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もしかしたら俺は賢者かもしれない  作者: 0
九章 魔法都市への復讐者 上
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夜の街

 結局、不眠症のエリーに付き合い、俺も朝まで起きてしまった。

 変な時間に起きたし、エリーと楽しく談笑してテンションが上がってしまったのもあり、もう眠れないと判断した俺は早朝からクリークの屋敷へと足を運んでいた。


 「お?来たか」


 執務室ともいえる部屋に入ると、クリークは既に起き机に向かっていた。

 俺が声を掛ける前に気づいたクリークが、疲れ切った顔をほころばせる。


 「もう起きてたのか?」


 「仮眠はした」


 クリークは大きく伸びをした後、手元にあったカップを口に運んだ。

 おそらくコーヒーだろう。


 「ん?ああ、悪い。飲むか?」


 ただ、クリークが飲み終わるのを待っていただけなのに、俺が飲みたがっていると勘違いしたみたいだ。

 しかし、エリーと朝まで会話したのもあり寝不足なのも事実。一杯もらうとするか。


 「助かるよ」


 「その答えだと、おまえも眠れなかったみたいだな」


 いや、すぐにでも爆睡出来るけどね。

 俺の分のコーヒーも手早く用意すると、二人でソファに深く腰掛けながらカップを口に運ぶ。


 「うまい」


 「だな。前も言ったが、初めはこんな不味い物なんてと思ったが、今ではこれがなくては生きられないぐらいだ」


 「働く人の味方だよな」


 「まったくだ。それにしてもこのコーヒーという飲み物は、本当に眠気に効くな」


 コーヒーだからな。俺もこれは愛飲しているが、これを飲むと眠気が吹っ飛ぶ。

 そこが不思議なところだ。

 地球のコーヒーと同じくカフェインが入っているとしても、こんなにも効くかね?もしかしたら、魔法効果があるのかも?

 ここは魔法世界。ぶっ掛けるだけで傷が癒える奇跡の薬や、毒の種類など関係なく癒やす毒消しがある。眠気を消す薬があってもおかしくはない。

 だが、これに頼り過ぎるのはやはり危険だ。眠くないからと起き続けて働いた結果、過労で死ぬ事もあるのだから。

 この事はクリークにも注意しておいたほうが良いな。


 「クリーク、あまりこの飲み物に頼るなよ?」


 「わかってるよ。しっかり眠れる時に寝るさ」


 「それならいい」


 「おう」


 二人で頷いた後、しばらくコーヒーを楽しんでいると、クリークが何かを思い出したかのか徐に話し出す。


 「そういえば、あの盾の嬢ちゃんに注意しておいてくれよ。俺のコーヒー豆を盗むなって」


 鎧の嬢ちゃんと言わないのは、ティリフスを気遣ってだろう。つまり、これはエリーのことを言っているのだ。

 いやいや、ちょっと待て。

 エリーの原因不明の不眠症って、もしかして……。


 「それ盗んでどうしてるか知ってるか?」


 「シギルの嬢ちゃんの話だと食ってるらしい」


 食べる?!コーヒー豆を?!

 地球のコーヒー豆と近い物だとしたら、カフェイン中毒の危険があるぞ。まったく違うものだとしても、睡眠欲を消すほどなのだから安全というわけではないだろう。

 だが、昨日の感じだと不眠症以外はそれほど気にならなかった。

 それはそれで、ある意味凄いな。防御力が高いにも程があるだろ。鉄の胃袋まで持っているのか、エリーは。

 それでも止めさせるべきだな。


 「わかった、注意しておくよ。クリークも今倒れたらつまらないぞ。これから更に忙しくなるが、楽しくもなるんだからさ。しっかり睡眠は取れよ」


 「わかったわかった、気をつけるよ。……さて、そろそろ本題に入ってもいいか?」


 ぶっちゃけた話、俺個人としはエリーの偏食の方が本題のような……。まあ、今はクリークの話に集中するか。

 本題とは昨日言っていた相談事のことだった。もちろん、俺が法国へ旅をしていた数ヶ月の報告も兼ねているが。……ダジャレではないよ?

