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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
三章 迷宮都市の光と闇
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冒険者ギルド本店

 迷宮都市オーセブルクの冒険者ギルドは本店である。元々は歴史の長い王都オーセリアンが本店であったが、世界で一番冒険者が集う街である迷宮都市オーセブルクへと移転。そして数々の高ランク冒険者を生み出している。目標をオーセブルクダンジョンの踏破とし、だが今なお達成出来てはいない。

 という内容の羊皮紙が、ここ迷宮都市オーセブルク冒険者ギルド本店の入り口にある掲示板に貼ってあった。


 「わざわざここに移転させたのか」


 「それは、どの街の冒険者ギルドでも有名な話です。冒険者の集まる人数が段違いらしいですから」


 俺達は今、その冒険者ギルド本店に来ている。中に入ろうとした所でエルがこの羊皮紙に気が付き、読んでいたところだ。リディアが言う通り冒険者の数が違うから、ギルドの建物が非常に大きい。どのような建物かと言われれば、地球のベルギーにあるアントワープ中央駅にそっくりだ。城を探している人が、その駅を見たら勘違いしてしまう程、素晴らしい駅なのだが、俺達もまさに城かと勘違いした程だ。

 これ程の建造物を、よくもまあこの危険なダンジョン内に作ろうと思ったものだ。


 「中に入る、です」


 「そうッスね。とりあえず行くッスよ」


 ギルドの中に興味を持ったエルが言い出すと、物怖じしないシギルがさっさと中へと歩き出した。

 内部は俺が考えていたのとは違っていた。きらびやかなイメージだったのだが、大正時代の銀行みたいな装飾だった。シックなインテリアで統一され、何故か古めかしい。だが、とても落ち着く雰囲気だった。

 受付だけで20以上あり、中には個室まで用意されている。依頼を貼る掲示板が壁にズラッと並び、全て達成出来ないのではと思ってしまうほど、ものすごい数の依頼書が貼り付けてあった。

 その掲示板を眺めている冒険者の数も数えられないくらいだ。


 「本店というだけあって規模が違うな」


 「確かにヴィシュメールと比べると凄いのがわかりますね」


 「人も多いッスねぇ」


 「でも、エル達、変な目で見られない、です」


 エルが言う通り俺達を変な目で見るような冒険者はいない。俺達は非常に目立つパーティだ。美女ぞろいもそうだが、ドワーフやエルフもいるし、俺の格好も悪目立ちするからだ。だが、誰も気にする様子がない。

 それは、この街では亜人の冒険者も数多くいるのと、俺みたいに奇抜な格好をする者も多いということだろう。

 俺としては地球で着慣れた、ただのスーツなんだけどな。この世界ではやはり変な服の趣味をしている若造にしか見られないのだろう。

 だが、そんな俺達を見もしないということは、それなりに忙しいということだろう。


 「あのちょっとよろしいですか?」


 俺達がぼーっと冒険者達の様子を見ているといきなり声をかけられた。受付にいる女の子だ。

 田舎者だとバレたか?

 とりあえず、呼ばれたからには行かないとならない。そう思い、その女の子がいる受付へと行ってみた。


 「あの今呼びました?」


 「はい!あの、もしかしてヴィシュメールから来たギル様とその御一行様でしょうか?」


 なぜバレた?いや、それよりも何故俺達を知っている?


