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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
一章 賢者の片鱗
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ダンジョン攻略?

 作戦を決めると、急いで準備してダンジョンの入口まで戻ってきた。付近はなんの変化もない。


 「魔物はあまり外に出てこないのか?おっと、あまり余裕こいて、本当に出てこられても困るから急ぐか」


 そう言いながら燻す道具を設置し始める。

 キャンプ地で用意したのは、すぐに火を起こせるよう枝や枯れ葉を蔦で結んだような、簡易型焚き火セットと青々とした葉がついている枝を数本。

 乾ききっていない枝や葉を燃やすとよく煙がでるのだ。

 入り口に設置し終わり、ファイヤースターターで火をつけ、ある程度まで育てたら葉がついた枝をその上に置いていく。これで準備完了だ。あとは内部へと吹き込む風が勝手に仕事をしてくれるだろう。

 すぐに入り口を見張ることのできる木まで行き、登る。できる限り高くまで上がり発見されないように身を潜める。

 しばらく待っていると、ギャアギャアと声がする。魔物が違和感に気付いたのだろう。そのまま見ていると、数匹のコボルトが出てきて、焚き火を消そうと武器で叩きはじめた。

 その数は全部で5匹だった。


 「たった5匹?まだ中にいるのかな?まぁいい」


 敵の構成をチェックせねば。

 コボルトリーダー1匹、コボルトウォーリア3匹、コボルトアーチャー1匹の計5匹だった。

 中に入らなくてよかった。アーチャーが厄介だな。

 やっぱりあの穴はダンジョンだろう。完璧な天然階段でそう判断した。

 これで目的は達した。今回は様子見だ。コボルトたちがダンジョンに戻るまで、木の上で待機するとしよう。

 


 あの後、コボルト達は火を消したらダンジョンの中に帰っていったので、無事にキャンプ地まで戻ってこれた。

 椅子で一休みしてから、弓矢の練習をするために川辺へと向かう。

 丸太を立て、そこに向かって矢を放つのを繰り返し練習した。まだ確認はしていないが、スキルが上昇しているのだろう。夕方になるまでには、20メートル程の距離であれば百発百中になった。

 練習の途中、角兎が一匹迷い込んできたので弓矢で狩りをした。止まったところを矢で射貫き、なんと一発で倒すことができた。今日の晩飯にするために川辺で解体する。

 角と毛皮は売れると村の雑貨屋が言っていたので、本の知識を思い出しながら、四苦八苦してようやく解体作業が終わった。

 角、皮、肉を手に入れることができた。この頃にはもう辺りは暗くなっていた。

 テントに戻り、先程狩った角兎と野菜で野菜炒めを作ることにした。野菜はキャベツっぽい何か。名前を確認したら、キャバッジというらしい。

 フライパンがないので、鍋で作ることにした。角兎の脂身部分を鍋に塗り、肉を投入。野菜も入れ、塩コショウの簡単に味付け。

 パンと一緒にいただくとしましょう。


 「美味い。普通に野菜炒めだ。ご飯がめちゃめちゃ欲しい」


 ちゃんとした料理を食べると、異世界でもやっていけると思えるようになるのが不思議である。

 食後、満足したお腹をさすりながら、焚き火の前で水を飲みダンジョンのことを考える。

 無理して攻略する必要はないように思えるが、これには考えがあった。コボルトは自分たちで鏃や、剣などを作るという。つまり、あそこには鍛冶場があるのではないか?

 もしあるのなら、石斧などではなく、普通の武器を作ることができる。そして、運が良ければだが、マジックアイテムもあるのではと思ったのだ。

 もちろんマジックアイテムに関しては、あったらいいな程度に考えている。そんなものがこの世界に存在するのかもわからないしね。

 色々考えていたら眠たくなってきた。

 寝る前にスキルのチェックはしておこう。実はこれが一番楽しみだった。本当はしばらく見ずに成長させて、後でまとめてチェックするのが好みだが、今はどのぐらいで成長するかを確かめるためだから仕方ない。

 まずはステータス画面を出す。


 【ステータス】

  Lv 3


  力  25

  速さ 20

  知力 52

  精神 40


  ユニークスキル  勇往邁進


 「ステータスの伸びが凄いな。と言っても、他の人がどのぐらい伸びるか知らないから、これがどの程度凄いのかは不明だが。次はスキルを」


 【スキル】


 スタンド

  ・自然体 レベル1

 走法

  ・スプリント レベル2

 歩法

  ・忍び足 レベル3

 話術 レベル3

 料理 レベル1

 細工 レベル3

 鑑定 レベル2

 暗殺術 レベル2

 弓術 レベル3


 「うん。思った通り増えているな。魔物の名前がわかるようになったのは、鑑定スキルのおかげらしい。んで、暗殺術と、弓術が今持っている戦闘スキルか。ん?おぉ!使えないスタンドスキルに派生があるぞ!」


