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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
一章 賢者の片鱗
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さあ、旅をしよう!

 俺は夜一人でマーデイル家の馬小屋で、藁のベッドに寝転んでいた。

 亜人達を助けた後、俺とリディアは、マーデイルを家に運んだついでに晩飯をご馳走になった。

 マーデイルは無事に意識を取り戻し、しっかりと話せるようになるまで回復したが、まだ体が怠いのかすぐに眠ってしまった。

 俺はエルミリアに、この地域を離れて街に向かってみると話すと寂しそうな顔をしていた。明日には目を覚ますと思うから今日は泊まってくださいと言われ、ありがたくお世話になることにした。

 村を救ってくれた賢者様に馬小屋は申し訳ないと言って、家に泊まるよう勧めてくれたが丁重に断った。そのかわり、リディアを泊めてあげてほしいとお願いしたのだ。

 リディアは俺と同じ馬小屋に泊まろうとしたが、エルミリアは今日怖い思いをしたんだから側にいてやれと言い聞かせ、今に至っている。


 「人間、殺しちまったなぁ」


 地球にいた頃は考えられなかった。だが、罪悪感が沸かない。あの商人と鎧の男達、商人の護衛らしいのだが、確かに悪党だろう。だけど、地球のいた頃の俺だったら、間違いなく殺人なんて出来なかったはずだ。

 魔法という力を手に入れたからか、もしくは、この世界に呼ばれた時に何かされたか。

 ま、考えても仕方ない。寝ようかな。


 「いや、ステータスとスキルを確認しようとしてたんだった」


 まずはステータスを開いてみる。


 【ステータス】


  Lv  7


  魔力  700


  力  45

  速さ 40

  知力 80

  精神 64


  ユニークスキル  勇往邁進


 「おぉ?結構伸びてる。それに魔力って項目が増えてるな。あぁ、魔法を使えるようになったからか」


 続いてスキルを開く。


 【スキル】


  スタンド

   ・自然体    レベル2

  走法

   ・スプリント  レベル4

  歩法

   ・忍び足    レベル5

  話術       レベル3

  料理       レベル1

  細工       レベル3

  鍛冶       レベル5

  鑑定       レベル3

  暗殺術      レベル4

  弓術       レベル5

  剣術       レベル5

  魔法理論     レベル8

  魔法       レベル6

   ・連続魔法


 すげぇ。特に魔法の関連は、かなりの成長だ。

 っていうか、確かにぶっ倒れるまで魔法を練習したが、それにしても成長が早いと思う。

 ん?魔法にレベルのない派生があるな。

 連続魔法?あぁ、フルプレートに使ったやつだな。レベル表示がないってことは、この世界では特別なことなのか、それともパッシブスキルみたいなもんだろうな。

 それに地味に自然体スキルが上がってる。本当になんだろなこれは。


 「まぁ、いいや。どうせ、まだわからないことだらけだ。これから探っていけばいい」


 ステータスとスキルの確認が終わると眠気が襲ってきた。

 ランプの火を消し、この日は眠った。



 次の日の朝。体を揺さぶられて、目が覚めた。また、ハルガルかと思い目を開けてみると、ニコニコしたエルミリアだった。


 「お、おはよぅ、です」


 極楽浄土だった。チクチクと藁が俺の背中を刺しているがここは極楽浄土に違いない。


 「おはよう、元気はでたか?」


 エルミリアは一瞬不思議そうな顔をすると、にぱぁと笑顔になり、大きく頷いた。

 はー。可愛い。後で飴ちゃんをやろう。残り少ないけどあげちゃう。



 エルミリアと話をすると、マーデイルが起きても大丈夫なほど回復したらしいから、マーデイルの家へお邪魔している。朝ご飯をご馳走してくれるみたいで、俺とリディア、マーデイルにエルミリア、そして何故か、ハルガルで食卓を囲んでいた。