 さて、その相談事はというと……。


 「まずは、エルの嬢ちゃんから料理を教わった店からだ」


 エルから料理を教わった3店では、それぞれ特別な料理を出している。地球でお馴染みだった料理である、ハンバーグ、シーフードフライ、ビールとコーヒーだ。

 それぞれの店で一つずつ覚えてもらったのだが、その内一店の売上が芳しくないようなのだ。

 実のところ、俺も料理を教えた時からそうなるのではと予想していた。

 理由は出している料理だ。ある店でハンバーグ、他の店でシーフードフライとビール。今回相談をしてきた店はコーヒーのみなのだ。コーヒーだけでは売上が期待できないのは当然だろう。

 もちろん、自分たちで新しい料理の開発はしているが、それでもハンバーグやシーフードフライとビールセットには色々な意味で差がある。


 「たしかにバランス悪かったな。コーヒーは食後に頼まれると思ったんだよ」


 「ああ、実際そのようになっていたらしい。そして、忙しい商人連中にも人気があったんだがな。だけど、他店舗の料理に比べるとな」


 「だろうね。わかった、じゃあ、それは考えておくよ」


 「おう、すぐには無理だろうしな。また旅に出たいとは思うけど、その前に頼むわ」


 「あー……、しばらくはいると思うから……」


 やらなければならない仕事が山積みらしいから、しばらくは魔法都市関連の仕事を消化することになるだろう。

 がんばって早めに終わらせよう。今更だが、いつの間に俺が魔法都市代表になってんだ?仕事が全部回ってくるんだが……。


 「そ、そうか。まあ、暇な時にでも頼むな。他の相談なんだが、それは本人から聞いてもらったほうがいいな。俺じゃわからん。近くにいると思うからちょっとだけ待っててくれ」


 そう言うと、クリークは執務室から出て行き、少ししたら他に二人連れて戻ってきた。

 一人は知っている。このエルピスで不動産業をしている奴だ。俺も売り方を教えたから覚えている。

 後の一人は女性だった。俺が法国に行く前には見た記憶はない。


 「ギル、紹介する。一人は知っているな?」


 「大旦那、お久しぶりです。今日はよろしくお願いしやす」


 不動産業を営む男は礼儀正しく腰を折る。


 「それでもうひとりだが、こいつはギルに挨拶したいって前々から言ってたんで連れてきた」


 「あんたがこの糞どもの親分かぃ?」


 露出の多い衣服を纏う艷やかな美人だ。だが、その言葉は荒い。

 随分と荒れているなぁ。


 「こいつは?」


 「あぁ、これは――」


 「あはは!さっきからコイツとかコレとか失礼じゃないか!あたしにはカレンって名前があるんだ。ここの頂点にいる人に挨拶しとこうと思ってきたけど、その必要はなかったね!どうせあんたもこの糞どもと同じで、クズなんだろ?」


 んー?俺何かしたかなぁ。なんでこんな言われ方されなきゃならんの?俺からすれば、初対面でこの言い様の方が失礼だと思うが……。ほんのちょっぴりだけ注意するか。


 「黙れ、殺すぞ」


 アイスフィールドを発動して靴を凍らせて床と一体化させつつ、魔法陣を女の全身を囲むように展開する。30ある魔法陣の内の一つから氷の剣を勢いよく出すと女の喉元で寸止めした。

