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転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
第一章
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転生

次に意識を取り戻すと少し辺りが騒がしかった。

とはいえ、気になるので私は目を開こうとするのだが開かない。


(あれ?これって… 転生したの?それとも今までのことはただの夢だった…?)


しかし、いくら頑張っても目を開くことはできないし、手足の感覚もおぼろげだ。

そして、最後に何か口に出そうとすると…


「う~~~~」


という言葉が発することができてようやく自分が赤子なのだということが認識でき始めた。

…のだが、ここで気付いた。


(えっ!?転生したら記憶ってなくなるんじゃなかったの!?)


『神』が言うには転生したら記憶がなくなるはずなのに自分には残っている。

それと、転生前に見せてもらった今までの生と死まで覚えてしまっている。


(でも、今生は『加護』をもらってるし大丈夫だよな)


今生での幸せな生を送れることを期待し自然と顔が緩む。

そして、だんだんと周りの音がはっきりと認識できるようになってきた。


「おお!無事産まれました!元気な男の子です!」


「可愛いお子様ですね!髪と目はお母様と同じ色で顔立ちはお父様そっくりですよ!笑った顔もまた可愛いじゃないですか!」


「先生、ありがとうございます。」


少し年配そうな声と年配の女性の声、少し疲れているような女性の声。

年配の人が病院みたいなところの先生で私を取り上げてくれた人。それに続いたのが助手っぽい人が年配の女性、そして女性の方が今生の私の母なのだろう。

そんなことを思っていると辺りが更に騒がしくなった。


「いかん!奥さん、しっかりするんじゃ!!」


「先生!妻は… アンジェリカはどうしたんですか!?」


先生の言葉の後に若い男性の声がしたのは父親にあたる人なのだろうが様子がおかしい。


(何があったんだ…?)


そんなことを思っていると母の声がする。


「あ、あなた… この子の… 名前を…」


「今は君のことだ!」


「いかん!奥さん、今は休まねば!」


「お願いします…」


「…レオン。レオンハルトというのはどうだろう?」


「勇気もありそう。強そう。でも、優しく育って欲しいわ…」


「ああ、ああ!そうだとも!この子を二人で育てていくんだ!!」


しかし、続けて聞こえてくる母の言葉は弱々しい。


「…私には無理みたい…」


「そんなこと言うんじゃない!お願いだ!俺を一人にしないでくれ!」


ここまでのやり取りで私は状況を理解してしまった。

どうやら私を産むことで母が急速に体調を崩してしまっているのだ。


(…待って!『加護』があって幸せになれるんじゃないのか!?)


混乱する私を余所に周囲はどんどん混沌とした状況を伝えてくる。


「奥様!しっかりなさって!」


「先生!アンジェリカをなんとか… お願いします!!」


「あなた… この子はあなたと私の子。大事に育ててね…」


母アンジェリカがそう言うと父が泣き始めた。


「そんな終わりみたいなこと言わないでくれ… 頼む…」


(そうだよ!いきなりお母さんが死ぬなんて嫌だ!!)


そう伝えたいと思い口を動かすが呻くような声しか出ない。


「ほら、レオンも死なないでくれって言ってる!」


「もう親バカ?大丈夫よ。あなたなら大事に立派に育てられるわ… レオン。あなたは強くて優しい大切な人を守れるような子に育ってね…」


「うっ… うっ…」


「それと… 私が死んだら、あの子と一緒になってね… あの子にならあなたとレオンのことを任せられるわ…」


「アンジェリカ?アンジェリカ!?」


父が必死に母の名前を呼ぶが以降、母の声が聞こえず、そして… 息遣いも聞こえることがなくなった…


(『加護』はどうした~~~~~!!!)


気持ちと共に心の叫びを口にすると泣き声となる。


「おぎゃあ!おぎゃあ!」


「レオン、そうか、お前もアンジェリカが… 母さんが死んだことが悲しいんだな?」


(それもあるけど… 『加護』をもらったにも関わらずいきなり不幸とか認めない!!)


私を取り上げるようなそんな感覚が伝わってくる。


「アンジェリカ… レオンを抱くこともできもせず死んでしまうなんて… うっ… うっ…」


父の言葉を聞き、私も泣き叫ぶ。

父と私の泣き声を聞いて先生と助手の人達はお悔やみの言葉を言ってきているが、泣き叫ぶ私達には届かなかった。

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