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002 旅立ち

 とある農民の八番目の男の子に転生してから十三年が経過した。


 今の世界は、俺が望んで転生した魔法が使用できて多種の亜人や魔族がいるファンタジー溢れる世界だ。


文化的なレベルは前世で言うと中世ヨーロッパに近く、アーサー王やジャンヌダルクなどが存在した時代に近い気がする。

魔女狩りなど実際にありそうだが、前世と違って本物の魔女がいる世界という事だ。


 転生の際に幻を見せる特殊な能力が発動したようで、神様に近い存在が記憶を全部消したと勘違いしてくれたようだ。その為に本来ほんらいは消えてしまう前世の記憶が残った状態だ。


 生まれた村は、ほぼ自給自足の僻地であって、村長以外で文字が読める者も少なく、村の周りも魔獣がうろついていて危険だったので村から外にも出れなかった。

 定期的に護衛の冒険者と一緒にくる行商人だけが村と外の玄関であった。


 前世の記憶がある事は秘密にして、少し賢い子供程度で日々を過ごしてきた。

 俺の父は村長の弟だったので、経済的には比較的に問題なく生活出来た。


 この世界では十三歳の誕生日で成人になる。

 村の自給自足で生産が出来る食料にも限りがある為に、十三歳になると人減らしが始まる。

 使えない人材から村の外へ出される仕組みになっている。


 村の人々は様々な特殊能力を持っていた。

 腕力が異常に高い人や動物と話せる人、空中から水を出せる人など様々だったが、俺の幻の能力は村の仕事に対しては役に立つものではなかった。


 体は子供でも精神年齢は記憶が残っている成人男性なので、生まれたばかりの時はやる事がなく暇だった。

 しかし幻の能力で、この世界の本を幻で出す事が可能な事に気がついた。

 驚いた事に幻の本には、俺の知らない今いる世界の事柄が載っていたのだ。

 俺の幻の能力の仕組みを考えさせられる。


 魔法と言うもので空中から火や水を出す人がいるとして、彼らは実際の火が炭素の酸化反応であるとか、水は水素と酸素が結合している物だとか考えて出しているとは思えない。

 幻の本もそう言う原理で俺の知らない事が書かれたこの世界の何処かにある本の複写本なのであろう。幻の為に実際には存在してないから本には触ることが出来ない。ページがめくれないので一定時間で勝手に捲れる魔法が付与されている幻の本として出現させている。


 初めは字が読めないで苦戦してが、絵本を参考にしたり稀に来る読み書き出来る冒険者や行商人から教わって、少しづつ学んで読めるようになった。


 読めるようになってからは常に人目が無い所で幻の本を読んで、この世界の知識をつけていった。


 仕事も手伝わない。家から出ない。人を避けながら幻の本ばかり見ている。その上八番目の子供であるなど悪い条件が重なって、本日の十三歳の誕生日に家族から不要な人物として村を追い出される事となる。


 下手に前世の記憶があった為に価値観の違いからか同い年での友人は皆無。親からも少し気味が悪いと思われて、三歳ぐらいから一緒に寝ないで別の部屋に一人で寝かされていた。

 そんな人間関係が疎遠な村からは、いつか出て来世の自分のために(よいおこない)を貯めようと考えているので、村への未練も不満もなかった。


 一番近い町迄は歩いて一週間である。

 家族から二日分の食料を持たされて、誰も見送りがいない村を旅立った。

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