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転生者は夢を見ない  作者: カール・グラッセ
プロローグ
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プロローグ

以前、他の小説を書いてましたが家族が亡くなり、自分自身が鬱だったこともあり途中放棄になってしまってました。

拙いないようでしたが、読んでくださっていた方々には申し訳なく思っております。


時期を空けた事もあり、多少落ち着きを取り戻してきたように本人は思っているので気分を一新させて他の話を書いてみようと思い投稿してみます。


これもまた拙いとは思いますが、生暖かい目で見守りつつよろしければ感想いただければと思います。

そこは黒い世界。

何もない。

辺りを見渡そうとするも、そもそも『目』を動かすといった動作をしようと思ったら感覚も無い。

『手』や『足』を動かしてみようと思ったが、それすら感覚も無い。


(え?何これ!?どうなってるの!?)


一人パニックに陥って泣き叫ぼうにも『口』もないようで声も上げられない。

当然、息もしてないことに気付いた時には更に恐慌状態となった。

そんな刻ときをどのくらい過ごしたのかわからない。


最初は頭を抱えたくなったができず、喚き散らしたかったがそれもできず、辺りから音が聞こえることもなく、色々試行錯誤していたけど何もできないのでやがて私は何も考えなくなった。





そして、更にしばらく刻ときが経った時、突然『声』が聞こえる。


「あ、こんなところに『はぐれ』がいた!見つかってよかった~!これで怒られなくて済むわ。」


しばらく何も考えないようにしていたせいか、この『声』に対して反応というものを示すのに時間が掛かってしまったことは仕方がないと思う。


(や、そんなことより今の私の状況を知りたいんですけど… どちら様ですか?)


口がないので思っただけなのだが、私の声無き声に対してこの『声』の持ち主は反応した。


「え!?貴方、意識あるの!?嘘!?」


(いえ、嘘ってことはないでしょう… いきなり酷い言われようですが、私は誰でここは(・・・・・・・)どこですか(・・・・・)?)


そう、今現在、私は自分が誰でどこにいるかさえわからないのだ。


取り敢えずは説明して欲しい。


「えっと… 問題…よねぇ… 説明してあげるからちょっとみせてね。」


よくはわからないが私の何かを見たいらしい。

この独り言のようなことも伝わったようで『声』は続いた。


「ちょっと待ってってば… あ、なるほど~ 貴方、前回は太陽系の地球という惑星で人間という生物だったみたいよ。」


この言葉を聞いて私は思考が一度止まった。

え、この人なんて言った?

前回は太陽系の地球という惑星で人間という生物だったみたい…?

何で過去形…なの?


「それは貴方が生を終えたからよ。人間で言うところの『死んだ』ということね。」


(…なるほど、死んだんですか… ですが、私は何一つとして覚えてないんですが?)


「普通は死んだら所謂いわゆる魂という状態になって生き物だった頃の記憶やなんかは全て失ってそれまで培ってきた知識など全部無くすの。その存在を私達は別の生き物に誕生させるの。なんだけど…」


説明してくれた『声』の様子から考えるとどうやら私の場合は記憶を失ってはいるが、言語知識などは残されている。


つまり、イレギュラーな魂らしい。


「そう!そういうこと!それこそこうやって色々考えること自体…できるはずがないの!」


パソコンでいうところのバグかよ…


「うん?バグ?あ~…、えっと、そうね。それが一番わかりやすい…かも?」


(…なぜそこで疑問系なんですかね?)


恐らく『目』があったらジト目でその『声』の持ち主を見ていたことは間違いない。


私の思考を読んだ『声』の持ち主は慌てて説明を続けた。


「大丈夫!数は少ないけれど何度か貴方のようなイレギュラーなケースはあったし、ちゃんと対応できてるから!」


今までの反応からするとこの『声』の存在はポンコツっぽい。

ホントに大丈夫だろうか…


「本当に大丈夫!任せて下さい!貴方の分かり易い言い方で言うと私は『神』なんですから!」


そう言えば死んだ後の魂を別の生き物に誕生させるとか言ってたな…

つまり、それって…


「そうです。輪廻転生?ですか?貴方の言葉で言うところのそれにあたります。」


想像上だが、この『声』の持ち主が自信満々に胸を張る姿を想像させる。


(それで、イレギュラーな魂である私はどうなるんですか?)


「いれぎゅらー?あ~、ちょっと待って下さいね。貴方の話す言葉から時々よくわからない言葉が出てくるから分かり易くするために貴方の前回の記憶を辿らせてもらいます。」


人だった頃の言葉の中に『神』でも理解不能な言葉があったことに首を傾げたくなったが、そうこうしてるうちにその辿る作業は終わったようで『神』は話し出した。


「お待たせしました!結論から言うと、確かに貴方という魂は存在自体がイレギュラーです。なにせ本当は思考能力も持たない真っ白な存在なはずなのに知識・思考するといったことができてしまうこと自体がイレギュラーですから。」


(ちなみにイレギュラーでない普通の場合はどうなっていたんですか?)


