表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/62

001 転生

 目を覚ますと真っ白な世界だった。


 瞼を閉じる事は出来ない。

 手足の感覚もない。

 ただ白い世界にいるようだ。

 見えると言うよりも感じる。


 最後の記憶は、交通事故か?


 会社の帰りに凄い速度の車に轢かれて、空を飛んだ記憶が残る。


 ここは死後の世界か?


 魂に記憶や意識があると言う説があったな。

 実際に体験すると脳は魂を入れる器であって、それ自体が記憶を司ってるのでは無いのかもしれない。


 人間よりも脳が大きな動物もいるが、実際に人間よりも頭が良かったか?


 身動き出来ないと言うか体がない気がする。

 今は魂だけの状態という事か?


『次の転生先は、何処にする?』


 子供のような無邪気な声が聞こえる。いや頭に……いや魂に響いた。


 次の……? 神なのか?


『あなたの魂にある知識の中だと神に近い存在ですが、本当の意味での神ではない』


 体がないから喋れないが考えれば伝わるようだ。

 色々な前世の知識を思い出して、この現象を表すと転生と言う事だろうか?

 魂は巡るのかな? 死んだら()だと思っていたので驚く。


 どうせなら次は夢のような魔法や冒険があるファンタジーな世界に行ってみたいな。勇者や英雄なんかいたら楽しそうだな。


『わかりました。あなたの次の世界が決まりました。前世でのあなたは、あまり良い人ではなかったようですね。転生時に前世での(よいおこない)により特殊な才能を付与して送り出すのですが、選べるものがほとんどないようですね。これでは望んだ世界ではすぐに死んでしまうかもしれません』


 それはやだな。どうにかなりませんか?


『無い状態を有る状態にする事は、(まぼろし)になってしまい……そうだ(まぼろし)であれば、私の支配している能力ですから私の判断で付与できますね。(まぼろし)なので元から無い物ですから』


 意味がわからない?


『貴方が死んだ幻を相手に見せれば誰も襲わないし、貴方が不味そうに見える幻を見せれば魔獣も襲ってこないでしょう。危険回避に使えるだけの才能ですが、何もないよりは生存率が高くなるでしょう』


 幻ですか?


『では、次の世界で貴方に幸福が訪れますよう』


 目の前の世界がどんどん明るくなって眩しく光りだす。夢から覚めた時に夢が思い出せなくなるような感じで、前世の記憶が消えてく感じがする。


 さっきの神に近い存在に、俺の記憶が消えた幻を見せれば記憶が消されないで済むのか?

 記憶が消されたら自分じゃなくなるのでは? 能力はどうやって使うんだ?


 渡されたばかりの能力は神レベルの為に、考えただけで無意識下で発動した事を、その時は気がつかなかった。


 そう考えていると、突然真っ暗になり目を開くと俺を抱く乳母と、大泣きしている自分自身の感覚が襲ってきた。

 産まれたばかり赤子に生まれ変わったようだが、記憶が消えてない?

 神に近い存在に付与された幻の能力が発動して、記憶が消されなかったようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 よいおこないが少なかった死者を送り出した後に、白しかない世界に神に近い存在が佇む。


 多くの死者の魂を導いて、通常であれば前世の(よいおこない)と交換条件で生まれる際に才能を渡していたのだが、今回は例外的な処理をした気がする。


 稀に徳が少なく、なんの能力も渡せない場合があった。先程の死者が行く世界は彼の前世と比べるとかなり死亡率が高い世界の為に、特例として自分の支配している幻の能力をそのまま渡した。

 最後に確実に前世の記憶を消して、譲渡した幻の能力を人間レベルまで下げたはずだが記憶が曖昧な気がする。


 所詮、人間レベルの幻の能力は実際には何も起きてないもので、世界の運命に関わる程の能力では無い。この世界へ過去に一度だけ私の幻の能力を付加して送り出した記憶があるが、その人物は天命よりも早く殺されていたので、それほど弱い能力だ。


 気にせずに転生先の赤子の状態を確認せずに、いつもの仕事に戻った。

 私は忙しいのだ。

 そして、神に近い存在は新たにやってきた次の死者の魂に語りかける。


 実際は幻の能力レベルが、前回と違って人間レベルまで下がっておらず、神を騙せる幻の能力のままで前世の記憶も少ししか消していなかった。

 これにより先程の転生者が世界を動かす事を、神に近い存在は想像もしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