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転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
第一章
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近付くモノ

産まれて間もなく見始めた悪夢。

その悪夢のせいかこの気配にはすぐ気付けた。

捕食者が獲物を伺う気配…


(赤子に何ができるんだってんだ!)


心の中で悪態は吐くものの、今までの生や死を思い出してしまう今世はさっさと終わってしまって全て終わりになって欲しいとも思ったりもする。

でも、そんな考えが浮かんだ後に心に残るのは今世での母:アンジェリカの遺言だった。


『あなたは強くて優しい大切な人を守れるような子に育ってね…』


目は見えず声しか聞いてない。

でも、その言葉は私に対して強く願ってくれた想い。

その想いは今までの生と死などから思い出しても初めてもらった想い。

父やミントさんも私のことを大切に思い、一生懸命悪夢で飛び起きる私に対して色々と気に掛けてくれたりもしていたが、接する時間が一瞬だった亡き母の言葉と…

何より、その母が命と引き換えに産まれたという今の命を諦めたくなくなった。

なので、赤子でありながら何かできないか、という気持ちが強くなり私は深く思い出す。

困難なんて状況は今までの生を振り返るといくらでもあった。


(そうだ!深く思い出せ… もっと、もっと…)


周囲から伝わってくる気配はどんどんと近付いてきている。

恐らく間もなく何かが現われる。


(焦るな… 慌てるな…)


トットットットット…


軽く地面を蹴る音が聞こえ、気配の持ち主達が現れた。


「ウウウゥゥゥ…」


呻り声からすると野良犬とかの類だろうか?

犬は前世で飼ってから嫌いではなく、寧ろ好きなんだが今の状況から考えるといい状況ではない。


手も足も体も満足に動かせず、目も開けられない。

そんな赤子ができること…


(魔法や魔術… なんだろうけれど、魔力は感知できてても出せない!クソッ!)


必死になって手を振り上げたりはしているが、魔力操作が上手くいかずに発動まではできてないのだ。

ただ、魔力の動きは獣達もわかるのか魔法の発動を警戒して襲い掛かってはきていない。

が、この必死の抵抗も私が諦めたらそれで終わり。


(冗談じゃない!あ、諦めてたまるか!!)


なんとか気力を振り絞りその微かな抵抗を続けていると、獣達の注意がいくつか逸れたのがわかった。


「れ、レオン!!」


「レオン君!!」


父とミントさんが戻ってきたようだ。

少しホッとしたが状況はあまり変わってないことを忘れない。


(でも、確か地割れで間が開いてたんだよな…)


そう、距離があるからこそ獣達は聞こえてきた父とミントさんの姿には目を向けるが、状況が変わらないことがわかると…


「ウウゥゥゥ…」


サクッサクッ…


さっきよりも近付いてきている。

恐らく警戒モードは終えてさっさと狩りを終わらることにしたらしい。


(ああ、産んでもらったというのに遺言を実行も守ることもなく死ぬのか… だけど… ただでは死なない!!一匹でも多く倒して生き残れるよう足掻いてやる!!)


「ああっ…!!」


ミントさんが絶望に染まった声を挙げるが私は諦めない。

獣達の気配がいよいよといったところで、再度獣達が注意を逸らした。


(一体何が…?)


そう思っていると音が聞こえた。


ヒューーー ドスッ


「ギャン!!」


何が起こっているかはわかっていないが、獣達に何かがあったようで獣達の注意が全てそちらを気にするのがわかる。

ただ、これで次に何も起こらなければ状況は変わらないので私は続けて足掻こうとしているとそこに声が聞こえた。


「激しい地震が起き、付近にいたので音の原因を調べてみようかと思ったらヒトの赤子が狼に襲われてるとはな…」


「来ていなければその赤子は食い殺されていたであろうよ。来てよかったのぅ。」


「何が来てよかったものか!ヒトの子ではないか!」


「赤子ニ種族ハ関係ナイ。強者ハ弱者ヲ助ケルモノ。赤子ハ弱ク、アザリーハ強イ。」


「フン!ヒトの赤子なんぞ助けたくもなかったわ!じゃが、産まれたての赤子に罪がないこともわかっておる。仕方がないのでここは助けておいてやる!」


「…相変わらず偏屈なババアじゃのぅ…。素直に助けると言ったらいいものを…」


「楽しみが鍛冶と酒飲みしかないドワーフ爺に言われとうないわ!」


「ハッ!無駄に長く生きておる割には胸が金床のエルフ婆に言わる筋合いないわい!!」


「なんじゃと!?この…!!」


「二人ともいいかげんにしろ。争う暇があるなら狼を駆逐するのを手伝え。こっちはちゃんと本気で駆逐してるんだ。本気を出せ。」


「「フン!」」


そう、現われた存在は言葉のやり取りをしながらも獣達を殺していた。

つまり、助けられたわけだ。

と、言うか獣って狼だったのか…

助けが来なかった場合のことを考えると寒気がする。


「これで仕舞じゃ。」


その声がした後、言葉通り狼達の気配はなくなった。

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