017 横領犯に天罰を
今回の事件での知っている内容をムストと俺で共有した。
「ソデルの野郎! 死んだ俺が女性を襲う悪い奴になってるじゃねーかー! 死後まで貶めるか?」
「俺達が襲われたのは、ソデル男爵の指示と……しかも、清掃の依頼が安価なのはソデル男爵が国からでている清掃費を横領しているからであってるか?」
「その通りだ。だが証拠があっても握りつぶされるだけだ」
貴族対応となると俺も困ったな。
「主君? 前世で恨みを抱えて殺された私と同じだと思うので、ムストに幻の能力を話せば全て解決するとおもうぞ?」
「どういう事だ?」
「まぁ、話してごらんよ」
ムストにニュンも過去に殺された人で、俺が呼び出している事をはなして、俺が消そうと思うか寝なければムストが消えないし、次回も今の記憶を持ったまま俺が呼び出すことが可能な話をした。
「な、なんて凄い能力なんだ! 俺って本当に幻か? ゾンビみたいな感じだと思ってたぞ! 本当だ、手足もあったかいな」
じたばたして自分を触りまくって確認していた。
「これで無事解決だな」
ニュンが俺に話しかけるが、なにが解決?
「とにかく助かったぜ! 今日の夜に俺は消えるって事だな。ソデルの糞野郎の事は俺が対応してやるよ。ついでに、今後もなんか要件あったら呼び出してくれ! 娘の事は頼む! 最後に俺の能力は過去視だ」
そう言い残すと部屋から出て行った。
「解決って、ムストをソデル男爵にぶつけてしまえば良いって事か?」
「そうだ。殺したら殺した奴に殺される覚悟があるとよいな」
ニュンが微笑んでいるが、目が怖い。
「奴隷の引き取りが残っているよ。解決までは遠いさ」
「そうだな」
ムストが、また殺されないようにムストの幻のステータス能力を倍加した。
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殺されたと思ったが生き返った。いや死んだが復活したのか?
ムストがソデル男爵の屋敷へ走って行く。
体が軽い、いつもなら膝が痛むのだがまったく痛みがない、体調も良い。幻の体か……ニュンという女性が主君と言っていた男の能力は凄いな。
落ちついて考えたら、主君と言う男が起きてたら、死者すら呼び出せるって神様なんじゃないか?
まぁ呼び出されなきゃ死体だ。次も呼び出してくれるように、彼が望むと思われることはやっておこう。
屋敷でも数人しか知らないソデル男爵の屋敷に入る為の隠し通路がある井戸に飛び込む。
小さな横穴から通路に入り、暗闇の中を手探りで屋敷内部まで移動する。
地下室にでると、ちょうどソデル男爵が地下室で女性を縛って何かをしていた。
こちらには気がついていないようだ。
「新しい洗脳できるメイドが入ったのは嬉しいな。まずは洗脳の為に自我を失うほど……」
ムストが音を立てないでソデル男爵に接近して、後ろから首を絞める。
「な、な、誰だ? この地下室には鍵が! 通路からか? 通路の事を知っている奴は全員処分したは……ぐぎ、くるし……」
一瞬、過去視の能力でソデル男爵の過去を見てしまった。
吐き気がするような奴だった。
「お前がやっているのは、洗脳の能力じゃないな。ただの変態道楽だ」
「その……声はムスト? 死んだ、いや殺した筈だ。ぐあぁ」
「地獄から……いや、お人好しの神様から戻って来たぜ」
ギュルリ……
骨が折れると言うよりも骨と骨がすり合うような大きな音がしたら、ソデル男爵の首があり得ない方向を向いた。
「そこのねーちゃん。このことを証言できるか?」
「ンーンーー」
縛られて猿轡で口も押えられている為に、しゃべれないメイドが必死に首を上下していた。
メイドを解放したら、元来た通路から戻った。
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ムストは次に、自分のクラン本部へ移動する。
クランは、冒険者同士で作る集まりで大型の依頼などを受ける際に必要なグループだった。
クランの施設である場所に入ると、団員から驚かれる。
「ム、ムストの兄貴!? 死んだはずじゃ?」
「お化け?」
「え!? ムストさん?」
「俺葬式いったぞ」
「誰だ? 兄貴は死んだんだ!」
「リーダーいるか?」
「姉さんならムストさんが死んでから奥の部屋から出ないで酒浸りですぜ! ってあんた誰だ?」
驚く団員を無視してリーダーのいる部屋に入る。
「ついに幻覚まで見えるぜ。飲みすぎたか?」
部屋の奥で筋肉隆々の男に見えるが、赤い露出度の高い服には、胸の膨らみが見える。
「キティの姉貴。スラムから拾ってくれて今まで世話になったが、死んじまった。最後の義理を果たしに来たぜ?」
「うぁ、幻覚が喋ってる。って本物か?」
目をこすって飲んでいる酒を投げてムストに抱きついた。
「マジか! 生きてたのか? いや、死んだはずだ?双子の兄貴かなんかか?」
「いや姉貴、違うぜ。すまないクラン『鉄の処女』の掟を破っちまった。汚い仕事でもなんでも受けるが、殺しだけはやらないが掟だったがソデル男爵を殺してきた。クラウンに迷惑はかけれないから脱退させてくれ」
「いや、脱退も何もお前は死んでるから?」
「あ……そうだった! 混乱して訳がわからなくなってたのか。あははは……じゃあ、お別れと最後のアドバイスだ」
「何言ってんだ? お前は本当に誰だ? ムストに何故化けている?」
キティが、立てかけてあった大剣を手に取った。
「この王都には、お人好しの神様みたいな奴がいる。最近、王都の治安が良くなって来てるって姉貴が言ってただろ。調べてみてくれ。そうすれば姉貴の願いがかな……時間か……」
ムストが幻のように消えて行った。
「な? ムストだったのか? ムスト!!!」
キティの絶叫が聞こえた。