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第29話 ワニゲーターが強かった理由

遅れてすみません。

 僕は黒の森でワニゲーター率いるリザードマンの群れを倒した。



 まだ息があるワニゲーターの元へ行く。


 薄暗い森の中、泥と落葉にまみれてワニ人間がいた。

 手足と腹を深く切られて虫の息だった。


 ワニゲーターに近付くと、鋭い歯がずらりと並んだ顔を向ける。

「この俺様が……人間に……負けただと」

「悪かったね。強かったけど」



 ワニゲーターは浅い息を繰り返しながらも、ふんっと鼻で笑う。 

「しかも……魔術師ごときか……」 

「不満かい?」


「いや、自分より強い男に負けた……それで充分……だ」

「そう」


 ワニゲーターは僕を見上げて不敵に笑う。

「だが俺より、強いやつは、いくらでも……来るぞ……」

「え?」


 聞き返したが答えてはくれなかった。

「俺は、トカゲの王になる……なって、ハーレムを……作る……」

 彼は大きく息を吐いて、そして全身から力が抜けた。

 落葉にまみれて、もう動かない。



「来るって……? なにが?」

 ――まさか、もっと強い奴らが?


 さわさわの風が吹き抜けて、木々の枝葉を揺らしていく。

「どうしよう……」

 動かなくなったワニゲーターを見ながら思わず呟いていた。

 


 まだこの世界に来て3日だけど、ちょっと根本的に考え直さないとダメかもしれない。

 確かに僕は強い。

 でもその強さを把握しきれていない。


 この状態でワニゲーター以上に強い相手と戦うことになったら危険だ。



 冒険者になってお金稼いで、女の子ともいろいろ仲良くなって、うふふ~、と考えていたけど。


 もう少しちゃんと戦い方を勉強したほうがよさそうだ。

 これから仲間を連れて冒険の旅に出たら、守りきれないかもしれないから。


 

「異世界転生して浮かれすぎてたかも……もう少し真面目にハーレムエンドを目指そう」


 うん。

 ギャルゲだってなんだって、自分にできることを最大限に頑張るからのトゥルーエンドなんだ。

 今回の転生では『絶対転生』も『事故死転生』も取らなかったから、死んだら終わり。


 もっとこの世界で生き抜く方法を学ぼう。



 って、ここで死骸を見下ろしてても仕方ない。

 さっさと討伐部位と核を抜き取って、森の北にマーカーを設置しに行こう。


 森に散らばったリザードマンの死骸から尻尾を切り取り、次元倉庫に入れる。

 胸を次元斬で斬ってみたけど魔晶核は一つだけだった。


 ただ、ワニゲーターの胸を裂いたとき、魔晶核以外に小さな丸い玉を見つけた。

 青い色をした親指ぐらいの大きさの玉。

「なんだろこれ? スキルオーブって表示されてるけど――うわ!」



 玉を手に持った瞬間、青く光り出した。

 そのまま手のひらに吸い込まれていく。

「え? え? なにこれやばい!?」


 とっさに自分の手を真理眼で見た。

----------------------------------------

名前:ユート

種族:ハイヒューマン(長命、基礎能力上昇、状態異常抵抗、技能経験値上昇)

性別:男

年齢:15

職業:迷い人

天恵:真理眼、魔法適正Lv5、危険探知、前世記憶

技能:次元魔法Lv5、魔法戦闘Lv2、水鱗魔法Lv1

----------------------------------------

 魔法戦闘がLv2になってる、って違う!?

 たぶんリザードマンの種族固有魔法だった『水鱗魔法Lv1』を覚えてる!


 あ、地味に『危険感知』が『危険探知』に変わってる。

 感知は気付くけど、何がどの方角からってのはわからない。

 探知は位置までわかる。上位スキル。

 ワニゲーターの持ってた『第六感』の影響かな?



「……というか、進化種は倒すとスキルを取れるんだ……」

 『豪腕』や『剣術Lv4』が欲しかった気もするけど。

 まあ『色欲』が付かなくてよかった。


「進化種は強いけど、倒すだけの価値があるってことだね……まてよ?」

 ――ヒュージスライムExは進化種だったはず?