「気が付けば別の生き物として誕生して、知識やなんかも全て真っ白な… 赤ちゃんから始まります。」


(それはまた人間として生まれるんですか?)


「いえ、動物の場合もありますし、虫の場合もあります。」


(私の知ってる輪廻転生と同じ…かな?)


「そうです。なんですが、貴方の場合はイレギュラーなのでどうしようかな~と…」


その言葉を聞いて思わず溜息を吐く動作をしたくなったのはしょうがないだろう。

体が存在しないにも関わらずそんなことをさせたくさせてくれた『声』の持ち主をやはりポンコツだと思った。


「ポンコツじゃないですよ!?ちょっとうっかり対応を悩んだだけでポンコツじゃないですよ!?」


(まあ、自分の状態は分かりました。それで?私はこれからどうなるんですか?)


「えっとですね、以前とは違う世界に転生してもらうことになってます。そこで転生者としてその世界で気ままに生を全うしてもらいます。」


何気に生前はラノベを読んでいたのか、思わず『異世界転生』という言葉が思い浮かんだ。


「そうです!『異世界転生』です!分かり易くていい言葉ですね!」


(その異世界で私は真っ白な状態から誕生して生を全うしたらいいんですか?)


私の質問に『神』は同意した。


「うんうん。理解が早くて嬉しいです!」


(ちなみに何故異世界なんですか?同じ地球でもいいと思うんですが…)


フッと気になり質問してみた。


「実は生前と同じような体験をした時や何かのひょうしに生前の記憶がフラッシュバックして思い出してしまうこともあるんです。そうなると思い出した瞬間に、その生物として生きていた時の記憶や知識と思い出した記憶や知識が一度に頭の中に入ってきて発狂してしまうケースがあるんです…」


想像し難いことだが、どうやらそういったこともあるようなので異世界へと転生させ、記憶のフラッシュバックを防いでるとか…


(なるほど、事情は分かりました。それで転生前に一つお願いがあるんですが…)


「何でしょう?希望があるなら伺いますよ?」


どこぞのお店の店員さんみたいな対応だと思いながら私は希望を伝えた。


「ふむふむ… 以前までの生と死というのを見てみたい。それと魔法というものがあるような世界に転生希望ですか… 後者の方はわかりますが、前者の方は…?」


(どうせなら今まで私という魂が経験したことを見たかった。知りたかった、というところです。)


「人間として生きてきた時の知識欲というものですね。死後の魂になってもそういったことに興味を持つこと自体、イレギュラーなんですが…」


唸り、見せてもいいものかどうか悩んでいる『神』に対して伝えた。


(どうせ転生したら忘れるものならいいのでは?)


「それもそうですね。いいでしょう!」


(ありがとうございます。)


御礼を言った私の思考の中に数百を超える生と死が見えてくる。

そして、その時の気持ちやなんかも全て伝わる。

それは自分が思っていたよりも遥かに数が多く、見た生と死モノはほぼ全て終わりが悪かった。

一緒に見ていた『神』も同じ気持ちだったのか、全て見終わった後の感想が私に対して更に追い討ちをかける。


「…ここまで酷い生と死モノは見たことがありませんでした… すいません、私の管理不届きでした…」


そんな『神』の謝罪も聞こえないほど私は思考停止していた。

それほど酷かった。

しばらく経ってから、私が考えられた言葉は一つ…


(次の転生でも今までと同じような終わりなんですか…?)


「そこまでは私もわかりません!ですが、こんな悲惨な終わりにならないように私の… 『神』の加護を受けて誕生できるような、そんな世界に転生してもらいます!いえ!貴方は幸せな生を全うしなくてはいけません!」


(それを聞いて安心しました。流石に転生する時に全てを忘れているとはいえ、こんな暗い気持ちで生まれ変わりたくはないですからね…)


「あああ、そんなに凹まないで下さい!加護を受けていれば大丈夫ですから!」


(いえ、私が希望して見せてもらったことで味わった気分ですから、そこはお構いなく…)


「そんなことはないです!貴方の魂の経験を私も見せてもらわなかったら次も悲惨な終わりだったかも知れないですし!」


フォローを入れてもらったが、私が見せてと言わなければわからなかった事実である。

思考する気力が回復してきた時、それが伝わったのか『神』が説明を始めた。


「それで、次に転生してもらう世界が決まりました。どのような家族の下に生まれるのか、そこは私にも指定はできないのですが『加護付き』として産まれて貰います。」


(よろしくお願いします。)


そこで初めて私の意識の中で自分が動かされるようなそんな気分を感じた。


「これから送りますね。『加護付き』としての生を楽しんでください!」


その言葉を最後に私の意識はプツリと消えた…

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