 その上、無く子を黙らす殺意付きで。


 「ひぃっ」


 カレンが体をブルブル震わせ全身で恐怖を表現する。囲むようにある魔法陣のせいでへたり込むこともできない。


 「おい、カレン。言葉遣いには気をつけろって言っただろ。ギル、悪いな。だが、怒らないでやってくれると助かる」


 ちっ、クリークに免じて許すとするか。

 魔力を止めると何事も無かったように部屋が元通りになった。

 まあ、ちょっと床が濡れてるけど。


 「それで?こいつは何なんだ?」


 「あー……、街でうろつく女どもには気づいたか?」


 「あぁ、冒険者とは一風変わった格好のな?」


 「カレンはそのうちの一人でな。俺らが『迷賊』をやってた時に売り払った女たちなんだよ」


 あぁ……、そういうことか。

 クリークは冒険者を襲った時、そのパーティに女が居た時は拐って奴隷商人に売り払っていた。その女たちを街に連れ帰って来たということだろうな。

 落ち着いたらその時の罰として、被害にあった女たちを買い戻すことをやらせようと思っていたのだが……。


 「ほぉ?俺が言う前に進んでやったのか?」


 「まあな。この街を発展させるのは大変だ。しかし、やり甲斐がある。簡単に言えば、幸せを感じるようになってきたんだが、そうなると売り払った女たちが気になってきちまってな。罪を犯した俺たちが幸せになって、こいつらが不幸のままじゃな……」


 へぇ、やるじゃないか。女たちが負った心の傷は一生消えないし、許されないだろうが行動を起こしたことは評価する。


 「それでだ、この街にあるギルたちの家をこいつらにやっちまったんだが……」


 あぁ、それでこっちのは使えないのか。


 「別にいいぞ。大金払った家あるし……」


 「そ、そうか、悪いな」


 俺とクリークがカレンを見ると、さっきの恐怖からようやく立ち直り、今は何かを俺に言おうとモジモジしていた。


 「なんだ?言ってみろ」


 「あ……、その、あり、がとう」


 本当はお礼をしにきたのだろう。ただ、盗賊紛いな悪行をしていた『迷賊』たちを、切り捨てもしなければ、捕まえもしない俺を信用はしていなかったのかもしれない。

 礼儀さえしっかりしてくれたら、同情もするし、助けもしてやるさ。


 「気にするな。お前も大変だったな。奴隷になった女はクリーク()()が一生面倒を見るからな」


 「!!あ、ありがとうございます!!」


 あっという間に心を許したな。これからの自分に不安を感じていたのだろうな。


 「はぁ?!」


 「何を驚いているんだ?当然だろ?どうせ、連れ帰ってきて家を与えてから、後は自由にしていいぐらいしか言ってないんだろ?」


 「ま、まぁそうだが」


 「それじゃあ、こいつらはこの街に無理矢理連れてこられたのと変わらないじゃないか。最大限サポートしてやれ」


 クリークは何かを言いたそうにするが、諦めて頷いた。


 「カレン、今は何をしている?」


 「は、はい、今は春を売っております」


 売春、風俗か。雰囲気から無理矢理やらされている感じではないな。今の自分に出来ることをやっているのだろう。


 「そうか。それはそれでバカな男どもを一瞬でも幸せに出来る立派な仕事だ。だが、違うことがやりたくなったらクリークに言え。店ぐらいなら用意してやるし、街から出たいなら金を渡させる。このことを他の娘たちに話しておけよ」


