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ゴーレム  作者: roshin
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病院編8

 あれから一週間が過ぎた。

 俺達は病院内にいるゴーレムを少しずつ減らし4日かかったが安全を確保する事ができた。

 しばらくはいつもの日常を取り戻すことが出来た。

 ただし、同時に問題点も浮き彫りになる。

 現在病院内に残っているのは俺達も含め、14名である。

 内訳としては動ける人員として俺、トウヤ、ゴウ、アイ、ハナの計5人。

 病院で医療にあたっている人は医者が1人、看護婦が3人の計4人。

 病院から動くことができない患者はナツミとライカを含め計5人。

 動ける数が少なすぎるが人数分の食料を確保しなければならない。

 水については今のところ水道が使えるが今後の事を考えると水のストックも用意しておきたい。

 さらに店長が電気設備を応急処置したと言ってもサブの話なのでメインを直せるエンジニアが必要である。

 問題は山済みだが店長と合流できれば動ける人員が二人増えるので心強い。

 今日は店長が出て行ってちょうど1週間だ。

 しかし、午後になっても店長は姿を見せなかった。

 何かあったのかもしれない。

 俺は店長の家に向かう事にした。

 バットをもって病院の駐車場に向かうとトウヤとゴウが車の前で待っていた。

 トウヤ「俺達も一緒に行くよ。」

 ゴウ「帰りに食料も積みたいし人手はいるだろ?」

 ヒカル「ありがとう。」

 病院の門の鍵は医院長から預かっていたので開け、車が門を通り抜けると再び門を閉じた。

 俺は助手席に乗り込む。

 運転席にはトウヤ、後部座席にはゴウが座っている。

 俺はトウヤに店長の家の道を言いながら辺りを見渡す。

 人の姿は見ないがゴーレムの姿は多く見る。

 この町にはどれだけの人が残っているのだろうか?

 そんなことを思いながら窓を眺めていると店長の家にたどり着いた。

 車は止まっており、門も閉じられている。

 辺りにはゴーレムや人の気配はない。

 チャイムを一回鳴らしてみる。

 反応はない。

 門をよじ登り、ドアを開こうとするが鍵がかけられている。

 ドアを数回叩き、店長に呼びかけるが応答はなかった。

 庭の方に回るとガラスが破れている。

 嫌な予感しかしない。

 ガラスは人が立って通り抜けられるぐらいの大きさであり強引に外側から破られている。

 割れたガラスが家の中に散乱しており、カーテンが落ち、リビングが丸見えである。

 その先にいつも笑顔を絶やさない店長の後ろ姿があった。

 ヒカル「店長!」

 その声に店長は左右にふらふらしながら振り返る。

 首元には赤く光る石がむなしく輝いていた。

 ヒカル「なんで・・・・。」

 トウヤ「くそ!」

 ゴウ「嘘だろ・・・・。」

 店長であったものの近くに奥さんであったものと娘さんであったものも見える。

 その先に宅配業者の服を着た男の死体と石の破片が散らばっていた。

 店長であったものは壁に激突しながら方向を変え、俺達の方へ近づいてくる。

 トウヤ「もうダメだ!行くぞ!」

 しかし体が動かなかった。

 店長はまじめで面倒見が良くて、家族にやさしくて、人の為に努力できる人がどうしてあんな目に遭わなければいけないのだろうか?

 問題の多かった1日目を乗り切って病院の安全を取り戻してこれからって時にどうしてこんな事になるんだ?

 俺は最善を尽くしたじゃないか?

 どうしてなんだ?

 ゴウはトンファーを構え店長で近づこうとする。

 ヒカル「やめろ!」

 俺の声にゴウは一瞬止まったが、そのまま近付き拳を振りぬくと店長は力なく崩れた。

 ヒカル「どうしてだ?ゴウ!」

 ゴウは振り向きもせず俺に語り掛ける。

 ゴウ「もう俺達の知ってる店長じゃない。ここで楽にしてやるのが一番じゃないか?」

 言い終えると奥さんと娘さんの石を瞬時に砕いた。

 ヒカル「ゴウ!!」

 ゴウにつかみかかろうとするがトウヤに制止される。

 それでも暴れ続けているとトウヤは俺の頬を殴った。

 トウヤ「しっかしろ!いなくなった人の事を考えるな。今いる人の事を考えろ。」

 ヒカル「分かってんだよ!そんなことは!お前みたいに冷徹じゃないんだ!簡単にわりきれねぇんだよ!」

 頭に血が上っていたためか、心にもない酷い事を言ってしまった。

 トウヤ「ああ、俺は冷酷で冷徹だ。お前みたいに見える奴全員を助けようとは思わない。だけど幸せになって欲しいと思う人はいる。お前もその一人だ。そいつらの為になら非道でも外道でも俺はなれる。それに店長なら僕が噛まれた時は誰も襲わない様に石を砕いてくれって言うんじゃないか?」

 その言葉に思い出したことがある。

 店長が新しく入ってくるバイトの子たちに毎回贈る言葉を・・・・。

 店長「僕はね。全ての人に幸せになって欲しいと思っている。今は不幸な人でもいつかその先に幸せは必ずあるから。でも自分が思う幸せをイメージしないと幸せは来ない。ヒントは人を幸せにすれば自分も幸せに近づく。幸せとはそういうものだから。今は分からなくてもいい。でも道に迷った時、思い出してほしい。人は誰かを幸せにできる力を全員が持っている。だから人は全員が幸せになれるんだ。」

 そしていつもの笑顔で締めくくる。

 初めて聞いた時、何を言ってるんだって思ったけど、店長は本気でそう思っていた。

 そんな心の温かい人だった・・・・。

 ヒカル「すまん。放してくれ。」

 トウヤはゆっくりと腕を放す。

 ゴウは何も言わずそのまま立ち尽くしていた。

 ヒカル「ゴウ・・・・。ありがとう・・・・。」

 ゴウ「ああ。」

 その横を通り過ぎ、店長の家の奥の居間に入るとベビーベッドの上に眠る赤ん坊を見つける。

 しかし、すでに小さな赤く光る石が付着していた。

 俺は泣きながら石を砕く。

 こんな世界で誰かを幸せにすることなんてできるのだろうか?

 せめてこの家族が死後の世界で一緒に暮らせるように庭に並べ上からシーツを添えた。

 手伝ってくれたトウヤとゴウに感謝を述べ、車に戻った。


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