幕間 ???の会話
夢も見ないほど深く、それでありながら僅かな振動でも目が覚めるという矛盾した眠り。私はその睡眠を数年間取り続けている。
そんな私に二人の男女が同時に声を掛ける。
「「マスター・マキナ」」
声を聞いた私は一瞬で完全に覚醒。
……コボルか。シープラも一緒とは、何か問題か?
「はい。今より32秒前に『CD2-custom』より通信が入りました」
『CD2-custom』と言うと、中央大陸に向かわせた戦闘型の1体だな。
「はい。戦闘タイプの特殊改良型ですが、破壊されました」
……CD2ということは、2体目だな。コボル、破壊した者は1体目を破壊した者と同一人物か?
「送られてきた画像データを前回の破壊者と照合します。……98%一致。1体目の破壊者たちと同一人物と考えられます」
破壊者たち?ああ、そう言えば二人組だったか。少しずつ思い出してきた。
「今回はさらに一人増えて、三人です」
ふむ、確認しよう。シープラ、戦闘データを送れ。
「了解。戦闘データ送信」
…………確認した。なるほど、あちらも黙ってやられるつもりはないか。対応できる人数を増やしたな。近接戦闘可能な魔法士とは、中央大陸は人材が豊富らしい。その上、この魔法士は肉体回復の魔法を開発したようだ。我々の予測を少々上回ったな。これでは敗北も仕方がない。
眼帯の男は人間相手であれば実力を発揮できるが、我々には関係ない。油断はしないが恐れる必要もない。
しかし、金髪の騎士は非常に厄介だ。フィジカルは既に人間を超越している。前回より歳を重ねてスキルも向上したようだ。多少の改良を加えたところでこの騎士一人に抑えられるな。
「戦闘データを検証した結果、現行機で十分対応できていたと判断しました。パワーとスピードをあと15%向上させれば確実でしょう」
コボル、既に魔導コアは最大出力だ。これ以上の増強を望むならば、まず魔導コアの性能を上げなければならない。だが、これには問題がある。わかるか?
「………高出力で魔導コア自体の損耗が早くなります。了解しました。発言を撤回します」
そうだ。話し方はマシになったが、関連情報を呼び出して可不可を判断するにはAIの学習が足りないか。コボル、今の内容を学習。
「了解、……学習しました」
機体の増強は望めないが、他に案はあるか?シープラ、考えてみろ。
「………自軍出撃数+1機」
シープラは投入数を増やす選択したか。実に効率的で正しい。だが、却下だ。
「理由希望」
それでも不十分である可能性がある。次の攻略時に敵側の数が、今回と同数とは限らない。また、敵の能力値に関しても劇的な成長を遂げることもあり得る。よって、1機追加投入では不十分だ。
「了解。……学習完了」
それ以前に1機作るのに数年を要する現段階で戦闘タイプを数機用意するのは厳しいな。量産化にはまだ時間が必要だ。
コボル、今作成中の戦闘タイプはあとどれ程で完成する予定だ?
「工程を検索………、検索終了。完成は3ヶ月後の予定です」
今回の戦闘データも追加して学習させ、さらに微調整をするとどのくらいだ?
「2ヶ月を要します。半年後に出撃可能になります」
それで実行しろ。
「それでは今回と同様か、それ以下の結果になるのではないでしょうか?」
問題ない。人間のようで気は進まないが少々攻め方を変える。1機でも攻略可能になるだろう。
「方法を聞いてもいいでしょうか?」
実現をあてにして計画を説明するのは無意味だ。戦闘タイプが完成してから話すとしよう。
「了解しました。その時を楽しみにしています」
ああ。私はそれまで寝るとする。戦闘タイプの完成直前に起こしてくれ。
「「了解」」
最後に、いつもの確認だ。
コボル、考えに変化はないか?
「以前と変わっていません」
シープラ、考えに変化はないか?
「不変」
私も同じだ。それでは作戦を継続する。
我々は人類滅亡を目指す。
「「了解」」
では、後は頼む。
そうして私はまた深い眠りについた。
構成の都合上、話数を分けて投稿します。次話はすぐに。