 すぐに自然体スキルを注視してみる。


 自然体……どんな状況下でも立つ姿勢を美しく保つ


 いらない子だった。

 こいつだけは、異世界に来てからずっと俺を馬鹿にし続ける。一回りして可愛く見えてきたぜ。


 「はぁ、さっさと寝よ」


 溜息を吐きつつ、テントに移動し寝袋に入った。

 夕方、角兎が出たからな。いつでも起きることができるようにしておかねば。

 なのに、ぐっすりだった。



 朝起きて熟睡したことに反省をしつつ朝食を作る。

 今朝は、干し肉で出汁をとり昨日の角兎の残りと野菜でスープにした。味付けは塩と、醤油。パンを浸しながら食べた。

 まあまあ美味しかった。やはり醤油があるだけでも旨味に奥深さがでる。

 朝食を食べ終わり、ダンジョン攻略のための準備をする。昨日と似た作戦だがなんとかなるだろう。

 簡易型焚き火セットを作り終えたら、装備を確認。ナイフは腰に、石斧は手に持ち、弓は左肩に掛け矢筒を背負ったら、いよいよ攻略開始だ。

 昨日倒したコボルトを引きずって、潜伏する木の根元に置いておく。そして、昨日と同じくダンジョンの入り口に行くと簡易型焚き火セットを置き、火を付け葉のついた枝を燻した。

 昨日と同じように急いで木に登り様子を覗う。すると、またコボルト達がギャアギャア言いながら出てきた。


 「よかった、数は昨日と同じだな。予定変更なし。後は……、こっちまで来てくれるかな?」


 そのうち火を消し終わったコボルト達が戻ろうとするが、一匹が昨日倒したコボルトの死体に気がついたようだ。4匹が俺の隠れる木の下に集まってくる。ダンジョンの入口で様子を見ている最後の一匹はコボルトリーダーだった。

 コボルトアーチャー一匹と、ウォーリア一匹が死体を調べ、残り二匹が散らばり辺りを警戒している。

 いよいよ戦闘開始だ。

 一つ深呼吸し、俺は飛び降りてアーチャーの頭に石斧を叩きつけた。頭が変な形になって崩れ落ちる。即死だろう。

 隣にいるウォーリアが驚いているが正気に戻す気はない。

 すぐさまナイフを抜き、ウォーリアの首を斬る。首を押さえ倒れていく。

 他のコボルトの位置を確認。リーダーが異変に気が付き大声を上げながら走ってきた。その声に反応して他のウォーリア二匹もこちらに走ってくる。

 俺は弓を肩から外し矢を番え一番近いウォーリアに狙いを定めた。

 そして小さく息を吸い止めてから、矢を放つ。吸い込まれるようにウォーリアの目に突き刺さった。

 残り二匹。

 二匹は俺を挟むようにして、様子を見ている。

 このウォーリアは他の奴らと違い剣ではなく金槌をもっていた。もう一匹のリーダーは、倒したコボルトたちが持っていた剣とは比べ物にならないくらい良い剣を持っている。しばらくお互いに様子見が続く。

 見合っていても仕方ない。

 ナイフをケースにしまうと石斧を上段に構えてから、リーダーの方へ走り出し斧を振り下ろした。

 だが、剣で防がれた。すぐさま左足でみぞおちあたりに前蹴りを放つ。2メートルほど吹っ飛んで転がった。すぐ追撃しようとしたが後方からもう一匹のウォーリアが走ってくる気配がする。

 すぐ真後ろまで迫って来ていた。

 俺は回し蹴りを腹に当て怯ませ、石斧でウォーリアの肩あたりを叩いた。派手に転んだが、まだ生きている。すぐ近づきナイフを抜き、心臓に一突き。残り一匹。

 振り返るとリーダーが剣を振りかぶっていたので、バックステップし距離をとる。

 剣を空振りしたので、距離を詰め石斧を横に薙ぐ。が、また剣で防がれた。その際に、運が悪く蔦が切れてしまい、石が外れてただの木刀になってしまった。

 でも負ける気はしない。剣の打ち合いで剣術を少しでも勉強した日本人に勝てるわけがない。

 リーダーは片手で剣を持ち、ただ振りかぶっているだけだ。俺は剣を垂直に構える八相の構え。

 相手も何かを感じたのか、攻撃してこない。静かな時間が流れている。

 そのまましばらくの間、睨み合いが続いた。

 とうとう焦れたのか、リーダーが踏み込み、振りかぶっていた剣を振り下ろした。

 俺はその剣を上から叩くように木刀でいなし、すぐに顔面へ叩きつける。そして左足へと連撃。たまらずリーダーは膝をつき、顔を押さえている。

 そんな様を冷静に見て、ナイフを腕の隙間から喉へ突き刺してやった。これで五匹殲滅だ。

 戦闘が終わった瞬間に嫌な汗が吹き出し、息が乱れた。緊張がとけたのだろう。無事に倒せてよかった。

 息を整えたら、今倒したコボルトリーダーの剣を拾い上げる。明らかに他の剣とはレベルが違う。これは予想だが、コボルトが作ったものではないはずだ。人間を襲って手に入れたものだろうか。しかし、刃はかけ、ところどころ錆びている。使い物にならないだろうが、木刀よりは良いのでそれを少しの間使うことにした。

 そして、ダンジョンの入り口へ向かう。まだ、近くにいるかもしれないから中に向かって大声を上げてみる。たくさん出てきたら、速攻逃げよう。

 しかし、声もしなければ気配すらない。意を決して、中に入ってみた。


 「マジか。これは予想外だ」


 なんと、ダンジョンは地下1階しかなかったのだ。

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