014 黒鎧の兄貴
初めにニュンと協力して実施したのは、都市の清掃関連の塩漬け案件である。
汚いからやらない案件なので、危険は全く無いから俺も業務の合間を利用して参加した。
これで徳が、がっぽり稼げるとか下心がありありだったので、笑顔でバリバリ働くのであった。
まずは馬車や牛車などから排出された路上に落ちてる馬糞や牛糞の処理である。
集めた糞は、農作物の肥料となる事は知られていたが、流通網は出来ていなかった。
そこでギルドを巻き込んで、糞を肥料に精製する工場を設立して肥料を安価で販売すると飛ぶように売れた。
その為に、今まで糞は都市の清掃費から回収費用を出していたが、糞を買い取る形になった為に糞の価格が高騰した。
今まで汚い上に安い作業依頼が、汚いが結構稼げる依頼になった為に、クラスがストーンの冒険者が多く参加して都市が綺麗になっていった。
「初めの頃は、黒鎧を着ながら糞を集めてる冒険者がいると注目を集めていたが、今や誰もみてこないな」
「人間って慣れると見向きもしないものですよ」
「初めは恥ずかしかったなぁ」
黒フルプレートのニュンが、道の馬糞をスコップですくって荷馬車に積んである肥溜めに入れていく。
「ニュンの兄貴! ここは俺らがやりますから、ゆっくりしててくださいよ!」
背後からコウと言う冒険者が、ニュンに話しかける。
初期に馬糞を集めていたら、ニュンを馬鹿にして絡んで来たのでニュンが懲らしめた奴だった。
コウは、裏では身寄りがない子供の食事を提供したりしている良い奴で、高価な鎧を着ながら糞を処理している俺達を、道楽で冒険者をやっている奴と勘違いしただけであった。
事情を聞いた俺達は集めた糞は全てコウに渡して清掃費だけもらう形にしたので、コウにとっては強くて援助してくれるニュンは神様のように感じたらしく、それ以来ニュンの兄貴と慕って手伝ってくるのだった。
兄貴と慕っているが、ニュンは顔を鎧で隠しているので性別不明だったからだけど、女性なんだけどね。
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次に実施したのは、都市の下水に巣食っている魔獣達だ。稀に地上に出てきて大騒ぎになる。
定期的な調査と討伐が必要だが、汚い、危険なのに報酬が低い。
クラスがブロンズ程の強さの人物であればすぐに終わるのだが、報酬が雀の涙レベルで誰もやりたがらない。
報酬など気にしないのでニュンが短時間で終わらせてしまった。
依頼中にデビルアリゲーターとビックマウスなどの魔獣を倒して持ってきたが、臭くて素材として無価値だった。
今後は、報酬を高くすれば塩漬け案件にならず、やる人が出て来るはずである。
糞の清掃費もそうだが、国からの依頼の報酬が低すぎる。誰かがお金を横領しているのでは?
疑問が湧き出てくる。
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豪華な飾りが多く飾ってある応接間で二人の男が会話していた。
「ソデル男爵様、国からの都市の清掃費を上げる事に失敗しました」
「俺が都市の清掃を担当してから初めてだな。何故だ? 今まで最低限の清掃で誤魔化して、費用を少しづつ上昇させて、やっとかなりの金額を誤魔化して稼げるようになったのに!」
「現状の予算で都市部の美化が進んでいると国の検査官から報告を受けて、予算を現状に止めるとの事です。冒険者ギルドが、今まで手を出してこなかったのですが、低価格で清掃活動を行なっているようです」
「はぁ? 下賤の冒険者ギルド如きが! 清掃の嫌がらせをして、都市の美化には予算が必要だと検査官に教えてやらねば」
ソデル男爵が、指の爪を噛みながら唸る。
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フロイデは体調が悪くて、最近は早く寝ている。
いつも朝早くにゲンワクに算数を教えてもらいに行っていたが、最近は行っていなかった。
夜に見る怖い夢のせいだと思うが、どんな夢を見たか思い出せない。早く寝るようにしてから全く見なくなった事も思い出せない要因だった。
なんで、ゲンワクの所に行くの辞めたんだっけ?
なんだろうゲンワクが気になって仕方がない。
恋? それはないな。
じゃあなんでだろう?
明日は、ちゃんと算数を教えてもらおう。
フロイデは、何か引っかかる気持ちを抑えながらゲンワクについて考えている内に早めに入ったベットで寝てしまった。
そう、何故か前に見たゲンワクの寝ている姿の事は全て忘れて……