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第7話 エルフと約束

 森の中の池の傍。

 魔物に襲われていたエルフの少女を助けた。全裸を抱き締めることができて役得だった。


 着替えを終えた彼女が岩陰から出てくる。

「あの、助けていただいて、ありがとうございました」

「こちらこそ。こんなにも美しい人を助けられてよかったです。本当に。あなたは世界の宝だ!」


 何言ってんだ、僕は。

 彼女は顔真っ赤にして、両手で覆ってしまったし。



 いやもう、自分でも何言ってるかちょっと分かんないけれど。

 美しいイラスト見たら、神絵師! 生きてて良かった! とか言う。あのノリだった。

 ぶっちゃけ、美しすぎて現実感がない、ってのもある。

 サインください、と言わなかっただけ理性は残っていた。


 ――まあ、エルフさんだから、二度と会うことも無いだろうってのもあるし。

 言いたいことは言っておこう。



 彼女は顔を覆う指の隙間から僕を覗いて言った。

「お、お名前は?」

「僕はユート。君は?」

「フローリアと言います……お強いのですね」


「まあ、そうなのかな。相手が弱いだけかも――ははっ」

 笑って誤魔化そうとしたが、フローリアはじーっと指の間から見つめてくる。

 そんな仕草も超可愛い。



「初めて見る魔法でしたし。何か、ユートさんは人だけど人ではない気がします……不思議な感じ」


 ハイヒューマンてばれてしまうかも。

「記憶が無くてわからないんだ、ごめん。でも、冒険者になりたいから、これぐらいはできないとね」


 フローリアが目を見開いた。

「まあ! 冒険者さまになられるのですね! やはり上位を目指されるので!?」

「え~っと」

 ――上位ってことは、やっぱりランク制があるんだ。

 S~Fだろうか? それとも色だろうか?



 悩んで答えられずにいると、なぜか彼女は目を輝かせて微笑んだ。

「Aランク冒険者を目指されるのですか! さすがですわ! きっとユートさんならなれます! だって、こんなに強くて素晴らしい方ですものっ――あっ」

 熱く語りすぎたことに気がついて、彼女は恥ずかしそうに顔を伏せた。

 可愛い。


 ……てか勘違いしてくれて助かる。Aランク冒険者が一番上なのかな?

「ありがとう――でもさ、今、道に迷ってしまったんだ。泊まれるところないかな?」



 もう日は沈んでしまい、池を取り囲む森に刻々と夜の闇が押し寄せていた。


 しかしフローリアは悲しげに顔を伏せた。

「ごめんなさい。エルフの里には誰も入れてはいけないのです」

「だよね。そうだと思った」


「あ、この森にエルフがいることを内緒にしておいてもらえますか? 特に人間には」

「もちろん。約束する」

「ありがとう……こんなに強くて優しい人なのに、わたし、何もしてあげられない」

 ますます悲しげに眉を寄せた。



 ――気のせいかな。物凄く好意を持ってくれてる気がする。

 ちょっと攻めてみる。


「出会えただけでよかったよ。――また会いたいけど」

「そう言ってくれると、嬉しいです……わたしも」

 泣きそうな顔ではにかみ笑いをするフローリア。

 ――ああ、抱き締めたいぐらい可愛い!


 でも、彼女はもう帰らなくては。

 森の雰囲気がどんどんやばいことになっている。



 ふと、彼女の持つ水筒が目に付いた。

「そうだ。その水筒、もらえないかな? もしくは売って欲しい」

「え、こんなのでいいのでしょうか?」


「荷物を全部失ってしまって。水と食べ物に困ってたんだ」

「まあ! この黒の森で! ――ちょっと待っていてください」


 フローリアは金髪を後ろになびかせて、走っていった。

 池の傍の大木に手をつくと、何か唱えて消えた。



 たぶん、水と食料を用意しに行ってくれたのだと推測する。

 待ってる間は暇なので、倒した魔物の処理をした。


 討伐部位を切り取ってから埋める。

 グレートボアは丸ごと二番倉庫に入れた。皮も肉も牙も骨も全部素材らしいので。



 もちろんアイテムやお金も奪った。

『鉄の大槌』『銅のナイフ×3』『木の小弓×3』『鉄の槍×2』

『鉄の胸当て』『銅の腹巻』そして☆3つのスーパーレア『魔法銀の胸当て』

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【魔法銀の胸当て(疾風)】☆☆☆

防御+140

『風攻撃無効』『遠距離物理攻撃無効』『移動速度上昇』

詳細……空を駆ける風の力を封じた鎧。真の理解者だけがその力を引き出せる。見た目最悪。

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『魔法銀の胸当て』はリザードマンの一匹がしていた。見た目は錆びた鉄にしか見えなかったが、安物に見える加工がしてあるようだった。


