表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
六章 賢者の資格
73/286

魔法都市計画1

 「というわけで、すまねぇ。やっちまったぜ、クリーク」


 腕を組みながら仁王立ちでクリークに謝罪する。

 俺は今、17階層の元『迷賊』達の村に来ていた。


 「いやいや、まったく意味がわからないぞ。というか、申し訳ないという気持ちが伝わってこない」


 失礼な。そんなことはない、まぁまぁ申し訳ないと思っている。

 クリークは集会所で羊皮紙に何かを書いているところだった。俺が扉を蹴破る勢いで入ってきたおかげで中断されてしまったが。


 「結論だけじゃ何にも説明になっていない。賢者試験に参加したのは理解したが、それがどうしてこの村を魔法都市にする計画になるんだ?それに嬢ちゃん達がいねぇじゃねーか」


 「やつらは置いてきた。成長はしているがこの速攻にはついてこれん」


 「さっぱり意味がわからないあたり、あんた相当疲れてるな?」


 彼女達は今もオーセブルクの街にいる。申し訳なく思った俺は、彼女達を置いて一人で17階層まで来たのだ。

 もちろん彼女達も一緒に行くと言い出したが、それは俺が断った。

 ここ数日彼女達も動き回っていて体が休まっていないことが理由だ。

 俺の独断で魔法都市を作ることになってしまった件をクリークに説明するだけの為に、17階層へ向かうのはさすがに疲れが心配だったのだ。

 それに、冗談のように言ったこの速攻についてこれないというのも、あながち間違いではない。彼女達は出会った時と比べれば、段違いに成長している。だが、俺が本気で走った場合、振り切ってしまうのだ。

 今回はダンジョン攻略とは関係なく、ただクリークに説明をするだけで長居するつもりがなかったのもあり、このような状況になっていた。


 「頼むから順を追って説明してくれ。おれぁ、あんたが何しようが気にしねーし、野郎共もそうだ」


 クリークは豪快に笑いながらコーヒーを呷る。

 出会った頃と比べれば、クリークの性格は丸くなった。『迷賊』をやめたのは最近なのにだ。元々乱暴な性格ではなかったのだろう。


 「……そうか。じゃあ説明するよ。えっと……」


 クリークの小さいことを気にしない性格に有り難く思いつつ、俺がここに来た理由を説明し始めるが、クリークが遮る。


 「ちょっと待った、長くなるか?」


 「まぁ、たぶん」


 「そうか、コーヒーいるだろ?」


 そう言って席から立ち、程なくして自分のおかわりと俺の分のコーヒーを持ってきた。

 本当に気が利く。実に出来る男である。


 「さぁ、いいぞ。じっくりと聞こうじゃねーか」


 クリークはニヤリと笑いながらコーヒーを口に含む。


 「ああ、賢者試験の内容については端折るぞ?」


 俺もコーヒーを一口飲むと、数時間前のことを思い出しながら話しだした。俺が魔法都市を作ると宣言した後の事を。



  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 魔法都市を作ると宣言した後、ラルヴァが怒髪天を衝く勢いで俺を罵った後、試験終了の合図もせずに会場から出ていってしまった。