 「あ、いえ、ヴィシュメールのミリアは私の妹です。手紙で聞いていただけですよ」


 俺達が不思議に思い黙っていたらそんなことを言った。ミリアというのはヴィシュメールの冒険者ギルドで受付嬢をし、俺達がお世話になった人だ。


 「ああ、あの受付嬢のお姉さんですか?」


 「はい!妹からもしこの冒険者ギルドに顔をだすことがあれば、手助けしてほしいと言われてまして」


 「ああ、そういうことですか。妹さんには大変お世話になりました。俺はギルと言います。それでこっちにいるのが……」


 俺はメンバーの紹介をした。そして俺達はシギル以外Cランク以上の冒険者だが、同時に新米でもあると説明した。だがその辺りも手紙に書かれていたらしかった。


 「色々聞いていますよ。あ、私はマリアと申します。どうかお見知りおきを」


 「何を聞いたか気にはなりますが、とりあえずよろしくおねがいします」


 「はい。それでですね、その話をギルドマスターにお話したらぜひとも会いたいと言っていまして……」


 マジか、ギルドマスターに関わると絶対やべーことに巻き込まれるからなぁ。でも会わないわけにはいかないか。


 「ですので、一応ギルドマスターにお伝えしてきますので少々お待ちいただけますか?」


 「ああ……、はい。」


 俺が了承すると、すぐに知らせてきますと言って、奥へと消えていった。


 「またこのパターンですね」


 「え、ヴィシュメールでもこのパターンだったんスか?」


 「あ、いえ、正確には違いますけど、登録してすぐにギルドマスターに目を付けられてしまいまして」


 「いったい何をやったんスか」


 「ギルお兄ちゃんが、エルを守ってくれただけ、です」


 ギルドマスターに目を付けられたとリディアが言うと、何故かシギルが俺を見て何をやったか聞いてきた。何故か俺だとバレていた。でも、エルが恥じらいながら俺を擁護してくれたから、シギルも「なら仕方ないッスね」と言ってくれた。

 話をしていたら、すぐにマリアが帰ってきた。


 「大変お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうなので、こちらへどうぞ」


 そう言うと俺達を連れ、応接室へと案内してくれた。俺達を椅子へ座わらせると、「またお話しましょうね」と言い、応接室を出ていった。あのミリアのお姉さんだけあって、とても話しやすそうな人だった。

 さて、またこのパターンだが、一体この本店のギルドマスターはどんな人なんだろうか。


 四人で椅子に座りしばらく待っていると、ドアがノックされた。返事をすると入ってきた人は、妙齢のとても綺麗な人だった。それどころか、スタイルが抜群だった。

 胸元が大きく開いたドレスを着ていて、大きな胸が強調されている。

 もしかして秘書みたいな人かな?


 「遅くなってすまない。私はこの冒険者ギルド本店のギルドマスターをしている、アンリという者だ。よろしく頼む」


 ギルドマスターだった。リディアが年をとったらこんな感じになるんだろうなって人だな。俺達は会釈をすると、アンリは微笑み、話を続けた。


 「ギル君だね?ヴィシュメールのグレゴルさんとうちのマリアから、ある程度の話は聞いているよ」


 俺達と話したいって思ったのはあのジジイのせいか。変なこと言ってないだろうな?


 「英雄の逸材だって?」


 本当にあのジジイは余計なことしか言わねーな。


 「それはグレゴルさんが勝手に言っているだけですよ」


 本音だ。俺は自分の事をそんな風に思ったことはないし、思いたくもない。英雄は使い捨てだと俺は思っている。良いように使われそして捨てられる、そんな存在などなりたくないね。


 「ふむ。まあ、それはいいとして、グレゴルさんが面倒を見てくれと言っていたからね、こうして不躾だが呼び出したというわけだ」


 それは有り難いが、何か裏があるのかと思ってしまうな。俺が訝しんでいると視線だけで察したのか、アンリは笑う。


 「別に新人を利用しようなんて思っていないから安心していい。なぜなら、この街には君達よりランクが上で、名も売れている輩がごまんといるからね」


 なるほど、そのとおりだ。俺達より頼りになる奴がこの街には腐るほどいる。厄介な問題が起これば、もっと上の冒険者が出張ってくるだろう。


 「それなら安心です。なんせダンジョンの事やこの街の事を何も知らないのですから」


 「そうだね、君達がダンジョンでの生活に慣れ、それなりに稼ぎ出したら重要な依頼をするかもしれないからがんばってほしい。グレゴルさんも情報だけ与えれば、後は勝手にやると言われてるからね」


 情報は欲しかった所だ、この際しっかり聞いておくべきだろう。

 俺達が知っておきたい事、この街で知っておくべき事をアンリに聞いてみた。


 色々な情報が手に入った。

 まず、このダンジョンは現在判明している階層は44階層だと言われている。まだ踏破されておらず、一体どこまで下れば踏破出来るのかすら分かっていない。だからこそ、このダンジョンの攻略には色々な意味で価値がある。