 「ギルさん、そしてリディアさん。昨夜はお話出来なくて申し訳ありませんでした。そして、改めて、私達を助けて頂いて感謝しております」


 「あ、ありがと、です」


 マーデイルとエルミリアだ。マーデイルは深くお辞儀をし、エルミリアも真似をして、おでこをテーブルにぶつけている。


 「まぁ、気にしないでください。俺も、なんかこうムカついただけなので」


 「私もギルさまの指示通り動いただけですので、お気になさらずに」


 俺達がそう言うと、マーデイルは微笑み、また頭を下げる。律儀な人だ。こういう人だから助けたくなったんだろうな。


 「しかし、まさかおまえがあんなに凄い魔法使いだとは思わんかったぞ」


 「ええ。私もハルガルとエルミリアに状況を教えていただいて驚きました。前にお会いした時は、そんな感じはしなかったので」


 ハルガルとマーデイルが話すと、エルミリアは首を痛めそうなほど頷いている。


 「まあ、俺もあの時は魔法なんて使えなかったしな」


 肩をすくめながら答える。


 「私もギルさまと出会った時に素晴らしい魔法を見ることができましたが、あれがまだ片鱗にすぎなかったとは思いませんでした」


 今度はリディアが興奮したように話す。


 「おう、俺も魔法使いと戦ったことはあるがギルのは桁違いだ。あんな魔法どこで覚えて来たんだ?」


 ハルガルが尻尾を立てて質問してきた。

 俺は、村を出てからの事を順を追って話していく。ダンジョンを発見し、コボルトを倒したこと。剣を鍛え、魔法の書を読み、魔法を使えるようになったことを話すとまた驚かれた。


 「そういえば、ギルさん。街に行かれると聞きましたが」


 「ええ。旅をしながら色々見て回りたいのです」


 せっかく異世界に来たんだ。色んな場所を見て、色んな人と話してみたい。

 マーデイルとハルガルは少し残念そうな顔をする。


 「そうですか。色々と知恵を借りたかったんですが、仕方ありませんね」


 「知恵を?」


 そう聞き返すと。マーデイルは少し困った顔をして話し始めた。

 この村のことだ。奴隷商人が来ても防衛すら出来ないこの村は、遅かれ早かれまた襲われてしまうだろう。その時に、今回のような幸運が起きることはない。誰かが殺され、残った者は奴隷になる。それを防ぎたいが良い考えは出てこない。どうすれば、みんなを守っていくことが出来るのかを俺に聞きたいそうだ。

 本音を言えば、俺に残ってもらいたいのだろう。だけど、マーデイルは自分の都合のいい事は言わない人間だ。


 「その事ですか。実は俺もその事は気にしていて、何か良い案はないかと考えてみました。それで、もしかすると、この村、生き残ることが出来るかもしれませんよ?」


 「ほ、本当ですか!?」


 「ええ、それはですね……」


 俺の案はこうだ。

 俺が攻略したダンジョン。あそこに村を移動させること。


 「この村に足りないものは大まかに2つ。力と金です」


 あのダンジョンは鉱山だ。鉄と金の鉱脈がある。鉄があれば、強い武器を作れ。金があれば、人を呼べる。

 力と金どちらも権力だ。どちらか一つではダメだ。両方持つことに意味がある。

 力だけでは、危険な存在として潰されるし、金だけではやはり奪うために潰される。

 両方持っていても、潰されるのではないか?

 そのとおり。両方持っていても、扱いを間違えれば奪われるだろう。


 「まずは、誰にもバレないように力と金を蓄えるのです。そして密かに人口を増やします」


 蓄えつつ、人口を増やしていく。何も年数かけて子供を作れと言っているわけではない。他の街や村から引っ張ってくる。この村に来ている商人に頼んでも良い。

 人口を増やせば、商人も集まる。ヒト種を含めた色々な人種が住むようになるだろう。そこまで、大きくなれば無闇に手を出す者もいなくなる。

 後は、この国とどう付き合っていくかになるが、それはマーデイルの仕事になる。

 そこまで一気に話すと、マーデイルは一点を見つめブツブツとつぶやき始める。


 「それは村ではなく街を作るということ?確かに金があれば交渉にも使える。鉄で武器はどうするか。そうか、出来る者を呼べばいいのか。なるほど、なるほど」


 頭の中で考えが高速に回転しているのだろう。最後に行けるかもしれませんね、と呟くと、いきなり立ち上がり、俺の手を掴んで上下に降る。


 「ギルさん!行けるかもしれません!国と交渉出来るようになるまで、大きくするのですね!」


 我が意を得たり、だ。俺はニヤリとして頷いた。

 それからは、他の三人をほったらかしにしてマーデイルと話し合った。

 ただ、マーデイルは俺が見つけた鉄や金なのに私達で使ってもいいものかと少し罪悪感があるらしかった。

 だから俺は、この村に貸しておくと言った。

 話が終わる頃には夕方になっていた。

 ちなみにハルガルは、頭を使うのは俺に向いていないと言い途中で帰ったから、今はいない。

 リディアはエルミリアと一緒に村を回っていたそうだ。

 そして、今日もマーデイルの家に泊めてもらえることになった。明日の朝にあの雑貨屋で食料を買わないといけない。

 夜になってまた晩飯をご馳走になると、リディアが急に話しだした。


 「マーデイル殿、そしてギルさま。少し話したいことがあります。エル?」


 いつの間にか愛称で呼ぶほどに仲良くなったらしい。


 「は、はいです!」


 エルミリアが話したいことがあるみたいだ。


 「あ、あの、とぉさま、ギルお兄ちゃん。エルもギルお兄ちゃんと世界をまわりたい、です!」


 二人して目を見開き驚いた。


 「なんとなく、ギルさんに付いて行きたそうにしていたのは分かってました。理由を聞いても?」


 マジで?俺、全然わからなかったよ?


