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015 幻の誘惑

 都市の清掃関連の塩漬け案件が無くなってきた。


 案件とは関係がないが都市のごみ処理の問題をギルドで介入して、前世の知識でリサイクルするシステムを作った。


 この世界では、リサイクルの概念がない。

 金属製の武器と防具などは、ドワーフの工房などで再利用される事はあるが、貴族から出る服や家具などの不用品はオークションに出るもの以外は、全て焼却処分していた。それをタダ同然で回収して材料として分別して安価で販売すると、庶民に結構売れるのだった。

 利益は少なかったが、放置されるゴミが少しはお金なるので、小銭稼ぎに運び込まれて都市のゴミが減った。

 肥料の作成やリサイクルなど新しい産業が増えた事により、無職の若者もわずかだが減った。


 (よいおこない)が、がっぽり入りそうな予感がする。


 ニュンと一緒に、貴族の引越しの際に路上に放置された不要なボロボロの家具を回収しに向かっていると、覆面をした男が現れた。


「冒険者のニュンペーだな?」


 名指し? 恨まれる事でもあったのか?

 とりあえず誤魔化してみよう。


「いいえ、違いますよ」


「お前に聞いていない。その黒鎧の奴に聞いている」


 ニュンが俺をみて、どうするかアイコンタクトしてくる。


 ニュンの出現以外で使う気は無かったが、幻の能力を発動させた。


 視界が一気に白くなる。

 ニュンの手を握って、幻で出現させた濃い霧の中を冒険者ギルドへ向かって走った。


「巻いたかな?」


「ゲンワク殿、霧が濃すぎてそれすら確認出来ないぞ?」


「すまない」


 一気に霧が晴れる。


「「え?」」


 二人で驚いて声を出してしまった。

 霧が晴れたら、何もない空間にニュンと一緒に立っていたのだ。


「これは、幻だな。ゲンワク殿の過去の話を聞いて思っていたのだが、幼少期の体験の為に今いる世界が幻じゃないかと思ったりしてないか?」


「あ、今いる世界が幻である幻を見てるという事?」


「私がいるから幻では無い。気をしっかり持って幻を制御してくれ」


 そうだ、ニュンがいるのであれば、これが幻なんだ。

 落ち着いて目を閉じて再び目を開くと、人が往来している道の中に立っていた。

 ニュンも一緒に消えてしまった。


 右手には、先程まで握っていたニュンの手の感触が残っている。


 襲われて少し動揺したのか、幻の能力が暴走したようだ。

 先程、襲ってきた奴の対応を考えながらギルドへ戻った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 襲ってきた人物の手掛かりは、簡単に見つかった。

 冒険者ギルドの受付の仕事をしていると、襲って来た男と同じ声の人物を発見する。


 レベルⅢのクラス アイアンのムストと言う男だ。

 ブロンズの昇級試験に二回落ちている。

 人間的に問題があるのだろう。


 冒険者のニュンを兄貴と慕っているコウにムストの調査をお願いしてみる。


「ニュンからコウにお願いがあるらしいんだが受けるか?」


「本当か? もちろん受けるに決まってるじゃないか」


 コウは、レベルⅡでクラス アイアンだが能力に隠密を持っている。相手に気が付かれないで尾行が可能だった。


「ニュンの兄貴は?」


「今は別件で依頼をこなしてるよ」


「わかったぜ!」


 早速気配を消してコウがムストを追跡していった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 今日の仕事も終わり、寝る前に暴走して一緒に消してしまったニュンの幻を呼び出した。


「お! 普通に戻ったみたいだなゲンワク殿」


「前から思っていたけどゲンワク殿の殿をやめて欲しい」


「ゲンワク殿は、私の主人だからな外す訳にはいかない」


「なら俺もニュンペー殿と呼ぶ事にしよう」


「な、それは困る……わ、わかった。ゲンワク……駄目だ!そうだ主君と呼ぼう!」


 黒鎧でモジモジされても、少し戸惑う。

 そういえば、普通の服を着せてあげても良いんじゃないかな?


 幻によって黒鎧が庶民的な女性の服に変化する。


「え、あ? 鎧が! これは?」


 鎧で今までわからなかったが、ニュンの胸が結構ある事に驚くし、めちゃくちゃ綺麗な顔でドキドキしてしまった。

 幻の美少女か……


「ニュン、一緒にこれから晩御飯でも食べに行こう」


「良いのか? こんな私でも?」


「ニュンが幻でも構わない……」


「主君……」


 二人で食堂へ移動した。

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