 それに続くように他の賢者達も会場から出ていき、残ったのは俺と一般見学者のみとなったのだ。

 もうここにいても意味がないと思い、俺も会場から出ることにした。

 そして仲間達と合流して宿まで戻ると、裏祝勝会を兼ねて食堂で食事をすることにした。

 なぜ『裏』祝勝会なのかは、リディアに気を使って表向き残念会としていたからだ。


 「それにしても、ゴキュゴキュ、ぷはぁ、いやぁ良い試験だったッスねぇ。あ、すいません、この水おかわりッス!」


 酒は水と豪語するシギルは、火酒を一気飲みし笑いながらに言う。ウェイターも慣れたもので、シギルのこの注文で火酒だと理解している。


 「笑い事ではないです、シギル。ギル様は賢者になれなかったのですよ!」


 淑やかに飲むリディアは顔が仄かに赤い。酒がまわっているのか、怒りなのかはわからない。


 「はぁー、お兄ちゃんかっこ、もご、よかったですー」


 会話に混ざっているのかいないのかわからないエル。でも、口に食べ物を含みながら遠くを見るように呟く姿から察するに、おそらく独り言だろう。


 「リディア、結果ギルが凄いことが証明された。ん、これも食べる」


 エリーに至っては、自分用の小皿に片っ端から食べ物を移している。てんこ盛りでもう乗っからないよと言いたくなるような、食べ物のタワーの階層を更にあげるようだ。


 「エリー、それは言わずもがなです。私はギル様と出会った頃から感じていましたよ」


 リディア以外は、賢者試験の結果を全く気にしていなかった。そのリディアも魔法都市を作る宣言に関しては何も言わないどころか、昔話をし始める始末だった。

 俺も言ってしまったものは仕方がないから、しばらくゆっくりしてから今回のことをじっくりと考えるかと思っていた。

 だが、そうはさせてもらえなかった。

 仲間達の会話を聞きながら、舌鼓を打っていると一人の男が俺達の席へ寄ってきた。


 「旦那失礼しやす」


 そう話しかけてきた冒険者風の男。

 俺は賢者試験での俺の行為に、不満かもしくはファンになった人かと思ったが、それが間違いだったとすぐに分かる。


 「旦那、17階層の者です。お楽しみのところ申し訳ないんですが、聞いていただきたいことがありやして」


 それは元『迷賊』だった。

 元『迷賊』が街にいることは何も不思議な事ではない。食料や物資を確保するために常に行き来しているのだ。

 だが、俺に話しかけてくることは滅多にない。俺が17階層以外では話しかけるなと言っておいたからだ。

 目立ちたくなかったのが理由だが、それも今回の賢者試験で無意味になった。それでも彼らは俺の頼みを守って、接触は避けるだろう。

 しかし話しかけてくるということは、何かしらの用が俺にあるということだ。


 「どうした?問題か?」


 「いえ、急ぎではないんですがね、ちょっと村に変化がありやして、近く17階層に来ていただけやせんか?」


 「わかった、わざわざありがとう」


 それだけ言うと元『迷賊』の男は立ち去ろうとしたから、呼び止めて銀貨を1枚渡し、好きなようにしろといって送った。

 急ぎではないと話していたから、問題が起きたわけじゃないんだろう。しばらくは街でゆっくりして、それからでも大丈夫かな?

 そして食事の続きを楽しもうとすると、違う来訪者が俺達の席に現れた。


 「よぉ、ギル!試験楽しませてもらったぞ!面白いことになるってぇのは、ああいう事だったのか!」


 ヴァジだった。


 「ヴァジ!どうしてここへ?」


 「お前に称賛を送りに来たんだよ。それとお礼もな」


 「お礼?」


 ヴァジは怖い顔を歪ませて笑うと、怖い顔を更に怖くさせながら理由を話す。


 「お前失礼なこと考えたろ?まぁそれはいいや、なんとなく分かるしな。魔法都市の話だ」


 「あんな絵空事だと思われそうな話、価値があったのか?」


 「そりゃあ、今日試験を受けに来た他の魔法士がこんなこと言い出したら、誰も耳を貸さないがな。だが、プールストーンとお前の魔法技術を見せつけられたらなぁ。それはいいとして、礼っていうのは、村の価値が上がったからだ」


 なるほど、そういうことか。


 「お、その顔は理解したか。今商人仲間の間じゃあ、この話題で持ちきりだ。それはその村に好立地で土地を買える俺は得するってことだな」


 ヴァジには良い立地に出店できる情報を教えていた。それは俺の紹介だとクリークに話すこと。これだけで優先的に土地を買うことが出来るだろう。

 そして15階層以降のダンジョン攻略の要となる村だけのはずが、魔法技術を学べる魔法都市になる予定だとすれば、その価値は計り知れない。


 「すぐにじゃないぞ?人も物資も足りないんだ」


 「人も物資もすぐ集まる。俺の知り合いも冒険者を雇ってすぐに向かうとか言っていたしな」


 ……金の匂いに敏感過ぎだろう。

 これは早めにクリークと打ち合わせしなければいけなくなったな。


 「そんじゃ、俺はまた商人仲間達に自慢してくるぜ。礼と楽しい試験だったと言いに来ただけだからよ」


 「本当にそれを言いに来ただけか。一緒に飲んでくか?」


 俺がヴァジを引き止めると、ヴァジは俺の仲間達を見渡す。


 「いや、自分のパーティで楽しんでるんだろ?今日は遠慮しておく。しばらくは滞在するから飲みたくなったら誘うわ」


 そう言ってヴァジは帰っていった。

 しかし、思いの外反響があるみたいだ。もしかしてやべぇことしちまったかな?

 だが、来訪者はまだいた。ヴァジと入れ替わるようにある男が俺の席にやってきたのだ。


 「やあ!ギル君!」


 馴れ馴れしく話す奴は誰だと睨むと、そこに立っていたのはニコニコと微笑む賢者キオルだった。


 「はあ?お前こんなところでなにやってんの?」


 さすがに賢者が俺と会っているのはまずいだろう。試験を台無しにした上に、あんな終わり方だったのだ。

 ……そういうことか?


 「もしかして、文句でも言いに来たのか?」


 そりゃあ文句の一つでも言いたくなるか。賢者の中でも若いキオルなら、我慢できず俺に言いに来たっておかしくはない。


 「いやいや、違うよ。それに僕は賢者をやめたから、問題ないよ」


 「は?」


 「賢者に魅力はなくなったからね。君の作る魔法都市の方が僕には魅力的だ」


 魅力だけで賢者という地位を捨てられるか?


