯人探しは難航しています」


「どう言う事だ?」


「その黒鎧の人物は、死体だったらしく『死体に殺された』と喚く奴が多く。他にも『身体中から火を吹いて火が爆発する人がいた』など様々です」


「死霊系の魔術師か爆炎系の能力者が敵にいたと言うことか? いや、勇者召喚に気がついた魔人達の仕業か!?」


「そうなると急いで勇者召喚をしませんと」


「生贄は揃ったのか?」


「揃いましたが実施する聖女様が、まだ見つかりません」


「どんな手段を取っても構わない聖女を探し出せ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ニュンが殺されたと言うのは、既に死んでいるので語弊だが、ニュンが傷ついた事に俺は怒っている。


 幻の相手の(よいおこない)の数値が見える眼鏡を出現させてニュンと共にかけている。数値が見えると言ってもマイナスだと赤く見えるだけで、細かい数値は見えない。細かい数値を見る道具の幻を出そうとしたが、この世界では(よいおこない)の細かい判定は神の領域で、この世界の管理者を出現させる恐れがある事が賢者の石の知識からわかったので辞めておいた。


 冒険者ギルドの活動中にニュンの鎧姿を見て腰を抜かした海賊の残党を判定して、徳がマイナスの人物を粛清していく。

 徳がマイナスになる方法は、徳がプラスの人物を殺した人と言う事を賢者の石によって知ってからマイナスの人物には慈悲かけない事にした。


 海賊組織が壊滅した事は、海賊の残党の噂話で広まった。今まで塩漬け案件だった陸路護衛がごっそり減って行く。


 話に出て来た勇者召喚のが気になるが、まずは冒険者ギルド本部の正常化が先である。


 他に溜まっているものは、危険な依頼や事件性が高く迷宮入りした物、踏破失敗案件でいかにも異世界らしい依頼だ。


 いつも通り、ギルドの受付業務をしながら、塩漬け案件を調べていく。


 気になるがのが、山にワインバーンが住み着いて、冬場になると家畜を襲いに来るので討伐してほしい。

 シルバー以上の案件だが、数年も解決しない内容には見えない。

 なんで塩漬け案件なんだ?


 賢者の石の出番だな。賢者の石を触りながら情報を得る。


『討伐対処の飛竜(ワイバーン)が見つからないのが原因です』


 え? それは討伐できないな。家畜を襲ってくる時を狙えば良いのでは?


『待ち伏せしているとワイバーンは来ないです』


 ワイバーンにそんな知識があるとは思えないが、何故だ?


『犯人は村人のヨハンです。ヨハンは召喚魔術の才能を持っていて冬場になると近所の家畜を召喚したワイバーンで襲って、家畜を隣村のポックスさんに販売しています』


 何故そんな事を?


『ヨハンの姉が元冒険者でコカトリスによる石化病にかかっています。ビックス王国では石化病の進行を止める薬はありますが治す薬は存在しません。その為、常に進行を防止する薬を飲まなくてはいけない為、狩猟と農作が難しい冬季にお金を稼ぐ為に実行している』


 待って、賢者の石と相談したら事件性がある未解決の塩漬け案件って殆ど解決出来るのでは?

 この件は、ニュンに全回復薬(エリクサー)を持たせて、ヨハンを自首させれば終わりだな。

 次だ!!


「ゲンワクさん!! 何ボーッとしてるんですか? 冒険者来てますよ!」


 隣のシルバー以上限定の受付にいる、フロイデに怒られた。

 いつのまにか、目の前に冒険者の行列が出来ていた。


「この依頼を受けたいんですが……」


「はい、この依頼ですね。こことここにサインして……」


 業務時間中に、賢者の石を使うのは止めておこうと思いながら仕事を片付けて行く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ヨハンが、目の前の銀貨を数えている。


「駄目だ、今年もお金が足りない」


 横のベット寝ている喋る事も難しい身体が石のようになっている姉を見つめる。


「あぁ、ううぅ」


 姉が声にならない呻き声をあげて、眼球だけを動かしてヨハンを見つめる。瞬きも出来ない状態だ。


「大丈夫だよ姉さん。絶対に元に戻れるよ」


 それは淡い夢なのは、わかっている。

 治す手段など伝説でしかない。

 姉と一緒にダンジョンに行った際に、私の油断からコカトリスの爪に襲われそうな時に姉がかばってくれたのだ。


 姉は既に首から上を少し動かすことしか出来ないほど石化が進行している。

 薬を飲ませたくても薬が飲めず、今年でもうダメかもしれない。


 ふと気配を感じて目線を窓に向けると、全身が黒鎧の人物が立っていた。

 え? 窓と部屋のドアを見ると開いた形跡などない。


「まさか、死神か?」


「あ! 今回はヨハンの目の前に薬を持って現れる幻と言っていたから、目の前にいる君がヨハンか?」


 何故私の名前を? まさか家畜の売買がバレたのか?

 もはや、逃げれないな。


「す、少し待ってください! いま捕まると姉が死んでしまう。必ず自首します」


「え? あ! 勘違いしてますね。これ全回復薬(エリクサー)です。飲ませてやってください。治ったら自首するって事ですか?」


「エリクサー!?」


 村では高価で珍しいガラス製の入れ物に入った薬が渡された。

 後がない事がわかっていたので、相手が何者かと疑わずに姉に飲ました。


 姉の石化した皮膚にヒビが入って行く。


 パリン!


 姉の全身から割れる音がして、石の破片が飛び散る。姉が立ち上がって、そしてヨハンに抱きつく。


「ヨハン!!」


 姉が喋った!!


「姉さん!!」


 ギュルルゥ


 謎の黒鎧の人物の腹が鳴った音が響く。


「感動の再会中に悪いけど、夜まで帰れないので自首とか明日でよいので晩御飯を奢ってくれませんか?」


 姉さんが驚いた顔をして私と黒鎧の人物を見つめてから言った。


「是非、食べていってください」


 何も聞かないで、姉が料理を作り始めた。

 私はその手伝いだ。


 何年ぶりだろう。黒鎧の人はテーブルで座って待っていた。


 料理が出来て三人で食べる事になると、黒鎧の人物が頭部の鎧を外した。


 赤毛の長髪が現れて、美しい女性が現れた。


「じょ、女性の方だったんですね!」


 驚いてそういうと、姉が口に指を当てて喋るなと指示する。


「これは、美味しそうだな!」


 三人で静かに食事を終えると……

 黒鎧の女性が、幻のように消えて行く


「ちゃんと自首しろよ……」


「姉さん! あれは一体?」


「エリクサーって御伽噺で伝説の勇者様が使った話を読んだことがあらるの。きっとそう言う事じゃないかな?」


 姉が泣いていた。

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