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こちらオーバンステップ第一迷宮  作者: 言折双二
6、追放者は《彼ら》の孤児院に過ごす。
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089、狩人の目

また、更新できてない、

なんか操作ミスってるんだろうな……。


お詫びに明日は――可能な限り二回更新を。

 坊はシノリと葉っぱの容器を入手しに出て行った。

 十分な品質のものを入手してくるだろう、妥当な値段でというのも、つく。

 あの二人の組み合わせにはそういう安心感はある。


 一枚引き取って一枚提供するものなので数は少なくてもいいと思ったが、消耗品だし、普通に使うものらしいので、数百の単位で買ってくる、と言っていた。

 マルは調理作業に戻ってしまったし、リノは包み方を考えてみる、と言っていた。


 葉っぱはおおよそのサイズが決まっているようだが、二本の場合と、五本の場合と知るが漏れない包み方、そして、できれば持ちやすく見た目がいい、と非常に高い目標を立てて鼻息も荒く出て行った。


「ということで、手が空いた」

「……あぁ」


 残ったのは、ニコと俺とオーリだった。


「あー」


 オーリは何か言いたそうに、ニコのほうを見るが。

 彼女は俺の横でそれに気づかないふりをしている。

 その態度にあきらめがついたようで、オーリはため息一つを置くと口を開いた。


「これは俺の狩人の勘みたいなものが入ってるから確たる証拠はない」


 そう前置きをして。


「三日前、つまり、屋台を出した最初の日から見張られてる」

「見張り……って」

「最初は話の流れ上、ゼセウスとかいう商人から派遣された何かかと思ったけど、たぶんそうじゃない」


「そうじゃないというのは」

「それなら、お目付け役を派遣する意味が薄いし、何よりもそういう風な視線じゃない」

「視線の種類か……」


「狩人として、といったけど、孤児院の近くの山はほとんど人が入らないけど、昔住んでたあたりには、そこそこの数の狩人がいたから、狩場で他の狩人の気配を感じることもあった」


 経験上というやつなのだろうか、そして、オーリにも孤児院に来る前の過去があったという事を初めて彼の口からきいた。

 それはそれとして、狩場の狩人の気配か。動物に気付かれないような狩人の気配など察知できる気がしない。


「いや、さすがに、街の中なだけあってそこまで隠してなかったぞ……いや、隠してなかったのか、隠せてなかったのかは判断つかなかったけど」

「それは……」


 つまり、屋台を監視している奴がいたが正体及び目的は不明、と。悪意のあるような気もするということだが、それについてはよくわからない、か。


 悪意を持っていたとして、何に起因するのか、新しくできた飲食店ということで同業者に目をつけられた可能性もあるし、ゼリア商会の商売敵かもしれない、俺の知らない孤児院の因縁かもしれないし、飲み物の販売で選択されなかったお店の人間かもしれない。

 あるいは……。


(いや、さすがに……)


 ありえないだろうと頭の中で組み立てた推論を否定する。


「今のところ、何かをしてきたりとかはない?」

「あぁ、あれば衛兵なりなんなりに相談できると思うんだけど、実際的に何かをやってきてはいない。もし何かをやられたら、まぁ、リノとマルをカバーできる位置にできるだけいたけど」


「それはありがたいが……一度、孤児院に戻ってきてなかったか?」

「……あの間はあの商人のところの護衛がいたからな。兄ちゃんには言うなって言われたけど」


 あぁ、警備体制が整っていないのは減点評価とかそういうことだろうか?

 ゼセウスからの評価は、どうあってもいま気にできることではないので、意識の片隅に追いやっておく。

 どういうつもりだかわからないけど、あれが何を仕込んでいるのかはたぶん読み取れないだろうけど、


(いまさらと言えばいまさらか)


 信じようと思っている。信じている。それは多分、信じたいと思っているせいだと思うけれど。


「じゃあ、人数が増えた分何かできることがないかも含めて考えてみよう」



「どう思う?」


 オーリが納得したのか納得していないのか中途半端な表情で席を立ち、部屋を出て行ったあたりでニコが話しかけてきた。彼女に肩を借りてこちらも部屋を出ると子供たちはマルやリノの作業を見学するグループと、クヌートとシレノワに引率されて街を見回るグループに分かれていたらしい。


 見学をしているグループの女の子にそれを聞いて先ほどの監視者の話が気にかかったものの、二人がついていればそうそう大きな問題にはならないだろうと判断した。

 ギルドの構成員に手を挙げるのはよほどのリスクを覚悟しなければできることではない。


「どう思うってか」


 当然その質問は監視者の話だろうけど。


「誰が、何の目的でってことだな?」

「うん」


 不安要素である。思考を絞ってみよう。

 人間が何かをするのだからその根源は、おおよそ損得か感情だと思う。

 損得の話で言えば、


「うちの商売敵、ゼセウスの商売敵、あとは利権を手に入れられなかった飲料売りかな?」

「損得なら妥当」


 監視がエスカレートするのか、あるいは、監視で止まるのかはわからない。もしかすると、エスカレートするかどうかも含めて探っているのかもしれないが。


「こちらが動くことで、向こうの動きを誘発してどこの手かを探る、というのは一案だけど。子供たちがここにいる現状リスクが大きい」

「あと、屋台を続けるか決めてない、はず」


 まぁ、ニコの指摘の通りだ。屋台を作ったのはもともとの目的でいうと、ダンジョンから出てくる資源の消費先を確保しようという流れだったのだ。

 マルの望みと、卒業後の進路の一提案としては十分すぎるほどに機能することを示せてはいる。


 ニコの懇意の薬屋やマルが経営するのであればレストランや屋台にダンジョン産の素材を卸せるようにすれば、孤児院の安定した収入になる……はずだ。

 だが、端的に言えば、今年の冬を越すために直接必要な内容かというとそんなことはない。ゼセウスとのつなぎは作れたし、倫理と信念を曲げればマルの働き分の金を回してもらえれば、孤児院で冬を越すことはできるだろう。


「それは徹底的にリスクを避けるなら、今、屋台の撤退をしたほうがいい、と?」

「案としてはそれも。その場合は、商人にどう説明するかが問題」

「問題かぁ」


「少しでも安全面のリスクが見えたら手を引くような協力者、しかも、子供が多い、というのが好まれるとは思えない」

「……んん」


 それは確かに。


「一回で手を切る人間とは思えない」

「いや、うん。まぁ、それは組織の長としてはあり得る判断だからな」


 さて、と思ったところで、ニコは追加の質問を投げてきた。

 そして、声音からいうと、こちらが本命。


「感情の問題だった場合」

「む」

「新参者に対しての街の警戒や、子供たちだけでやっている店への好奇の視線、商人と神殿でやったお芝居の結果……なんかじゃない、可能性。想定してないとは言わせない」


 さて、どう答え、

 そして、どう……応えようか。

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