第31話 夢と、魔法について(第一章エピローグ)
宴会の後、ミウの家で一緒に眠った。
夢でまたエルフのフローリアと会った。
暗闇の中、輝くような金髪がまぶしい。
そして、白と赤のワンピースタイプのミニスカスーツを着ていた。
某ビールのパッケージをデザインされたワンピース。
いわゆるバ○ガール。
華奢で豊満な体の線が、ぴっちりと浮き出ている。
酒が邪魔をしてイメージできないなら、むしろ酒のイメージを利用してやった!
えらいぞ、僕!
清純なフローリアに煽情的なお酒の柄がアンバランスですごくいい。
スカートからのぞく長い脚がすばらしく綺麗だった。
でもフローリアはミニスカートの丈を、手でもじもじと引っ張りつつ恥ずかしそうに頬を染めていた。
「なんだかいやらしいです、ユートさん……」
「そんなことないよ! みんなこれで働いてるんだし。恥ずかしがるからエロい仕草に見えちゃうんだよ」
ビヤガーデンに行った時は、給仕の女の子たちがこの格好でうろうろしててやばかったけど。
特にバド○ールが別のテーブルへ給仕に向かったときがやばい。お酒を注ぐときに前かがみになるので、後ろ姿がむちむちのぴちぴちになる。
過去を思い出していると、お尻を確かめるように撫でながら彼女が言った。
「そ、そうですね。ちゃんと隠れてますもんね。言われてみれば白と赤の色合いが格好いいかもしれません」
「うん、似合ってるから大丈夫!」
笑顔で答えておく。
ただ、お尻の丸みや凹みがしっかり浮き出ていた。動くたびに白い生地の下で肉のうねりがわかる。
清潔なエロさ。
あまり見ないようにしつつ褒めておく。
「きっと、フローリアは何着ても似合うんだよ」
「ありがとうございます、ユートさん」
フローリアは、かぁっと頬を赤らめて俯いてしまう。
長い足をモジモジさせている。手は相変わらずスカートの丈を引っ張ってガードしてるけど。
「とりあえず座って話そうよ」
「は、はいっ」
「とは言っても、何もないけどね」
お互いの姿がなぜかありありと見えるだけの、真っ暗な場所。
ひょっとして寝る前に場所も想像していれば反映されるのだろうか?
余裕があれば試してみよう。
僕が先に座ると、その隣にフローリアが座った。
ミニスカワンピなので、座ると太ももの付け根辺りまでずり上がる。
たぶん正面からだとパンツ丸見えになってそう。
長い耳の先まで真っ赤に染まっている。とても恥ずかしいらしい。
僕は気が付かないふりをして話しかけた。
「そうそう。今日は黒の森でワニゲーターを倒したよ」
「え!? 大丈夫だったのですか?」
「危なかったけど、勝ったよ」
「さすがユートさんです。なんて強いんでしょう」
そう言いながらも、フローリアは大きな胸に手を当てて安堵の息を吐いていた。
心配してくれてるだけで嬉しくなる。
「でさ、スキルオーブから『水鱗魔法Lv1』を手に入れたんだけど、どうやって使うかわかる?」
「ええっ!? 人間なのに水鱗魔法を覚えたんですか!?」
恥ずかしさも忘れて両手で口を押さえて驚いている。
「あ、ひょとして人間には使えない?」
「そんなことはないです。触媒として鱗を身に付けていればできる、はずです」
それからしばらく水鱗魔法について教えてもらった。
エルフは使える人もいるらしい。
そのためフローリアも基礎的なことは習っていた。
こうして教えてもらえると、すごく助かる。
人間には覚えられない魔法だから、魔術ギルドに行っても使い方わからないんじゃないかと予想していた。
全部聞いたあとで僕は頷いて教えを反芻した。
「発動の仕方もわかった。水鱗魔法Lv1は周りの色に合わせて体の色を変えるってのだけ使えるんだね」
「あと効果としては弱いですが、体を水の膜で覆って火から守ることもできます。高温すぎる炎や、魔法の火は防げません」
「Lv2以上になると、もっとすごくなる?」
「あまり解明されていませんが、Lv2になると、虹色の膜で覆ってすべての魔法を防ぐ鱗にします。Lv3はゲル状の膜で覆って打撃や斬撃を無効になります。Lv4で透明になります。Lv5ですべての攻撃を無効にする鱗にします」
「効果高いね。一定時間で効果が切れそう。それに一度に一つしか発動できなさそうだね」
「えっ!? よくわかりますね。ユートさん、すごいです」
発動方法は触媒の鱗に念じれば効果が発動するようだ。
リザードマンたちも呪文を詠唱してなかったし。
ていうか、これ。
ワニゲーターがLv2以上覚えてたら、めちゃくちゃ強かったのでは?
