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016 幻からの依頼

 ソデル男爵の屋敷の一室で、ムストがソデル男爵に説明をしていた。


「ニュンペーという冒険者は、やばい奴だった。霧を出す魔法を使ってやがった。今の報酬では、この依頼は受けれない」


「はぁ、霧如きで何を言っている。お前のクランの誰かがやられたのか?」


「いや、被害は無かったが逃げられた。あんな事は初めてだ。報酬を倍にしてもらわなければ、この件から降ろさせてもらう。断るなら今回の件に関しては、こちらも考えさせてもらおう」


 グサ!


 ムストの腹から剣が生えていた。


「全く、欲張るからそうなる。また洗脳しないといけないなぁ。面倒くさい」


「なんだと」


 背後から剣で刺されたムストが、振り向くとソデル男爵の召使いの女性が目を赤く光らせて、女性とは思えない力で再度剣を抜いてムストに斬りかかった。


「俺の能力は、洗脳だよ。ただ条件が女性限定で一人のみに有効なのさ」


「ソデル男爵様。私を襲った冒険者のムストが油断したところを私が剣で倒した。という事で良いのですか?」


「そうだ。よく出来たね。自分の服をビリビリに破いてから役人の所に行って、そう言ったら持っている剣で自分を刺せば幸せになれるよ」


「わかりました」


「さて、次は暗殺のクランに依頼するかな」


 ソデル男爵の独り言が聞こえる中、既に息がないムストを引きずって召使いが屋敷を出て行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 何事もなく数日が経過した。

 清掃関連の塩漬け案件は、ニュンが動かなくても利益率の上昇からコウや他の冒険者が実施してくれるため次の段階に行こうと考えていた。


 冒険者ギルドの事務作業が終わって、自分の部屋に戻るとコウから報告を受ける。ムストは、ソデル男爵の屋敷に入ったそうだ。

 ソデル男爵は、都市の清掃費の管理者だったはずだ。

 点と線が繋がった気がする。

 俺達の活動で都市が綺麗になれば国から出る清掃費が下げられるって事かな?


 補足で、ムストが女性を襲ったが隙をみつけた女性が反撃をしてムストを殺してしまった。

 ショックで女性は自殺したと言う胡散臭い話も流れていた。

 真実は襲撃失敗でソデル男爵に殺されたんだろうな……


 ニュンを呼び出して相談する事にした。

 最近、仕事以外で呼び出す際は、黒鎧ではなくラフな服装で呼び出していた。


「ん? この服装は、主君の趣味なのか?」


 一般的な女性の服装なのだが、前世でもあまり着てなかった為かスカートをフリフリしている。


「いや、仕事に行くわけでも無いですから、楽な服装が良いかと思いました。今日は相談ですよ」


「悪巧みか?」


「そうなりますか? 前回襲ってきた人物が分かりました。襲撃犯は失敗したためか殺されてますね」


「殺されてる? あれだけの事で?」


「いや、俺の推理で実際はわからないですよ」


「主君の能力で、襲撃犯を出現させれば全て解決では?」


 あ、生きている人間を出現させると色々問題があると思っていたが、既に殺された人であれば問題がないのか? ニュンは、どうなんだろう?


「ニュン。きみを無理やり俺の幻の能力で、この世界に呼んでしまった。呼ばれない方が良かったか?」


「いいや、逆に呼ばれなかったら恨みによって魂が彷徨っていたかもしれない。その後の話も聞けたし……ゲンワクにも会えた……感謝の方が大きいかもしれない。人を助ける事が死後もできるなんて想像もしていなかった。ありがとう主君」


 改めて言われると恥ずかしい。ちょっと動揺してしまった。


「と、とにかく死者を幻で出す分には問題がなさそうだな?」


「本人がいないからねぇ」


 死ぬ寸前のムストの幻を出現させた。俺とニュンの前に軽装でナイフで武装したムストが現れるが胸から血を流している。


「しまった、出現させた幻が死ぬ寸前だった。治癒のイメージか?」


 死にかけているムストに、傷が治るイメージで正常な状態の幻に変えていく。


「は! おお! 腹を刺されて斬られてはずだが……あれ? 助かった?」


「いや死んだぞ」


「うお! ニュンペーと一緒に居た奴じゃないか! まさか捕まったのか?」


 黒鎧を装備していないので、一般服姿のニュンをニュンペーとわからないようだ。

 俺の顔を覚えていたので説明が楽そうだ。

 幻の能力を適当に誤魔化して事情聴取かな?


「ムストは死んでますよ。俺が死霊魔術系で呼び出した、かりそめの出現ですよ」


「ほ、本当か? 確かに怪我がない…… 本当に死んでしまったのか?」


「さて、呼び出した理由は、真実を知りたいからです。教えていただけますか?」


「あはは、そうかそう言う事かなんでも話すから、お願いがあるんだが交換条件ではだめか?」


「条件にもよりますが?」


「実は俺に娘がいることが最近分かったんだが、奴隷商人に売られていて今回の報酬で買い戻そうとしている時に殺された感じだ。今まで金の為に嫌がらせや怪我をさせたり悪い事はしてきたが、殺しはやってない。それに免じて娘を奴隷商人から買い戻してくれないか?」


 泣ける話なのか? 悪い事をしていた事には変わりがないが、憎めない感じだな。

 徳が稼げそうだしやってあげるかな。


「わかった。引き受けよう」

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