 そして、この街だ。迷宮都市オーセブルクはオーセリアン王国とブレンブルク自由都市が共同で管理しているが、それ以外の国の貴族や重要人物もこの街へ来ているらしい。彼らは自分たちも甘い蜜を吸おうとしていて厄介な人物達だ。彼らと事を構えれば、面倒なことになると言われた。だが殆どは、高級住居地区にいるから普通に生活していれば大丈夫とも言っていた。

 魔物の事も色々聞き、メモ帳に書いておいたから戦うときにでももう一度確認しよう。


 「後は犯罪者だね。ダンジョン内でも、この街の中でもそれなりの数が跋扈している」


 それはなんとなく予想していた。ほぼ毎日、詐欺、盗み、殺人それ以外にも諸々の問題が起こっていて、隠れ潜んでいる犯罪者の数は判明していない。この街の衛兵や警備をしている人達が頑張ってはいるが、今の所、減る見込みはないから巻き込まれないように注意してほしいとも言われた。


 「都会は怖い所ッスねぇ」


 「エル、怖い、です」


 「皆で気をつければ大丈夫ですよ、エル」


 俺も気を引き締めないといけないな。彼女達をしっかりと護らないと。


 その他にもダンジョンでの心構え等も色々教えてもらうことができた。思いの外、丁寧に教えてくれたおかげで、ある程度の疑問は解消された。


 「ありがとうございます。これでなんとかダンジョンに潜れそうです」


 「そうかい、それならば良かった。君達冒険者が魔物を毎日倒せばそれだけこの街が安全になるし、君達の利益にもなる。だから、がんばってほしい」


 そして、出来る限り死なないようにと、最後に言われた。


 「あ、そうだ、ついでにシギルも冒険者登録してもらえよ」


 「んー、別にしなくてもいいッスけど、登録しておいたほうがいいッスか?」


 シギルがアンリに尋ねる。アンリはあるに越したことはないと返事した。

 サポート役であるシギルも一緒にダンジョンに潜るのだ。俺は鍛冶に集中した方がいいのではと言ってはみたが、出来る限り一緒に行動したいとシギルが言うので許可したのだ。

 冒険者登録は確かにしておいたほうが得だと俺も思う。無理に依頼を受ける必要もなく、登録費だけで良いのだからしておくべきだろう。

 俺がそう言うと、シギルも納得しギルド登録を済ませた。そして、アンリにステータスとスキルのチェックもしてもらった。



 【シギル】


 ステータス

 Lv  3


 生命力  240

 魔力   90


 力  12

 速さ 5

 知力 5

 精神 10


 スキル

 鍛冶    レベル6

 細工    レベル4

 剣術    レベル3

 鑑定    レベル4

 魔力操作  レベル1


 これがシギルのステータスとスキルだった。やはりと言うべきか、生命力と力はそれなりの成長が見込めそうだ。そして、スキルも予想していた通りだった。ただ、ハンマーや槌を使うのは剣術に分類されるみたいだった。

 シギルも羊皮紙に書いてもらうと、それなりに嬉しいみたいでにんまりしながら羊皮紙を見ていた。

 そういえば、リディアのステータスやスキルは見たことがないな。今度教えてもらうか。


 「さて、お世話になりました。そろそろ行きますよ」


 俺がそういう言って立ち上がるが、アンリは俺のことを見て驚いていた。

 ちっ、スキル見やがったな。


 「覗きとはいただけませんね」


 少し大きな声で言うと、アンリは我に返り困ったように笑った。


 「すまないな。気になってしまって……。他言はしないから許してほしい」


 「まあ、減るもんじゃないし構いませんが、面倒はごめんですよ」


 「わかっているさ」


 その会話を最後に部屋を出た。アンリが驚くということはそれなりに希少なスキルを持っていることになるな。本当に問題が起きなければいいが。


 さて、これで必要な情報は集まった。明日からはダンジョンに潜ってみようかね。もちろん安全第一にね。

 こうして俺達は応接室を後にしたのだった。

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