013 前世のデュラハン
前世のデュラハンを呼び出すと人間だった。
名前は、ニュンペー・テミス・ゼウス。
身長百七十cm前後で剣の使い手。
赤毛の長髪に美しい美貌を持つ十八歳の女性だった。
彼女の経歴は、前世で俺が生きていた時のイギリスがある場所の出身だった。中世の時代にいたデュラハン公爵の影武者として公爵領を納めていた。優秀だった故に影武者のニュンペーの方が領民から愛されて、デュラハン公爵から妬みをかってしまい、騙されて一族全員が犯罪者として絞首刑された上に、ニュンペー本人は首を斬られて公開処刑された。
その際に首が無くなっても生き返ってデュラハン公爵一族を呪うと叫びながら……
成る程。話が歴史に残っていなかったのは、デュラハン公爵の行動を見る限り悪政だったので、抹消された匂いがする。本当の歴史が湾曲して前世の彷徨える鎧などのデュラハン伝説が出来たのかもしれない。
彼女は幻なので、隠し事を全て話しても俺が消そうと思えば消えてしまう。
だから隠し事せずに、俺の今まで事を全て話した。
「そうか、私は生き返ったのではないのだな。ゲンワク殿の幻なのだな?」
「そうなります。すみません」
「謝る事はない。私の領民達が血を繋いでイギリスと言う国があるのだろう? それを聞いただけで十分だ」
「しかし、俺が今日寝てしまえば貴方はまた消えてしまい死ぬようなものかと思って申し訳ない」
「その事だが、話を聴くとそれはおかしな話だぞ?」
「え? どう言う事ですか?」
「今の私は、前世の記憶がある。今日の私を明日また呼び出せば今日の記憶がある私の幻になるのではないか?」
「え!? あ!! そうなるのか? 魂には記憶があり肉体は容れ物にすぎない?」
「いや、そうではない。今日、私を消した瞬間の私を明日また呼び出してくれ」
「わかりましたやってみます」
そう言って今のニュンペーを強くイメージに残して彼女の幻を消した。
微笑みながら彼女が幻のように消えていった。
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次の日の業務も終わって、昨日の約束を実施する。
昨日の彼女の微笑みを思い出しながら幻を出現させる。
「ん? ゲンワク殿? 消えてないぞ?」
ニュンペーが、不思議がっている。
昨日消した瞬間からの記憶が繋がっていると言う事かな?
「いいえ、一度幻を消して再び貴方を呼び出しました」
「ゲンワク殿の記憶があると言う事は成功したと言う事ですね?」
二人で手をとって喜ぶと、ニュンペーが手を振りほどく。
興奮したのか顔を少し赤くしている。
「と、とにかく私は一度死んだ身と言うか既に死んでいますし、ゲンワク殿の話を聞く限り、その塩漬け案件を処理する事は民の為になる行動です。是非、協力させてもらう!」
「ありがとう」
「私の事はニュンと呼んでください」
「え、は、はい。ニュン。これからよろしく」
握手をして、俺の塩漬け案件の処理計画が動き出す。
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すぐにニュンを冒険者登録して冒険者カードを発行した。
驚くべき事に、水晶でのチェックで初期からレベルⅢであった。
能力も聖剣と未来視と聖女の三つ持ちである。
聖女って! 不味いだろ。その上、聖剣!!
発行したのが受付を任された俺じゃなかったら大騒ぎになっていたかもしれない。
目立たないように幻の能力でステータスは誤魔化さなくてはいけない。
異世界の人間が転移に近い形で、この世界に来ると強くなるのね。
俺と違ってニュンのクラスはアイアンからスタートになった。