表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
第二章
18/29

日常の変化

 魔力操作をやり続けて生命力枯渇寸前まで自分を追い込む。

起きたら世話係りのレターニアさんと一緒に里の外れまで行き、そこで武術の鍛錬を行う。

その繰り返しの日々を送るようになった。

里長会議がしばらく前にあったがどうやら里の東側への討伐というのは却下されたらしい。

婆ちゃんが申し訳なさそうにわざわざ謝りに来てくれた。

聖霊様の言葉が聞こえるのは当たり前だと思っていたのがどうやら異常だったようなので討伐の件も承諾されることはないだろうと思っていたので特に落ち込むこともなかった。

だから、俺がそれからすることは決まっていた。

力を付ける。

文字通り力を付ける。

今は必死に時間を惜しみながら魔力操作を行い魔力量を増やし、武術を磨く。

普通、武術ってのは習い事やら軍人みたいに誰かから教わったり、弟子入りしたりなんかして教えてもらうものなんだけど俺にそれは必要無い。

悪夢から見る以前までの生と死から自分がその時使っていた動きを再現すればいいだけだから。

ただ問題だったのが今生での体だ。

前世と同じく慣れたヒトの体と同じなので動かし方は変わらない。

でも、夢で見ていた動きをしようとするとその動きに体が慣れていないのでとてもぎこちないのだ。

ぎこちないならどうしたらいい?

答えは簡単、ただ鍛錬すればいい。

愚直に、武術の型をなぞる。繰り返し繰り返しなぞる。

体が型通りにスムーズに動くように…

どんなことがあっても体が自然と動くように続ける。

最初はそんな俺を見てレターニアさんが驚いていたが今では見慣れてきたためか何も言わず、俺が休憩しようとした時にタオルやら飲み物を用意して終わるのを待ってくれてるくらいだ。


そんな俺に時々襲来してくる苦手な人物がいる。


「ねえ、レオン。最近、レオンの部屋へ行ってもなかなか会えないんだけど、私を()けてない?」


ミーティアだ。


「ミーティアの考えすぎだよ。大体、ミーティアには友達が大勢いるけれど俺にはいないからね。だからミーティアも友達と遊んだりした方がいいんじゃないかな?」


俺が言外に「こっちに来ないで友達と遊んでくれ。」と意思表示するのだがさすがミーティア。

変化球を返してきた。


「友達って言っても私が母上の娘だからっていうことで表面上仲良くしてこようとしてる子ばかりよ。私が何かしようとしたり、言ったりしたらみんな頷くだけだもの。そういうのって友達って言わないと思うの。そういう人達よりも、私は一時でも喧嘩したり言い争ったり素直にしてくれたレオンの方がよっぽど仲良くできてると思うわ!それにレオンには私がいるじゃない!友達はいなくても私がいるわ!」


そんなミーティアの発言を聞いて思わず考えさせられる。


(ホント、基本的にミーティアは頭がいいな。自分の母親の立場と自分自身の立場を考えて周りの友達が接してくる理由をわかっている(・・・・・・)。ミーティアってまだ十歳だろ?今の年齢でこのしっかりとした考え方ってのは将来期待されちゃうよね。ただ、そこまで頭いいならさっきの俺の言葉に隠された本心も理解して近付いてこないで欲しいんだけど…)


実際のところ何か話題や具体的にどういう遊びをするのかも決めずにミーティアは俺に会いに来るのだ。

しかも、ほぼ毎日。

グイグイと来る。

なのでできるだけ隠れて自分自身の力を上げていこうとしている俺にとってはミーティアの訪問はかなり迷惑。

一度、素直にそう言うと目に涙を浮かべて「ダメ?」と言われ、俺自身はかなりパニックに(おちい)りながら思わず「ダメじゃない。」と言ってしまったのでミーティアがさっき言ったようにほぼ毎日訪れてくるようになってしまった。

いくら生と死を何度も経験した存在だからって、綺麗で可愛いと思える異性に涙目になられたら了承するしかない。

ただ、その了承したとき、陰でレターニアさんが溜息を吐いていたのが目の端に見えた気がする。

ともかく、ミーティアは俺に会いに来る。

そして、鍛錬しようと出掛けようとしたところで今日は捕まった。

しばらく前までは風の聖霊様がミーティアが近付いてこようとしていると教えてくれていたので、ミーティアが来るまでに出掛けていたのだがどうしてか最近教えてくれない。

今度一度理由を聞いてみよう。


「ちょっとレオン。レオン?レ~オ~ン~?」


どうやら何か話しかけてきていたようだ。

俺が聞いていないとわかると頬を膨らませ俺の顔を覗きこんできている。


「ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事しちゃってたよ。」


「レオンってホント、母上の言う通りニブチンよね。」


「え、婆ちゃんそんなこと言ってたの?」


「うん、レオンは鈍いから私が苦労するってね… キャッ。」


一人で喋って一人で何やら盛り上がっているミーティアを見て俺は空を見上げて溜息を吐いた。

ミーティアはそんな俺に気付いてまたプリプリと怒り出す。


「ちょっと、私がこれだけ話しかけてるのに溜息とかかなり失礼だと思うんだけど?」


空を見ていた目をレターニアさんに向けるとそこではウンウンと頷いている世話係りさんが目に写り自分の味方はいないことを知る。


(今日の鍛錬はお預けだな…)


それにしてもミーティアは和解した後から随分(ずいぶん)と俺に構ってくる。

今まで虐めてきたときには放っておいて魔力操作をしていたのだが、構ってくると逆に魔力操作も(ろく)にできなくなる。

拒否すれば泣かれる。


(本当に扱いに困る…)


俺の生返事を聞きながら表情をクルクル変えるミーティアに俺は頭を抱えたくなった。

鍛錬かミーティアの相手。

鍛錬だけの日々が少しだけ変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