 真摯に話す俺を信用したのか、カレンは表情を明るくする。

 怖い人が実は優しいと好感度上がるよね。それだ。


 「ありがとうございます!」


 そういうと先程までとは打って変わって礼儀正しくお辞儀する。

 そこへ不動産の男が割り込んできた。


 「大旦那、お話の途中申し訳ないです。あっしの相談事もその土地に関してなんです」


 「土地?」


 「はい。土地は既に埋まってしまいまして……」


 「街で使う分の為に残しておいただろう?」


 俺がクリークをチラリと見ると、申し訳無さそうに話しだした。


 「そのな、既に賢人キオルと話して、街で経営する店を決めちまったんだ。カレンが働く店もそうだし、まだ未完成だが浴場や劇場、賭場なんかも街が経営することにしたんだ」


 「マジか」


 「他の街では大っぴらにできないことをするのが、人を呼ぶんだって賢人キオルが……」


 あの野郎。しかし、間違ってはいないから怒れない。

 俺が考えている姿にカレンがオロオロしている。

 土地の話は置いて、先にカレンの話を終わらせるか。


 「カレン、いかがわしい店以外なら魔法都市側で用意する。皆でよく考えてからクリークに話せ。それと、恨んでいるだろうが襲ったりだけはするなよ?」


 「……わかりました。まだ、こいつらを恨んでいる娘もいますが、水に流すように説得します。その、お顔を拝見出来て感謝します」


 「ああ、がんばれよ。後は自分たちの努力次第で何でもできるからな」


 「はい。それではあたしは失礼します。……それと、あんたたちも暇になったらまた店においで。料金をしっかりと払えば、たっぷりサービスしてやるよ」


 「お、おぅ」

 「へぇ、また伺いますんで」


 こいつら……、常連じゃねーか。ま、うまくやっているようで良かった。

 カレンはもう一度俺にお辞儀すると執務室から出ていった。


 「で?そっちの相談は土地か?」


 「さっきも話したが、土地が全て埋まっちまった。それでコイツに魔法都市側の不動産売買もやらせてもらえねーか?」


 「別にいいけどさ、もう随分稼いで貯金もそれなりなんじゃねーの?」


 不動産売買は一件売るだけで金貨数枚稼ぐことができる。エルピスの土地を殆ど売ったのだから、質素な暮らしならば数十年は安心して暮らせる貯金があるのではなかろうか。


 「いや、まぁ、こいつなんだが、カレンの店に毎日通っていてな……。そんで、楽しんだ後、女どもにご馳走までしてやっているもんだから、そんなに金を持ってないんだよ」


 「毎日?!」


 「お恥ずかしい限りで」


 うーん……。稼いだ金での楽しみ方は人それぞれだから、否定的なことは言えないか……。


 「わかった。魔法都市の不動産もお前に任せる。後はキオルと相談してくれ」


 そして、俺はキオルに投げる。殆どここにいない俺では、どうせ土地の相場なんてわからんしね。


 「これで終わりか?」


 「もう一つだけあるんです。売り方を教えてもらいたいのです」


 「売り方?基本的なことは教えたと思うんだが」


 「言い方が悪かったですね。大旦那に教えていただきたいことは、売らない方法です」


 売らない方法?ちょっと話がみえない。

 まだ理解できていない俺に、補足するためにクリークが話に割って入ってくる。


 「この街は魔法都市の話が広がるまでは、ここまで人は来なかったんだ……」


 クリークの話では、俺が賢者試験で発表したプールストーンによる新技術が切っ掛けで、魔法都市の噂が広がりここまでの人が来るようになったんだとか。

 たしかに、俺の予想でも街へと進化するのはもう少し後だった。

 それだけあの技術は革新的だったということか。


 「それで商人たちの力を借りて街を発展させた。人も大勢来るようになった。が、好ましくない奴らも寄ってきたんだ。つまり、売る人間を選ばなければならない問題が出てきたってことだな。この街は自由や希望といった言葉を売りにしているが、悪人にまで自由にしてほしくないのが本音だ」


 当然だろう。犯罪から足を洗った元『迷賊』の街が、犯罪組織の根城になっては困る。


 「それで悪徳商人や犯罪者に土地を売らないようにしろと命令したんだが……」


 「へぇ、そのとおりで。クリーク町長の昔の伝手を使い情報を集め、そいつらには金額を吹っかけて提示したってわけです」


 なるほど、賢いな。


 「ふむ、それで魔法都市側の売買でも、悪人に売らないように心がけてくれているのか」


 「そのとおりで。ですが、一度諦めた奴らがあっしが提示した金額を持ってくることがあったんです。その時は何とか売地済みで通したんですが、そう何度も同じ手が通用するとは思えなくて……」