『豪腕』と『第六感』がデフォのようだし、確かに数十人数百人で戦わないといけないレイドボスだわ。
するとフローリアが足を崩して女の子座りになった。ぴっちりしたスーツにしわが寄る。その分丈が短くなり、細い足がさらされた。
でも美しい横顔が憂いを帯びている。
「はぁ~。どうしましょう」
「……巫女の試験、だっけ。それ、僕が手伝ったらだめなのかな?」
彼女は首を振った。金髪が光の粒子をこぼしつつさらさら揺れた。
「だめです。付き添いが認められる場合もありますが、家族が一人だけです。他人は無理です……お気持ちだけ、ありがとう」
悲しげにそう言うと、体を捻るようにして真っ黒の地面に手をついた。
生地の下で大きな胸がうねる。先端の形までわかった。
というか下着まで想像してないね。下は裸なのか。
だから余計にエロく見えてしまうんだ。
これは失敗した。
この腕で抱き締めたい衝動でいっぱいになる。
――でも、そのためには生きててもらわないと!
僕は意を決して言った。
「だったら家族になろうよ」
「え!?」
「僕が守る。絶対君を守るから」
いつになく真剣な口調で喋っていた。
彼女の顔が、火が付いたように赤くなる。
「で、でも。人間さんは危険だって、村のみんなが言いますし……」
「人間にだって、僕のように好きになった彼女を大切にしたいと考える人はいるはずだよ。僕は守るよ!」
「で、でも……そういって甘い言葉で誘い出して、奴隷にしてしまうって聞きます……」
「なんでそんなことを! 僕はフローリアを独占したいだけなんだ! 他人に指一本触れさせるもんか!」
自分で言ってて、わりと最低な言葉だと思うけれど、もう本心が止まらない。
フローリアは金髪を揺らして僕に向き直る。
かなりの至近距離。なだらかな肌が上気して、長い耳が揺れているのがわかる。
「ユートさん……本当に守ってくれますか?」
「一生大切にするよ。だから、結婚しよう」
「…………はい」
消え入りそうなほどのか細い声で彼女は答えた。
「ありだとう。でも、下を向いたらダメだよ」
俯いてしまいそうになる彼女の顎にそっと指を添えて上を向かせる。
「あ……ユートさん……」
「フローリア」
「ゆーとさん」
「ふろーりあ」
バカにでもなったかのように互いの名前を優しく呼び合いつつ、そっと顔を近づけていく。
輝くほどの美しい顔、翡翠色の大きな瞳。
果実のように赤い唇が甘く誘う。
彼女は目を閉じた。長い睫毛が伏せられる。
フローリアに顔を近づけると、花のような香りを感じた。
そして、甘い吐息が交差して――。
◇ ◇ ◇
僕はミウのボロ長屋で目を覚ました。
ガバッと起き上がると、思わず叫ぶ。
「どうして夢って、一番いいところで終わるんだ~!」
狭い家の中。
土間で朝食を作っていたミウが、目を丸くして固まっていた。驚きすぎて猫耳がピンッと立っている。
「ど、どうしたました、ユートさん……おはようございます?」
「おはよう……ごめん、大声出して」
「いえ、いいんです――朝食もうすぐできますからっ」
「ありがとう……ん?」
部屋を見ると、荷造りがしてあった。
長旅にでも出るような背負い袋と衣装箱。
よく見ると母親のニャスカがいない。
僕の視線に気付いたミウが、スープ粥をよそいながら言った。
「ちょうど故郷の村へ帰る一団が滞在してて。一緒に帰ることになったんです」
「え? ミウも帰るの?」
「いいえ。お母さんだけです。病気治ったばかりだから心配だったんですけど、お母さん一人で帰るって聞かなくって」
すると外のほうから賑やかな声が聞こえてきた。
「ここよ。荷物運び出して~」
「こんなところに……」「太変だったんだねぇ」「連絡くれたら村の誰かが迎えにきたのに」
扉が開いてニャスカが入ってくる。
顔色がよくなっていた。猫耳や尻尾の毛並みにも艶が戻り、若々しく見えた。
「おはよう、ユートくん。起きたみたいね」
