表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/62

010 幻に戸惑う

 案内された部屋には、初老の男が椅子に座って多くの書類が乗った机に向かってサインを黙々と記入していた。


 エルフの受付の人が出て行くと、手を休めて俺を睨む。


「君は誰だね?」


「え? あ、ロッチの町から来たゲンワクです。ハクオウさんに言われて来ました」


「ん? それは不思議な話だ。確かにハクオウに優秀な事務処理ができる人材がいる事は聞いて呼び出したが、それは各冒険者ギルド支部との遠距離の会話が可能な魔道具で四日前に行った事だ。距離的に絶対に四日でここにたどり着けないはずだが? ここまでどうやって来たんだ?」


 しまった! これは困った。

 まさか、そんなに急に決まって急に追い出されたからスケジュール的に問題だったのか!


「ええと! 冒険者たるもの能力は他人に気安く話してはいけないとハクオウさんに教えられていますので、秘密にできないでしょうか?」


「ゲンワクの特殊な能力という事かな?」


 そう言うと机の引き出しから、過去にハクオウに出会った際に用意された水晶と同じものが取り出されて置かれた。


「触ってみたまえ」


 恐る恐る手を載せると水晶に文字が浮かぶ。


 名前 ゲンワク 十五歳 男 人間

 レベルIII

 能力 無し


 レベルⅢ?

 能力はバレないようにと思っているので幻によって無しに見えるだが、レベルがⅢになっている。

 あ、ブロンズだからレベルⅢの方がよいかと思っているからか無意識下で幻が発動しているのか?


「ふむ……紹介が遅れたね。私は冒険者ギルド本部のギルドマスターで、ライオスと言う。水晶が君に対して役に立たない事はわかった。隠蔽のなんかしらの能力を持っているね」


 誤魔化しても意味がなさそうだから、素直に答える事にした。


「は、はい。すみません。思ったように相手に思わせる能力があります」


「そうすると偽装かな? 能力を解除する事は出来ないのかな?」


 確かに解除した状態で水晶を触るとどうなるんだろう?


 再び幻の能力を使わないようにして触ってみる。


 名前 ゲンワク 十五歳 男 人間

 レベル ⅠM

 能力 幻


「能力は、幻か? なるほど納得なのだが、レベルがⅠM? Ⅰはレベル一と言う意味だがその後のMと言う表記は初めて見るものだな。興味深い。

 幻の能力は……鍛えれば複数の人に幻を見せれる能力だが冒険者向きではないな。大変レアな能力で過去に使える人を一人知っているが悲惨な最期を遂げた。使い方を誤ってはいけない。

 移動手段は秘密という事だな? まぁ同じ冒険者同士では能力を詮索しない事になっておるから詮索は辞めておこう。ハクオウからの君の報告書は読ませてもらった。大変優秀な事務員と聞き及んでいる。どうだギルド本部で働く気はないか?」


 レベルのMの意味が気になる。私の幻の能力は、複数どころか世界に対して幻を見せれるが、ここでは秘密にしておこう。


「はい! 是非お願いします!」


「おお! 良かった、これでフロイデも喜ぶな。さっきのエルフの女性の事だが短気でキレやすいがよろしく頼むよ」


「え!?」


確かに、怒らせたら怖そうなイメージはあったな。


「いや、冗談だ。そう言えばレベルⅠでブロンズは不要な誤解を招きそうだな。貸してくれ」


 ライオスが俺から冒険者カードを受け取り魔力を込めて行く。冒険者カードが更新されてレベルIIIとなった。


 名前 ゲンワク 男 人間

 レベル Ⅲ

 クラス ブロンズ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ロッチの冒険者ギルドと同じように、冒険者ギルド本部の三階にある仮眠室を俺の部屋として使ってよい事になった。仕事は明日からである。

 外の宿屋で軽い夕食を食べて、明日に備えて早く寝る事にした。


 寝る前に賢者の石を触って、レベルのMの謎を調べる事にした。


 Mとは?


『レベルは、前世のローマ数字に起因する表記です。その表記であれば、Mは千を表します。よってⅠMとは千の一つ前を表し九百九十九を表します』


 は!? ありえないだろ?

 人間で最強級でもレベルⅦで七だったのでは?


『記録更新ですね』


 いや、これは無意識に強い方がよいと思って最大レベルの幻になっているだけだ!

 何度も見ている水晶の結果も幻なんだ。じゃぁ正確に測るには寝ている時に誰かに見てもらえば可能だな?

 今後は、調べてもらえる友人を作らないとなぁと考えていると眠気が襲って来たので目を閉じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ギルドマスターになって、初めて困惑を知った。

 本部のギルドマスターであるライオス能力は、ハクオウが持っている看破の上位能力である鑑定と魔法適正である。


 嘘を言っているか本当の事を言っているか鑑定するとゲンワクが嘘をついていない事はわかる。

 しかし、鑑定によりゲンワクのステータスを読み取ろうとしても正確に読み取れないのだ。

 レベルⅠMってなんだ?

 水晶の鑑定結果のレベルにMが表示されるなど初めての事だ。

 そもそも私のレベルは、Ⅵである。

 レベルが低い相手の幻の能力など私には効かない筈だが、確かに初期は水晶の鑑定結果がレベルIIIに見えた。

 能力も無しであったが、その後の鑑定で増えていたので私がゲンワクの幻を見た事になる。

それにしても、幻の能力者とは……

過去のお伽噺の登場人物を思い出してしまった。


 何かがおかしい。だが人柄は鑑定で(よいおこない)を見る限り優秀である。

 しばらくは、様子を見ようと考えながら溜まった書類にサインを書き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