 「という嘘をついて、俺に取り入り諜報でもするのか?」


 「ないない。ほら賢者の命である白ローブ着ていないだろ?といって黒外套を試験に着る君にはわからないか。まあ他にも理由はあって、魔法学会の内情も理由なんだよ」


 詳しく聞いてみて色々納得した。

 どうやら賢者達の間には派閥があるみたいだ。ただ、あの火の賢者ラルヴァが勝手に派閥を作り、勝手に三賢人と対立しているのだとか。

 そこで俺を賢者にして、次の魔法学会の賢者会議でラルヴァの思惑通りにさせないようにしようとしていたらしい。

 俺の試験であれだけのことをしたのに、スパールが俺に賢者になることを勧めたのもそれが理由だったのだ。

 しかし、結果俺が賢者にならないことが決定すると、魔法学会はラルヴァが代表になることも確定。

 ラルヴァが代表になれば、ただでさえ魅力がなくなりつつあった魔法学会がさらにつまらなくなる。

 そして、賢者試験が終わった直後、キオルは賢者を辞めると言い出したのだ。


 「……俺のせいか?」


 「いや、ギル君のせいではないね。僕自身、迷っていたのもあった。君が言っていた通り、賢者は魔法の探求なんてしていない。ラルヴァ公は探求している気だけど、君が発表したプールストーン以上の成果は、これから先も出てこないだろうね」


 「だからって普通辞めるか?スパールの爺さんが言っていた通り、変えていけばいいんじゃないのか?」


 「その言葉は意地悪だね。賢者という地位だけを大事にしている集団に変化を求めるなんて、僕が頑張ったぐらいじゃ無理だよ」


 「……まあ俺には関係ないし、どうでもいいか。そんなことより、お前は何しに来たんだよ」


 キオルは試験の時のように、また目をキラキラさせる。


 「決まってるじゃあないか!魔法都市の話、僕も噛ませてもらえないかな?」


 キオルは17階層の村に興味を持ったみたいで、俺に協力したいと言い出したのだ。


 「元賢者に何が出来る?」


 「君より出来る。察するに人、金、物、足りてないんじゃないかぃ?」


 こいつ……、切れるな。魔法士のキオルではなく、商人としてのキオルは断然使えるかもしれない。


 「ちっ。好意からじゃないんだろ?」


 「当然だよ!それこそ商人をなめてもらっちゃ困る」


 人や資材は、喉から手が出る程欲しいが、あまり無茶な条件なら即刻断ってやる。


 「僕も君の魔法都市の一員にしてほしい!」


 さらに目を輝かせるキオル。


 「……は?それだけ?」


 「当然でしょ?かの隻眼の旅商人程ではないけれど、商人として僕は完成している。だけど、魔法士としては未熟だった。いや、今日まで自惚れていた。君という魔法士の頂点が現れるまでね!だから、君から教えてもらうことにしたんだよ」


 キオルの話は止まらない。「あの瞬間魔法陣展開は素晴らしい」だとか、「プールストーンをどんなことに使うのか?」など次から次へとだ。


 「わかった。その条件でいいが話を詰めるのは明日でいいか?今日は仲間内だけで楽しみたいんだ」


 そろそろウザくなってきたので、日を改めることを提案。


 「あぁ、そうだったね。気を使えない人間ではないんだけど、どうしても魔法と金の話になると……。それに他の三賢人より早く君と話をしたかったからさ」


 「ちょっとまて、聞き捨てならないこと言ったな?他の三賢人がどうした?」


 「あ……、それを先に話すべきだった?あの二人も賢者を辞めたんだよ。おそらく、魔法都市側に来たがるんじゃないかな?」


 三賢人が魔法都市計画に参加する気でいるのかよ。

 やべぇ、これは近々クリークと打ち合わせとか言ってる場合じゃないぐらい、話が大きくなってないか?

 明日、いや、すぐにでもクリークと話さなければいけないと、俺の勘が告げている。


 「キオル、悪いけど話を詰めるのは2、3日待ってくれないか?」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「それで俺は食事が終わった後、全速力でここに向かったというわけだ」


 17階層まで一日以上かかるが、驚異の速度を出すことに成功し7時間で到着した。時間的には深夜だがクリークが起きていてくれて助かった。

 そこまで急ぐつもりもなかったかと来る途中思ったが、何組か商人とその護衛の冒険者を追い抜いたから、急いで正解だった。あれは間違いなくここへ向かっている商人だろう。


 「なるほどな、そういうことだったか。まあ、そのへんはこれから打ち合わせするか?あんたは疲れているだろうけど大丈夫か?」


 「そんなこと言っている場合ではないだろう。修正していかないと」


 「だろうな。まあ、丁度良かったよ。俺もあんたに報告することがあったんだからな」


 そう言えば、クリークの部下が俺に伝えに来ていたな。


 「そうだったな。大した問題じゃないと聞いていたが、どうしたんだ?」


 「ああ、この広間の奥にもう一つ広間が見つかったんだ」


 俺は頭を抱えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