 「とぉさまが死にそうになったとき、エルが連れて行かれそうになったとき、エルは悔しかった、です。戦う力がなかったから、ギルお兄ちゃんみたいに知恵がなかったから、皆を守れなかった、です」


 つっかえながらも、意志の強さを感じる喋り方だ。


 「リディアお姉ちゃんに聞いた、です。ギルお兄ちゃんに付いて力を手に入れるって。エルも力欲しいです!」


 リディア、お前のせいか。俺は別に良い。リディアを連れて行くと決めて、もう一人ぐらい増えても負担は同じようなもんだ。でも、親としては心配だろう。

 マーデイルは、真剣にエルミリアの目を見つめている。しばらくして、溜息を吐く。


 「そろそろ、親離れですか。寂しいですが、私も若い頃同じように旅をしました。血は繋がっていませんが、私の子だと言うことでしょう」


 寂しそうに笑うと、俺の方を向き頭を下げる。


 「ギルさん、私からもお願いします。役に立つかはわかりませんが、娘をお願いできますか?」


 「ギルお兄ちゃん、お願い、です」


 エルミリアも続いて頭を下げる。もちろん、テーブルに頭をぶつけた。

 そんな二人を見て断れるわけないじゃないか。


 「まったく。マーデイルさんは大事な娘を俺なんかに預けてもいいんですか?俺は一応男ですよ?」


 「ふむ。娘を預ける時点でギルさんとは繋がりを残せます。そして、娘がギルさんとそういうことになれば、もっと繋がりが出来ます。この村も安泰でしょう」


 なるほどな。さすがは村長ってところか。俺と繋がりがあれば、もしもの時俺を頼ることが出来るという思惑もあるってことか。それに、今は俺に預ける方が村にいるよりは安全だろう。


 「わかりました。娘さんをお預かりします」


 俺がそう言うと、今までずっと頭を下げつつけていたエルミリアが顔をあげ、笑顔になる。


 「やったです!ありがとうです!ギルお兄ちゃん!」


 「よかったね。エル!」


 「リディアお姉ちゃんもありがとうです!」


 リディアとエルミリアが手をつなぎ喜んでいた。

 それを見て俺とマーデイルは二人して苦笑いした。


 この日、俺には二人の仲間ができた。


 そして、次の日。俺は朝から雑貨屋に行き、食料を買い込んだ。金鉱石で交換しようとしたら、犬耳の老婦人はなんとタダでくれるとのこと。村を救ってくれたお礼だそうだ。

 それを商人から奪った馬車に積むとリディアとエルミリアを呼び出発の準備をした。

 もちろん、俺の大事な椅子と机も積み込んだ。

 そこで俺は馬車の御者なんてしたことがないことを思い出すが、なんとエルミリアが出来るそうだ。

 エルミリアが仲間になってくれてよかった。道すがら、俺とリディアに教えてもらおう。

 そして、いよいよこの村を出発しようとすると、わざわざ村の全員が見送りに来てくれた。


 「そ、それじゃあ、皆、行ってくるです!」


 「エルミリア、ちゃんと連絡してくださいね」


 エルミリアが笑顔で頷くと馬車を出発させる。みんな見えなくなるまで手を振り続けてくれた。


 さて、楽しい楽しい旅のはじまりだ。世界を楽しむとしましょうかね。 

一章完です。ブックマークして頂いた方ありがとうございます。

もしよろしければ、評価も頂ければ嬉しいです(チラっ)

一章は、主人公ギルが、あまりにも無能くんだったので成長するために自分の知識で武器を鍛え、魔法を習得し、更には自力で魔法を進化させました。ようやく戦闘を出来るようになることで余裕ができ、異世界を見て回りたいという欲求を叶えることが可能になりました。

そして二章では、いよいよ旅をし、街に行くことになります。こういうファンタジー世界では必ずと言っていいほどお約束な冒険者ギルドも行く予定になります。


少しでも皆様の心を動かせるような物語を書いて行ければと思います。

そして、少しでも皆様の目に止まってもらえれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「エルミリア、ちゃんと連絡してくださいね」 どのようにして、連絡するのだろう。手紙の様な制度があるとしても、手紙を出せば、獣人の住む村の位置が、ばれてしまうのでは?
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