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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
一章 賢者の片鱗
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武器作成、魔物との遭遇

 早朝に目が覚めた。無事に朝を迎えることができたということは、魔物は出没しなかったのだろう。

 普通なら、こんな危険なキャンプは一人でするものではないが、ユニークスキルのおかげか、なんの恐怖も抱かずぐっすりと眠ることができた。

 さて、まだ日は完全に登っておらず、うっすらと明るくなった程度だがやることは多い。武器の作成だ。

 だがまずは、昨夜の食欲不振が嘘のように腹の虫が鳴いているから、干し肉とパンで朝食を摂ることにするか。

 ただの干した肉だが、よく噛めば味が出て中々に美味い。パンも硬いが、口内の水分を根こそぎ吸われることに目を瞑れば、それなりに美味しく食べることができた。水を飲み食休みをして、焚き火を持続させるため燃料の太い木を投入しておく。

 それじゃあ、材料を手に入れにいくか。



 時間を掛けて納得のいく材料を探してきた。真っ直ぐな木と、割った石。川辺で石を叩きつけて完璧な形になるまで粘ったのだ。それと、昨日採取した蔓で材料は揃った。

 ナイフを使って真っ直ぐな木を削っていき、木刀のように仕上げる。先の部分を縦に切り込みを入れ、そこに石の破片を挟み昨日取ってきた蔓でグルグルと巻き付ければ、石斧の完成だ。

 しょぼいなどと馬鹿にしてはいけない。頭に直撃すれば、致命傷だろう。割れた石はナイフにもなる便利アイテムなのだ。

 準備はできた。持ち物はリュックの中にロープを入れただけで、キャンプ道具一式はここに置いていく。武器はナイフと石斧。

 これでまずは椅子を回収に向かう。

 山の入口に目印として置いた積み上げた石の位置から突入。

 木に傷をつけた目印を辿り、奥へ進んでいく。かれこれ20分程進んでいくと、遠くの方に椅子と机らしきものが見つかった。

 しかし、様子がおかしい。誰かが椅子に座っているのだ。


 「なんだ?動物か?……いや、ちがうな」


 咄嗟にしゃがみ、木の陰に隠れる。目を凝らしよく確認する。

 犬のような顔をした魔物がいた。コボルトだ。


 「マジか、あれが魔物だよな?……どうしよう。少し時間を置いて出直せば、ここから離れてくれるかな?ん……?」


 コボルトは椅子に座り、俺が二日前に買ったビールを片手に、コンビニ惣菜の焼き鳥を貪り食っている。

 俺の大事な椅子に、俺の許しなく座るだと?

 その上、俺が汗水垂らして稼いだ金で買った食料を食いやがった。気の抜けたビールだとか、腐りかけの焼き鳥であろうと断じて許さん。ギルティ!

 この瞬間にあの魔物は俺が倒すべき敵となった。

 決めたなら行動は早かった。匍匐しながら背後へと回り込んでいく。

 回り込んだら、今度は中腰になり、静かに近づいていく。すでにナイフは抜き右手に逆手で握っている。背後1メートルまで近づいた。

 石斧を地面に音を立てずに置くと、素早くダッシュ。左手で口を抑え、右手のナイフを心臓に突き刺した。生命力が強いのか、まだ暴れていたから、さらに2度3度とナイフを心臓に突き刺してやった。

 そこまでして、ようやく事切れた。

 これが、はじめての魔物との戦闘だった。生物を殺したというのに、なんの感情も沸かない。これもユニークスキルのおかげなのか?ブチキレたのもあるか。頭に一瞬で血が上ったけど、俺ってこんなにキレやすかったんだな……。

 とにかく、殺っちまったもんは仕方ない。色々と覚悟決めるか。

 コボルトの首を掴み、投げるように椅子から降ろす。コボルトが座っていた椅子には土がついていた。


 「あーあー。汚すなよ、まったく。」


 そう言いながら土を払って、ようやく落ち着いた。

 落ち着いてから、他にも魔物がいる可能性に気が付き身を低くして見渡すが、幸いにも気配はなかった。


 「魔物はいないな。よし、では早速」


 椅子に座ってみた。あー、やっぱいいわぁこれ。長時間座っていても、腰に負担がかからないように体を包み込み、さらに絶妙な高さの肘掛けが本を持つ腕を支えてくれる。俺の体が少し小さくなったが、それでも完璧に役目を果たす、最高の椅子だ。あぁ、読書してぇ。

 少しの間、幸せに浸ってから、俺がステルスキルしたコボルトを見る。

 俺よりも背が小さく、それほど強い魔物ではないのだろう。しかし、マーデイルから聞いた情報だと、群れる上に武器を扱うとか。その武器も自分たちで作るというのだから、油断できない。

 コボルトをじっと見ていると、名前が浮かび上がってきた。

 

 【コボルトアーチャー】


 魔物名まで表示される機能があったのか?それともスキルかな?

 それよりもアーチャーってことは……。

 辺りを見渡すと木に弓と矢筒が立てかけてあった。椅子から降り、弓を手に取る。

 ショートボウだ。粗雑だが、十分弓としての役割は果たすだろう。矢もかなり雑ではあるが、(やじり)が鉄製だ。薄い防具なら貫くだろう。良いものを手に入れた。今日は弓の練習でもしよう。

 そういえば、ここから山を登ってみたことなかったな。少しだけ行ってみるか。

 弓と矢筒、石斧とナイフを持って登ってみると、5分もしないうちに森を抜けた。辺りに岩石が目立ってきた。だが、一箇所だけ不思議な場所があった。

 ほとんどの岩石は、上層から転がってきてここで止まったという感じだが、その一箇所は地面から大きな岩が生えてきたという見た目をしている。そしてその岩に穴が空いていて、地中まで潜ることができそうだった。


 「確認しておくか」


 慎重に近づき、穴の中を覗く。地中へと続く天然の階段がある。奥の方には微かに明かりが見えた。

 完璧な階段だ。……完璧?天然なのに?あり得ない。自然はそう人間の都合良く地形を作ってはくれない。絶対とは言わないが、俺がこの時この瞬間にそれを見つけることがあり得ない。

 つまり、これはファンタジー要素ってことだ。

 そして、内部には灯りを必要とする何者かがいる。

 ゲームの知識から判断するに、魔物の巣かダンジョンってところか。

 数日前なら、間違いなく探検している人間だって思い込んでいただろう。しかし、俺は獣人や耳の長い種族を見てしまった。

 さらに、ついさっきコボルトと遭遇している。

 中に魔物がいると決めつけた方が良い。

 すぐにでもこの場から離れ、椅子を回収しできる限り遠くに避難するのが正しいのだろうが、もし攻略することができるなら、便利アイテムを入手できるチャンスだ。

 魔物の巣でもダンジョンでもそう相場は決まっているしな。


 「とりあえず、中にどんな魔物がいるか調べたほうがいいな」


 ヤバそうなら逃げて、倒せそうならそのままダンジョンを経験するのもいいだろう。

 まずは、椅子と一応机もキャンプ地に運ぶか。



 椅子がある場所まで戻り、椅子をロープで縛って担ぎ、机は手に持ってテントまで運んだ。それから安全にダンジョンの中の敵を調べる方法を考え、一つの結論に行き着いた。

 よし、燻そう。

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