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転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
第一章
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旅の途中

私は森を歩いている。


右手に棍棒を持ち、左手はゴブリンの片足を持ち引き摺りながら歩いている。


しばらく歩き続けると目の前に人間が5人現われた。


見てみるとPTらしく私を見ると喚き散らしながらそれぞれが武器を持ち左右に広がっていく。


左から剣使い、僧侶、魔法使い、斧使い、槍使い


悪くないPT構成だ。

だが私はそれを見て笑みを浮かべると、左手に持っているゴブリンを左側に広がりながら距離を狭めてきていた剣を持った男へと思い切


り投げつけると同時に右側で槍を私へと向けていた男へダッシュで迫る。


剣の男はゴブリンの死体に当り、勢いに負けて背後にあった木へとぶつかり体勢を崩し、その隣で杖を持っていた僧侶のような井手達の人間は剣の男へと駆け寄る。

魔法使いは慌てて何かを呟きながら集中し始め、右側の二人の戦士は驚きながらも体を前へと傾け私へと武器を向けてくる。


私は左側の戦士の起き上がれていない状態をちらりと眺めつつ右手の棍棒を振り上げると右側の槍の男へと叩き付けた。


私の動きについてこれていない槍の男はゴキゴキと音を鳴らしつつ地面に叩き付けられ潰れたトマトのようになり、それを見た隣の斧使いは声を上げながら斧を振ってくる。

私が慌てずその斧を左手で掴むと斧使いは先程よりも叫びながら斧を引き戻そうと必死に引っ張るが私は離さない。

そしてその直後、私は何かを感じ取りフッと魔法使いを見るとそこには今にも発射されそうな火球が出来上がっている。

火球は斧使いには当らないように私を狙っていて更に大きい球となると飛んできた。だが動きが見え見え。

半狂乱へと陥っていた斧使いを斧ごと持ち上げると火球の前へ差し出し盾として使う。

火球は盾へ当り勢いよく燃え上がった。


使用済みの盾は魔法使いへとお返しに投げ付け、左手で木へと押し付けられた戦士を見てみると姿が見えない。

僧侶は魔法使いへと駆け寄り…

その姿を見た次の瞬間、私は首に痛みを覚える。

振り向こうとすると、何故か景色は首を傾げたように斜めになり痛みは激しくなる。

手足が思うように動かない。

そして、痛みは首だけに留まらず手、足、胴体へと次々と襲ってきた。

痛みに耐え切れず雄叫びを挙げると燃え上がったはずの斧使いは僧侶に回復してもらったのか立ち上がり、私へと斧を振りかぶると走りこんできている。そして僧侶は潰された槍使いへと駆け寄っていく。


(させない。回復など…)


思っては見るが体は動かず、相変わらず全身へと痛みが広がり、更に広範囲が痛んできた。

痛みに怯んでいる間に走り込んできている斧使いは斧を振り下ろし…

私の頭は真っ二つへと分かれた。












「おぎゃああああ!!!」


「レオン君、大丈夫!大丈夫よ!ああ、この子に一体何があったの…?」


「レオン、俺はここにいる!大丈夫なんだ!」


(あ、頭!頭がまっぷったつに…!体が体が…!!)


父の弟夫妻の家へと向かう旅の途中。

だけど私は病院でもそうだったように、寝る度に夢を見る。

幾千、幾万、幾通りもの生と死の夢を…

起きている間はまだ幸せだ。

母であるアンジェリカは死んでしまったが、父のアルフレッドは馬車を御していて、私をあやしてくれているミントさんもいる。


(生きてる。私は生きているんだ…)


夢を思い出し、まだ泣いているとミントさんが優しく抱きしめてくれた。


「大丈夫よ… アンジェリカさんは亡くなってしまったけど、その分私が貴方を守るわ…」


この言葉も何度も聞いている。

私が寝て悪夢に魘されながら起きた時、ミントさんが最初に言ってくれたのがこの言葉だった。

そして、この言葉を聞いて私が泣き止み穏やかになってくるのを見て、ミントさんはこの言葉を泣き叫ぶ私へと繰り返し言う。

これが常となってきていた。


「本当にレオンに何があったというんだ…」


父が疲れ果てた様子を隠そうともせず溜息混じりに呟くとミントさんが怒り出した。


「アンジェリカさんが亡くなって、落ち着いてもないのに馬車に揺られて何日も過ごしてたら何があったもないでしょ!」


「それはどうなんだが… この子の髪色が変わったこと、泣き叫び続けること… どう考えても異常だ。だろ?」


「それでも!この子は貴方とアンジェリカさんの大事な赤ちゃんよ!異常だなんて酷いこと言わないで!」


「…そうだな。でも、その子は君の実の子ではないのに君の方が親らしいな。」


父が苦笑しているが、ミントさんは私を抱きしめる力を緩め穏やかに言う。


「赤ちゃんというのは両親がわかると聞くわ。実の母… アンジェリカさんじゃないのに私の言葉を聞いて落ち着いてくれる。この子が懐き易いだけなのかもしれないけれど、レオン君が私で安心してくれる。なら、私がアンジェリカさんの分までこの子のために母をするの。」


「…アンジェリカのことは私もショックが大きい。だけど、君は君なんだ。アンジェリカの代わりじゃない。それはわかってくれ…」


こうして馬車の旅は続いていた。

寝てる時に悪夢を見て、起きて落ち着いてきたら父とミントさんの会話を聞く。


病院の先生や助手さん、そしてミントさんが産まれて間もない赤ちゃんが長い馬車旅は無理と言った。

確かに起きている間、寝ている間と四六時中ほぼ馬車に揺られるので体調は悪く、吐く事を繰り返す私だが寝て悪夢を味わうよりは遥かに耐えられる。赤ちゃんである自分には何も話しかけることもできないし、目も見えない。

何もできないので悪夢を見続けるのが恐怖なだけだ。

精神崩壊しないのがいいことなのか悪いことなのか、『加護』をもらっているはずなのに母が亡くなり、更には叔父夫妻に預けられようとしている今が幸か不幸なのか、わからないことだらけで生きるしかない。死ぬまで…

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