 あとは『金貨1枚』に『大銀貨3枚』『銀貨2』『銅貨30枚』

 コボルトが持っていた袋には『ユビックの実』が山盛り入っていた。

 マジックバッグに入れようとして、ちょっと戸惑う。袋は汚いし、変な匂いもする。

 ――病原菌がついてる可能性もあるんじゃないか?



 そこへフローリアが戻ってきた。

「お待たせしました。少ないですが、これを持っていってください」

 差し出してきたのは、中ぐらいの袋。

 中にはパンと干し肉が入っている。グレートボアの肉。


「すみません、袋を綺麗にする魔法って使えますか?」

「ええ、生活魔法のクリーンですね。できますよ」

「この背負い袋と、木の実の袋にしていただけると助かります」

「はいっ。がんばります」



 指を組んで呪文を唱えると、ほっそりした指先で袋を撫でた。

「――清潔クリーン

 袋が綺麗になった。


「ありがとう。魔法を唱える姿も可愛かった」

「も、もう……っ! ユートさんったら」

 フローリアの顔が火が付いたように真っ赤になった。可愛い。



 背負い袋に彼女から貰った袋を入れた。三番倉庫に入れる。

「またいつか会えたらいいな」

「そう……ですね、いつか。でも、人間って怖い人だけではないのですね――あ、これを」


 彼女は手首に巻いていた紐を外した。

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【精霊の守り紐】☆☆☆

 巫女によって精霊の加護を宿された紐。精霊の知らせや、精霊の守りを得られるかもしれない。

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 僕の手首に巻いてくれる。

「ありがとう……なんかお返しがしたいな」

「そんな。助けていただいたのに」



 次元魔法を利用すれば何か作れそうな気がした。


 辺りを見回して、手のひら大の石を拾い上げる。黒曜石のようにつやつやしていた。

 板状にして中をくりぬく。

 次元魔法で圧縮しながら魔力を込める。


 石の腕輪になった。表面は磨かれたように光を反射する。

----------------------------------------

【次元の石輪】☆☆☆

 ユートの魔力が込められた腕輪。次元魔法を使用するときのマーカーになる。

----------------------------------------

 ――お。

 適当に作った割にはいいのができた。


 というか、マーカーなんて作れるのか……。

 この池のどこか――さっきの岩陰に作っておくとよさそう。

 会いやすくなりそうだ。



 石の腕輪を渡すと、頬を染めて頷いてくれた。

「ありがとうございます、大切にします」

「うん。元気でね――冒険者になったら、また会いに来るよ」


「楽しみにしています……わたしは、あと1年で巫女の修行期間が……いえ、なんでもありません。人里はここから南にいったところにあります」

 ――1年まてば、一緒に冒険したりできないかな……結構長いけど、楽しみだ。



 僕は気が付かなかったふりをして笑顔で答えた。

「ありがとう南に行ってみる」

「お気をつけて。――あ、黒の森は、朝霧の時間が特に危険です。夜を徹してでも、森を抜けられますように」


「わかった。――フローリアに何かあったら、また守るから」


「はいっ」

 はにかみ笑い。でも輝くような笑顔だった。

 そして彼女は何度も振り返りながら大木まで行き、ほのかな燐光を残して消えた。



 消えた後もしばらく、ぼーっと残像を見ていた。

 ――エルフって桁違いに可愛すぎる……。存在自体が罪。


 人間がおかしくなって奴隷にしてしまおうとするのも頷けると思った。

 彼女がいればハーレムなんていらない。でも種族の壁が立ちはだかる。

 ――Aランク冒険者か。頑張ってみようかな。



 夜が訪れる中、僕は岩陰にマーカーを設置した。

 さらに池の水を水筒に汲んで、立ち去る。


 朝霧がやばいらしいので、さっさと人里がある南へ向かった。

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