第5話 マジックバッグ作り
森の中の広場にある岩に腰掛けていた。
膝の上にはゴブリンの持っていた麻の袋。
これをマジックバッグにしようと思っていた。
次元魔法に大切なのはイメージ。
まずは真っ暗い異次元があると想定する。
そこへ四角く区切った倉庫を想像する。
その倉庫がマジックバックの底とつながっている。
麻の袋を持つ手から熱い力を流し込む。
名付けて――次元倉庫。
袋に手を入れた。
底がなくどこまでも手が入る。ひんやりと冷たい。
手を抜いたがどうもなっていない。
試しに袋へ小石を入れてみる。
袋をのぞくと小石が消えた。
次に、倉庫にある小石を掴むようにイメージしながら手を入れる。
手が底を抜けたとき、小石に触れた。
取り出すとやはり小石だった。
「いける!」
錆びた銅のナイフを入れてみる。
小石と同じように消えて、また小石と同じように取り出せた。
大丈夫そうなので、槍や盾も全部入れた。
次に耳を入れようとして手が止まった。
――同じところに入れるの、なんかやだな。
これからは耳だけじゃなく、魔物の毛皮とか、牙とか、そういったものも入れていくはず。
全部一つに入れるのは生理的に気が引けた。
――もう一個異次元倉庫を作ってみたらどうだろう?
真っ暗闇の異次元、さっきの倉庫を一番倉庫として、その隣に二番倉庫を想像。
そして耳を入れる。
入った。
続いて、一番倉庫から耳を取り出すイメージをしながら袋に手を入れた。
何も触れない。
今度は二番倉庫からナイフを取り出すイメージをする。
しかし手は触れなかった。
――よし、完璧に分割されてる。
てことで、二番倉庫に耳を入れた。
ついでに三番倉庫を作ってそこにお金を入れた。
四番倉庫にユビックの実を入れた。
ついでに。
パーカータイプのウィンドブレーカー。
前ポケットに手を入れて、三番倉庫につなぐイメージをした。
指先に銅貨が触れた。
「これで財布いらずで取り出せるな」
よしっと気合を入れて立ち上がった。
すると、ふらっと足がもつれた。
工場勤務してたときの徹夜明けの立ちくらみに似た感じ。
「……魔力使いすぎたかな?」
自分の手を真理眼で見た。
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名前:ユート
種族:ハイヒューマン(長命、基礎能力上昇、状態異常抵抗、技能経験値上昇)
性別:男
年齢:15
職業:迷子
天恵:真理眼、魔法適正Lv5、危険感知、前世記憶、言語翻訳
技能:次元魔法Lv5、魔法戦闘Lv1
HP:1500 MP:3012/7500
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ん! 半分減ってる。魔法戦闘ってスキル覚えてるけど。
倉庫4つ作って……袋から4、ポケットから1回つないで。
次元斬は3発撃って。穴掘って。あとは千里眼的に使ったっけ。
近くの木の枝を次元斬で切り落とす。
3減った。
千里眼は1。
てことは、だいたい倉庫1つに1100MP使ったのか。
これは気をつけないと。
逆に言うと、次元斬は大きさに関係なく1000発撃てるってことか。
……なんか多くない?
出てるウインドウに触れてみると、ヘルプウインドウが出た。
魔法適正Lv5あると、総魔力量が5倍になって、消費魔力は五分の一になるそう。
次元魔法もLv5になると、次元魔法の消費量が五分の一に。
これ、魔法適正Lv1で次元魔法Lv1だと、総魔力量は1500で、次元倉庫は1つ1万1000消費かー。
マジックバッグ製作無理だった。
次元斬も30消費する。50発しか撃てないところだった。
確かにこの魔法、扱いづらい。燃費が悪い。
しかもハイヒューマンだから基礎魔力量も増えてるので、人間だともっと少ない。
次元魔法がマイナーな魔法扱いされる理由がわかった気がする。
魔力の消費量に気をつけつつ移動しよう。
今日中に人里までいけるかどうかわからないから。
とりあえず、喉が渇いた。お茶かコーラが飲みたい。
僕は鞄を背負って歩き出した。
次元千里眼を飛ばしながら。