表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
第二章
12/29

レオンの日常

 悪夢を見た後に受ける苦痛。

それは凄まじいもので、何歳になっても見ては魘され、夢の中で受けた苦痛でのたうち回った。

俺のそんな姿を最初見た時、ミーティアは目に見えてニヤリと笑ったのを俺は見た。


(碌なことにならないだろうな…)


それが当時一歳頃のことで、婆ちゃんがいない間はミーティアが隠したのか、それとも彼女が手を回したのか婆ちゃんが置いていってくれたはずの無夢丸は飲まされなかった。

そして、のたうち回って苦しんだ後は一切面倒を見てもらうことなく放置されていた。

しばらくして、のたうち回る俺に近付いてきたミーティアは


「黙れ、五月蝿い。」


と蹴り付け、俺が静かになるまでそれは続いた。

それは俺が歩き回れるようになってくるまで続き、その後ミーティアは俺の面倒を婆ちゃんとの約束通り(・・・・)見始めた。


「魔力操作のやり方を教えてやるわ。」


というと、他のハイエルフやエルフの子達も集め魔力操作を始める。

そして、俺にも操作をやらせ…

魔力を枯渇させ、さらに生命力まで枯渇寸前まで操作させる。


一度、魔力が枯渇したところで操作を止めたことがあったのだが、その時はミーティアが激怒した。


「お前、せっかく私が教えてやってるのに止めるの?」


「魔力が尽きてこれ以上は生命力を使っちゃうから…」


「はぁ?誰が私に対して口を開いていいって言ったのよ。ヒトの分際で話しかけるな。わかったならさっさと続けて魔力操作しなさい。」


「…」


俺が黙ったまましなければどうするのか、と様子を見ていたらミーティアは魔法で風を使い俺を切り刻んできた。


「うっ… ミーティア、止めてよ…」


足、手、腕、太もも、背中、腹、頬…

あらゆる場所が切り刻まれ、血に塗れていく。

最初はニヤニヤしながら見ていた他の子供達も流石にその姿を見て、顔を引き攣らせてはいたがアザリーの娘であるミーティアに逆らうような真似はしない。

止めようともしない。

そして、俺はそのまま切り刻まれ出血しすぎのまま貧血で倒れるか、生命力枯渇寸前で寝込むかどちらかに(おちい)らされるのだ。

貧血で倒れるにしろ、寝込むことになってもそこから俺は悪夢を見た。


それは五年経った今も続いている。

ただ、魔力枯渇と生命力枯渇寸前まで魔力操作をやらされたことで俺は得たものがある。

それは自分の現在の限界を知ったこと。

そして、魔力枯渇を何度も繰り返しているうちに気付いたのだが、魔力の最大値とも言える魔力量が上がっているのだ。

これに気付いてからはミーティアや他のエルフ達と一緒でないときもひたすら魔力操作を行うようになった。

今まではただ虐めに従っていた。

やられるままに任せていた。

ミーティアに対して、他のハイエルフやエルフの子達にも強くなってやり返してやるつもりもない。

アザリー婆ちゃんに対しての感謝の気持ちもあるし、理由を聞いた後だとミーティアや他の子達がヒトの子である俺を虐める理由も頷ける。

だから、放っておく。


(俺には俺のやり方がある。)


まだ誰にも気付かれてない。

でも、迫りつつある。

ハイエルフでしかも五歳年上のミーティアの魔力量、その魔力量に匹敵するほどの魔力量を蓄え始めたことに誰にも気付かれていない。

もちろん、婆ちゃんと慕っているアザリーにも、だ。


(それに、悪夢を見ていて気が付いた。これは俺の今までの生と死だ。)


もう『加護』がどうとか言わない。

本当にもらったかどうかわからないものに対していつまでも期待し、裏切られたと思って『神』を怨んでも仕方が無いのだ。

それに悪夢が俺に与えるものはもはや苦痛だけではなくなったことが昨日わかった。

だから、久しぶりに里に戻ってきた婆ちゃんに俺はお願い事があった。

俺を陰から睨むミーティアを無視して俺を抱きしめる婆ちゃんに話しかける。


「アザリー婆ちゃん、いや、里長アザリー様、お願いがあります。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