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こちらオーバンステップ第一迷宮  作者: 言折双二
6、追放者は《彼ら》の孤児院に過ごす。
73/262

073、現地打ち合わせ

ちょっと、ネット環境から離れてまして、

更新が不安定です。

お詫びというわけではないですが、本日中にもう一度の更新を目指します。

「えっと、つまり、それは門と会話する、ってこと?」


 シレノワの言い出したダンジョン師の秘奥というのは、簡単には理解しがたいものであった。


「違います、それはダンジョン師になりたいという志願者が最初に抱く勘違いに近いですね」

「――門の反応をまとめる?」

「んー、そうですね。クヌート君でしたか、貴方の言い方のほうが近いですね」


 隣を歩いている少年が誇らしそうな顔をする。


「ダンジョン師たちは塔に研修に行くのですが、そこで、どういう仕組みで情報を得ているのかを教えられます」

「そんなに、しっかりと体系化されているのか?」

「んー、最終的な部分は、感覚的なところに頼っていますし、個人の力量やセンスに依存するところが大きいので体系化しているかどうかは難しいところですがどういう建築になるのかを含めて――では、実物提示で御教えいたしましょう」


 シレノワの言葉にあたりを見回すと、そこは迷宮入り口のポイントだった。



「さて」


 数分間の小休止を取ることを全体に宣言した。

 年中組とシレノワの疲労が目についた。大工たちが、うち一人が若干の疲労を顔に出していたがそれ以外は大丈夫そうで、クヌートは早く続きが聞きたそうにうずうずしていた。

 水分をとったりなどの本当に短い小休止が終わった後みんなは自然とダンジョンの入り口の空間異常を中心に半円陣を作っていた。


「迷宮入り口というのは、通常このように、どこにも接地せず、吊るされることもなく空中に静止しています」


 言いながらクヌートはがりがりとその辺で拾った木の枝で地面に線を引く。四角形を書いている。

 最後の一辺を書いて、完成した時に、大工の一人がほぉ、と小さな声を上げた。

 俺にははっきりとはわからないが、それでも線はまっすぐでぶれなく、書き切ったときにしっかりと閉じているので、大変、綺麗な四角形を書いたのだろうということはなんとなく察せられる。


 大工なら線を引いたり、図を書いたりすることが多いだろうからその眼から見てもなかなか綺麗な図描だったのだろう。


「これを囲む、第一の目的は知っていますね?」


 疑問調の言葉はこちらに飛んできたので。


「あー、ダンジョンから魔物があふれるのを塞ぐ最初の防波堤だな」

「そうですね。では、ほかの目的は?」


 今度の疑問はクヌートに向かった。


「えーと、壊されることでそこを通ったものがいると示す。そんな感じの……なんでしょうね、ぬかるみの足跡とか? そういう役割でしょうか?」

「それも正しいですね」


「一応、あとは……中から出るものを制御するんじゃなくて、勝手にダンジョンに入ろうとする人を止めるための役割もあるはず」

「はい、いいですね。その辺まで理解できていればおおよそは問題ないです」


 にっこりとシレノワが頷くがすぐに、だけど、という言葉が挟まる。


「そこまでなら、別に壁自体に特殊な建材を使用したり特殊な建て方をする理由にはならないですね?」


 と続く。確かに、今の段階までなら、ただ頑丈に作っておけばそれで事足りるであろう。そうではないことに意味があるとすれば、


「そうですね、ダンジョン師が仕事をするためです」


 とまた、笑みで言われる。



「つまり……どういうこったね?」

「満たしてほしい要望は二点、内側は硬く、外側は柔らかく」

「そいつは……音か!」


 棟梁とシレノワがやり取りをしているのをはたから見る。

 棟梁が昔聞いた話の内容を確認するという流れが中心になっている。


 『方法』の話をした記憶はあるが、『目的』の話はしていなかったようで、当時に行ったと言われる工夫の内容をひとつづつ出して、その目的となるところを確認している。

 そして、その結果出てきた結論が先のものだ。


「そうですね。中で発生した音を漏らさず可能な限り反射する固い内装、外の音をできるだけ部屋に入れないできるだけ柔らかい外装。それが重要になります。どんな感じにそれが需要なのかは……そうですね。部屋になっていないので難しいですが後で軽く実践してみましょう」

「おう頼んだ! それにしても、なるほどなぁ、それで古着か」


 聞いていると、昔の『門の部屋』の外装――つまり、今の話でいうと外の音を吸収する部分には、古着屋で買ってきた比較的安価な布を詰め込んでいたらしい。藁や葉っぱのような素材を試した後にそうした、ということらしい。


 何のためにが残っていないのに、何を実験したのかが残っているあたり、何というか、実践的というか、重要視する点が違うのだなぁとそんな気分になる。


「堅い内装については、まぁ、二三の心当たりがあるからな」


 棟梁は心強いことを言う。


「最初はあまり高価なものでなくても構いません、その分はダンジョンの稼働率は落ちますが……落ちますが、あまり問題ないですよね?」


 質問が、今度はシレノワからこちらに飛んでくる。

 メンテナンスの時間が伸びたりとかで、ダンジョンの稼働率が落ちるということだろう。

 それが、問題ないかどうか、だが、


「問題ないな、今のところダンジョンに潜れる人員のほうが少なすぎる」


 ということだ。


「建物自体も本来は大きなギルドと同じようなものが必要ですが、最初の段階でそこまでを求める必要はないでしょう……もちろん、そのあたりは、新しくギルドの代表となるであろう人に確認したほうがいいですが」


 その言葉に、みんなの視線がこちらを向く。


「……そうだな。最初は最低限の機能でいいけど、その内容については打ち合わせをしようか」

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