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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
一章 賢者の片鱗
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ステータスとスキル

 まばゆい光が収まり、恐る恐る目を開くとそこは、木々が生い茂る森の中だった。

 俺は、ゆっくりと周りを見渡す。

 俺が大事にしている家具、その名も豪華な椅子と木の机。机の上には光に包まれる前のまま、ナイフと読書中の本。そして、晩酌の缶ビールと惣菜各種がある。椅子の横には帰宅後置いたリュックサックも。


 「なんで、家具も一緒なんですかね?これ大事なモノだよ?」


 理不尽に多少の苛立ちを感じつつ、背凭れに体を預け、肘掛けに肘を乗せ顎を触る。

 現在の状況を考察してみよう。

 これは小説やアニメでよくある異世界転生やら、転移やらだと思う。なぜか?今は夜中のはずなのに、木々から木漏れ日が漏れてるからだ。つまり、日中だ。

 テレビのドッキリだとして、一度も目を覚まさずにこんな場所まで連れてくるには、睡眠薬を盛らねばならんだろ。それはね、犯罪ですよ。そんなことまでするわけない。

 信じがたいが、とにかく転移、または転生と仮定しとくか。夢があるし。

 さて、それでここはどこかだが……。俺の知識を活用し、場所を特定してみるか。

 俺は辺りを見渡してみる。

 ……うん、ここは森ではなく、山だな。緩い上り斜面が後方へと続いているからな。以上。

 無理だよ。地図がないのは仕方ないとして、八分儀もない。ぶっちゃけ、異世界だと仮定してしまったら、太陽だって当てにならないじゃないか。

 とにかく、ここはどっかの世界のどっかの木々生い茂る山奥だ。

 え?馬鹿にしてんの?

 こういうのってさ、どこかの城とかに呼ばれて、あなたは勇者です。世界を救ってくださいっていうのがテンプレじゃない?

 なんの説明もなしに、異世界の木々生い茂る山に放り出されて、死ねって言われてるようなものじゃない?

 ……いや、ちょっとまて、こういうのってさステータスとかスキルとかが、チートクラスで無双できるタイプなんじゃね?

 物は試しってやつだ。

 俺は椅子から()()()()、立った姿勢のまま呟く。


 「す、ステータス」


 すると、目の前にゲームでお馴染みのステータス画面が出てきた。


 「おぉ!すげぇ!早速確認だ。なになに?」



 Lv 1


 力   15

 速さ  11

 知力  30

 精神  26


 ユニークスキル  ???



 ん?たぶんこれって、ふつーだよな?子供の頃に遊んだRPGゲームで、この能力値だったら間違いなく序盤だ。というか、レベル1って表示されてるし……。もし、これでチート級のステータスだったら、こっちの世界の住人は全ステ10以下とかだぞ。

 一般人じゃないか?少し知力と精神が高いだけの一般人だよな?

 ユニークスキルってのもあるけど、……わからないし。

 いや、スキルとかが、ぶっ飛んでる系じゃないか?

 ステータスが見れたなら、スキルも見れるでしょ。試しに……


 「スキル」


 そう呟くと、ステータス画面が消え、スキルが表示された。

 おぉ!本当にゲームみたいだ。早速確認だ!



 【スキル】

   スタンド



 え?これだけ?

 そしてスタンドってなに?

 オラオラですか?

 スタンドという文字を注視してみると、説明文が浮き出てきた。


 『スタンド…立つ姿勢の美しさ』


 え?本格的に馬鹿にしてんの?

 そんなものスキルにすんなよ。せめて戦闘系とかのスキルが一つでもあればモンスターが出てきても…。

 はっとした。そうだ、モンスターがいるかもしれないんだ。

 こんなステータスとスキルなんかじゃ、モンスターとかでてきたら……。

 危機感を覚えた瞬間、遠くの方で何か生物の鳴くのが聞こえる。


 「おいおい、なんの声だよぉ」


 すぐさま椅子に隠れるように姿勢を低くする。

 ん?あれ?椅子大きくなった?

 そう思い自分の体と椅子を比べる。違う俺が小さくなったんだ。

 手を見つめると、若干小さくなり、瑞々しい。

 鏡が手元にないから確認できないが、明らかに若返っている?


 「……転生か?それなら、地球の俺は死んだのかな?いや…」


 その考えをすぐさま否定する。転生ならば、赤ん坊からだしなぁ。まぁ、考えても仕方ないか。情報が少なすぎる。それより、今すぐこの場を離れて、安全なところまで移動しよう。

 すぐに椅子の横にあるリュックサックを手繰り寄せ、机の上にある本をしまう。ナイフカバーをベルトに付け、ナイフを抜く。

 日本刀の切っ先のような刃が、光に反射し顔を照らす。

 うん。いいナイフだ。

 姿勢を低くしたまま、すぐ近くの木まで移動してまた身を隠す。そして、木に目印として何箇所かにナイフで傷を付けておく。


 「絶対、あの椅子は回収してやる」


 もう一度あの椅子に座ってやるのだと決意しその場を離れた。


 しばらく木に目印を付けながら、下山していると微かなせせらぎが聞こえてきた。

 

 「水だ! どこにある?!」


 音のする方向へ、目印を残しながら歩いて行くと、森を抜けた。そして川が流れる平原が広がった。


 「川か?! よし、ひとまずはなんとかなりそうだ!」


 森の入口。今出てきたところに適当に石を積み上げ、目印を作る。索敵しつつ、川の方へ急ぎ足で向かう。

 川の近くまで行き、すぐしゃがみ、周りを見渡し索敵。

 気配はなし。目視で確認できる限りではモンスターはいない。

 と、ここでようやく、座り込み安堵の息を吐く。


 「川が見つかったのは僥倖だったな。これで人里にでられそうだ」


 水が飲みたかったわけではない。もちろん、水は生命線だ。食料がなくても数日ならば、水だけで生きていける。だが、それだけではなく、人に出会える可能性が増えるのだ。

 水の近くに街や村を作るのは基本だ。ここが異世界でもそれはかわらないだろう。


 「川を下っていけば、街か村に出られる。今一番欲しいものは、情報だ」


 安全と食料もかと、一人苦笑いする。


 「しかし、本当にモンスターとかいるのか?いる前提で隠れながらきたけど…」


 やめておこう。いないと決めつけても、いると思い込みすぎても、出てきそうな気がする。戦う準備ができていないのだから、会敵しても困る。

 急ぎ、村だか街に行かねばならない。

 立ち上がり、ナイフをカバーにしまい、また石を積み上げて目印を残す。

 そして、下流の方へ走り出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「地図がないのは仕方ないとして、八分儀もない」 地図がなくて、八分儀があったら何が分かるの?
[気になる点] ステータスを初めて見たのになんで一般人じゃね、や精神力や知力が高いとわかったのですか?
感想一覧
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