幼少期
なにか柔らかい感触が顔に当たる
クッションにしてはやわらかすぎる・・・
目を開けて周りを見渡そうとするがうまく首を回せない
うすぼんやりとした視界に女の人らしき景色が浮かぶ
!!!
もう一度柔らかい感触が襲ってきた
柔らかい感触に癒されながらも必死に考える
(そういえば転生する?とかいってらっしゃいとか言ってたな)
赤ちゃんから転生とは思ってなかった私はこれからの屈辱的な日々に少し絶望しながらご飯を頂くのだった
一つ勉強になったのはミルクって意外とうまいということだった
おなか一杯になって瞼が落ちそうになりつつ
(この人がお母さんなのかな)
と思いつつ深い眠りに入るのだった
3か月ほどは起きて泣き、ミルクを飲んで寝るだけの生活を送った
最近でははっきりとミルクをくれる人の顔が見えてくるようになってきた
偉そうに言うのもなんだが顔は普通だが生前自分にはもってない立派なものがあったとだけ言っておこう
うちはそれなりに裕福なようで自分専用のメイドさんがいるみたいだ
名前はリュカ
控えめに言って超絶かわいい
ハイハイができるようになってからはリュカから逃げる遊びに没頭していた
いつも泣きそうになりながら探しに来るのだがその顔が私の唯一の娯楽だった
私はどSなのかもしれない・・・少し気を付けよう
そんなこんなで何事もない時間が1歳まで過ぎたのだった
この1年でわかったことは私の親は商人で両方平凡な見た目、兄弟がいて兄が3人姉が2人ということだった
商売のほうはそれなりなのだろう
使用人もリュカのほかに2人という最低限だった
最近は姉のジュリ(3歳)が頻繁にほっぺたを触りに来る
触ってもいいのだが引っ張りまわすのだけは勘弁してほしい
「ラックスお座りって言ったでしょ」
ラックスとは私の名前だ
ニマニマ笑いながら姉に恐怖を覚えつつ私は無駄な反抗をするのであった
「姉様ほっぺ痛いからやめて」
涙目になりつつ必死に訴える
さらに上機嫌になった姉は満面の笑みである
「ラックス、姉様じゃないでしょ?ジュリちゃんでしょ?」
犬のような屈辱的なしつけが始まるのであった
「ジュリちゃんやめて」
「ラックスはジュリちゃんのこと好きでしょ?私が遊びに来てくれてうれしい?」
ない胸を張って自信満々でいつものセリフを言ってくる
「うれしいよ、うれしいから離して」
「え?好きじゃないの?」
姉が目をうるうるしながら訴えてくる
私は焦って
「好きだよ。大好きだよ」
と答えるのだった
「私もラックス好き~!」
ほっぺたを話して抱き着いてくる
そんな日課をこなしているとリュカが入ってくる
「ジュリ様こちらにいらっしゃったのですね」
天使のようなほほえみで問いかける
「リュカ、ラックスかわいいの」
「そうですねかわいいですね、ジュリ様お母様が呼んでいらっしゃいましたよ」
「お母さまが・・・じゃあ仕方ないわね。ラックスいい子にしてるのよ」
こちらをちらちら振り返りながら出ていくのであった
「リュカ助かったよ」
「奥方様が私にお命じになられたのでお礼なら奥方様に言ってくださいね」
「なら、お母様にあとでお礼言わなきゃ」
お母様は昔真っ赤になるまでほっぺたをいじり倒されたことを気にしてちょくちょく助け舟を出してくれるのだ
初めてお母様に見つけられたとき悲鳴を上げながらメイド長のシャンテを大声で呼んだのは今ではいい思い出だ
そんな温かい家族の中で私は育っていったのだった