「おはようございます。病み上がりなのに急ですね」
「邪魔者は村に隠遁するわぁ~……それじゃ、みなさん、お願いね」
「「「あいよ」」」
ぞろぞろと獣人たちが入ってくる。
そしてまとめてあった荷物を運び出していく。
「帰郷というより、引越しですね」
「まあね。私は一年に一度ぐらい病気になってしまうから、体調のいい間に帰らないと」
「でも元気になってよかったです」
「ユートくんのおかげよ……ミウをよろしくね」
「はい。頑張ります」
体格の良い獣人男性がミウに話しかける。
「彼がそうかい?」
「あ……はいっ」
顔を真っ赤にしてミウがうつむく。
そして僕の傍へ来た。
「妹の病気を治してくれたそうだな。ありがとうよ」
「いえ、たいしたことじゃありませんから」
僕の背中をごつい手でバシバシと叩いて笑う。
「ふふん。偉ぶらない、いい若者じゃないか! ミウが選んだだけはあるな。また村にも遊びに来てくれ!」
「はい、またいつか」
そうこうするうちに荷物は全部運び出された。
がらーんとした室内は、狭いなりに広くなった感じがする。
長屋の外に出る。
清々しく晴れた春の朝。
狭い路地にみんなが立っている。
最後の挨拶を交わす。
「ミウ、元気で過ごすのよ」
「うん! お母さんも気をつけて。来年はあたしがポーション作ってとどけるから!」
「楽しみにしてるわ」
別の男性が口を開く。
「ミウちゃん、頑張りなよ」
「はい、おじさん! お母さんをよろしくお願いします」
ニャスカさんが僕の手を握り締めて頭を下げる。
「どうかうちのミウをよろしくお願いします」
「はい。大切にしますから安心してください――ああ、そうだ」
「何かしら?」
「お別れの餞別として、これを」
小石のマーカーを渡す。
見た目はただの石ころでしかない。
ニャスカは不思議そうに首を傾げる。
「これは?」
「泥棒避けというか、魔物避けのお守りみたいなものです。家の庭か裏手の人目につかないところに置いといてください」
「まあ、ありがとう、ユートくん」
ニャスカは大切そうに小石をポケットに仕舞った。
これで病気をしても、いつでもエクスキュアポーションを届けられる。
様子も見られるし。
ミウも安心してくれそう。
それから彼らは旅立っていった。
長屋の部屋に戻ると、狭いのにますます広くなった気がした。
ミウは顔を真っ赤にしていた。
尻尾が恥ずかしそうに左右に大きく揺れている。
「あ、あのユートさん。朝食できてます。食べますか?」
「そっか、まだだった。もらうよ。ありがとう、ミウ」
「いえ、全然大丈夫です」
部屋に上がりこんでちゃぶ台のような低いテーブルに座ると、ミウがスープ粥を持ってきた。
「ありがと。これ、お酒飲んだ翌朝には優しい食べ心地でいいよね」
「獣人はお酒が好きだからなのかもっ。――あの、ユートさん」
「ん?」
粥を掬う手を止めて彼女を見る。
頬を染めたミウは、耳をぴこっと動かして傍に座った。
「ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「あ、うん。こちらこそよろしく……なんだか照れるね」
「あはっ。あたしもです!」
そう言ってミウは笑った。可愛らしい笑顔だった。
二人で何気ない会話をしながら朝食を食べる。
新しい世界の新しい生活。
なんだかミウとはなし崩し的に夫婦みたいになってしまったし、フローリアにはプロポーズ成功するし。
この異世界ハーレム生活を守るためにも、もっと勉強して強くなろう。
穏やかな朝の時間の中でそう思った。
転生チートで異世界ハーレムを~第一章 終
10万字越えで一区切り。
お読みいただきありがとうございます。
そしてブックマーク200件ありがとうございます!
しばらく別作品の更新に時間を取りたいと思います。
三作同時更新は、自分には無理でした。すみません。
おそらく3日に一度ぐらいの更新になるかもです。