 「そういう事ならば、協力は惜しまない。そうだな……、こういうのはどうだ?」


 俺の案はこうだ。誰にでも売る。ここまで言うと、二人は目が飛び出るんじゃと思うぐらい驚いていた。しかし、続きがある。

 買う時に契約書を読ませ同意した証としてサインを書いてもらう。できれば、血判がほしいところだが、拇印でいい。

 そして、この契約書は何よりも重要であることを伝える。

 内容は犯罪に関わる土地運用、店経営が発覚した場合は土地の没収。その際、売買時に発生した金額は返却しない。

 つまり、犯罪者には土地を持たせない。掻い潜って買ったとしても、それがバレた時土地は没収。買った金額はドブに捨てたと思えと言っているのだ。


 「そうか、魔法都市で法律として組み込むというわけか」


 「ついでに、この街を含めて個人同士の売買を禁止すればいい。それならそいつを通さなければ土地を売り買いできなくなるしな」


 「おぉ!それなら随分楽になります!それに自分の稼ぎも終わらないですね!」


 土地は有限だ。無くなったらこいつの仕事はなくなってしまう。だが、売買時にはこの不動産屋を通すのが条件ならば、こいつの仕事はずっと無くならないだろう。


 「まぁ、かなり強引だが。三賢人に提案しておくよ。おそらく、承諾されるだろう」


 まぁ、無理矢理通すけど。


 「これでいいか?売り方は今のままで十分だ。この街の殆どをお前が売ったんだから自信を持て」


 「わ、わかりました!」


 「後は、早く魔法都市に一般人が入れるようになるといいな」


 「そうっすね、クリーク町長!」


 すみません、がんばります。


 「悩みが解決したら、ちょっと汗を流したくなってきましたぜ。ちょっくら、カレンとこ行ってきますわ!」


 そう言うと、不動産業を営む男は晴れやかな表情で帰っていった。

 おまえ、毎日行ってんだろ?悩み関係ないじゃん。


 「悪かったな。ギルにとっては、大したことない話だったな」


 「別に構わないさ。とりあえず、そっちの相談は終わりか?」


 「ああ」


 「じゃあ、俺からも頼み事がある。これも三賢人と話し合ってからだが……」


 俺の頼み事は簡単だった。

 エルピスの街と魔法都市を繋ぐ通路の入り口と出口に、見張りをする衛兵を立ててほしいことだ。

 魔法都市は基本的に誰でも自由に入ることができる。が、その時に入国審査のような手荷物チェックをしようと思っている。

 通路は細く、手荷物チェックまであってはかなりの行列が予想できるが、それは整理券で対処する。

 つまり、エルピスの衛兵の中でその仕事もやってほしいとお願いしたのだ。

 この仕事には魔法都市側からも給料を出すことにしたが、しばらくはエルピスが出してほしいとも。

 仕方ないね。俺の財布にはお金ないからね。

 どうしてこんな頼みをしたのかだが、実は手荷物チェックにはそれほど意味はない。

 危ない物を持ち込ませない思惑はあるが、本当の狙いはただの威圧だ。今は厳重な警備だぞと思わせるだけでいい。

 エルピスから魔法都市を繋ぐ通路は人がすれ違う程の広さしかない。距離は長いが二人通るのがやっとの通路では、入国審査をパスできない危険物を持つ人物が無理矢理突破を試みたとしても、どうということはないのだ。

 では、何故こんな頼み事をするのか。それは、今考えている警備システムが完成したら意味を持つ。今は意味がなくともそのうち必要になるからだ。

 それともう一つ重要なこともある。

 魔法都市側に警備出来る人材が用意できていないのだ。

 だから、今はクリークの部下に頼ることにしたのだ。エリーが教えた連中なら多少の荒事でも対処できるしな。

 こうお願いすると、クリークは快諾してくれた。


 「よしよし、これで問題一つ解決。んじゃ、そろそろ、戻るとするか」


 これでクリークとの話し合いは終わる。そう思っていたが。


 「まぁまぁまぁ、朝飯食ってないだろ?もうちょっと付き合えよ」


 こうして引き止められる。朝飯というか、もう昼飯の時間だけど……。

 まぁ、いいか。久しぶりだし、付き合おう。

 この考えが間違いだった。結局、クリークの相談は終わらず、それどころかクリークの仕事の手伝いまでさせられて、晩飯をご馳走になってからようやく家路についたのだった。

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