 そのまま倉庫に吸い込んで、入れっぱなしになってる。


 何十トンもの水分が出てくるから、そこらに流すわけにはいかなかった。

 あの池の4割の体積があったんだから、うかつに出すと僕まで溺れる可能性がある。

 スライムの核球だけ出そうとしても倉庫には『ヒュージスライムの死骸1』と一まとめで収納されているからできない。


 まあ出すにしても、うかつに取り入れてロリコンや両性具有になったらいやだし、もう少しスキルオーブのことを知ってからだね、うん。



 でもこれでリザードマンたちが使っていた迷彩で隠れることができるようになった。

 死ににくくなったはず。


 お礼といってはなんだけど、ワニゲーターとリザードマンたちは一緒に生めて、大きな石を置いた。墓石がわり。



「さて。今日の任務、終わらせないと」 

 リザードマンたちの装備を倉庫に閉まって北へと向かった。


 ちなみに装備はワニゲーターの大剣以外、鉄の鎧や鉄の槍ばかりでレアなのはなかった。

 大剣は『不折不曲』がついたレア。折れずに曲がりもしなくてずっと新品のままらしい。それ以外は普通の大剣だった。



 その後、半日かけて黒の森のずっと北へと移動した。

 途中、ユビックの実を見かければ回収。

 森の中にできた穴――大木が倒れて日が差し込む場所に、ユビックの低木が生えていた。


 それから30分ぐらいごとにマーカーを設置していった。

 これでいつでも収集に来れる。

 ついでに猛毒の泉にもマーカーを設置しておいた。


 

 夕暮れになる頃には、ユビックの実を4キロぐらい手に入れた。

 ただ僕の始まりの場所まではいけなかった。

 どんだけ遠いんだ。


 いや、一人だからユビックの実の回収に時間がかかってしまったのか。

 どんぐりみたいな実だから枝にしっかり付いてるんだよね。

 綺麗な状態で手に入れようとすると枝から外すのに苦労する。



 それにしても今考えると、初日はもっと強い敵に襲われてた可能性があった。

 ゴブリンでよかった――いや。

 あのホブゴブリンだってLv3のスキル持ってたはず。

 よく生きてたもんだ。浮かれすぎだよ自分。

 


 僕はなんだかワニゲーターとの戦いを通して身が引き締まる思いがしていた。

 ――この世界は異世界だけどリアルなんだ。

 チートがあっても真面目にこつこつ頑張ろう。


 そう決心しながら町へと帰った。


       ◇  ◇  ◇


 黄昏時の辺境町ウードブリック。

 仕事を終えた人々が大通りを歩き、屋台で何かを買って食べている。

 賑やかな声が聞こえる酒場や食堂からは、明るい光が漏れていた。


 僕は町の中央にある堅牢な建物、冒険者ギルドに入った。

 入口近くのカウンターへ行って男性職員に話しかける。

「魔物を退治しましたので討伐部位の確認お願いします。それとユビックの実100個も手に入れました」



 低いカウンターに次元倉庫からリザードマンの尻尾と核、ユビックの実を置いた。

 それとコボルトやオークの部位も出しておく。


 年配の男性は目を丸くしながらも事務的に調べていく。

「ユビックの実100個ありますね。尻尾が11本……魔晶核は2つ……え!? これは!」


「どうしました?」

「リザードマンの魔晶核じゃないですね、これ! いったいなにを!?」

「ワニゲーターでした」

 僕が答えると、ギルドが騒然となった。



 依頼掲示板を眺めていた冒険者が血相を変えて振り向く。

「ちょ、お前! 今、なんつった!?」


「倒したのはワニゲーターでしたって」

「嘘だろ!? リザードマンと見間違えたんだろ!? ――なあ、そうだろ!?」

 受付の職員に詰め寄る男性冒険者。


 年配の職員は虫眼鏡を取り出してじっくりと部位と魔晶核を眺める。

 そして、ほうっと息を吐いた。

「ワニゲーターの魔晶核と尻尾に間違いありません」


「な、なんだって! ――どこだ、どこにいた!?」

 今度は冒険者が僕につかみかからんばかりの勢いで寄ってきた。顔が近い。



「どこって、黒の森で……かなり奥に入ったところで遭遇しました。めっちゃ強かったです」


「それを一人で倒したってのかよ! ――か~! ばけもんか、お前!」

「え?」


 騒ぎを聞きつけた冒険者たちがカウンター近くへとやってきた。

 僕を遠巻きにして眺めている。

「ワニゲーターを?」「あいつが一人で倒したらしい」「あのユビック坊やが!?」「ありえねー!」



 何か相当やらかしたらしい。

 いや、確かに強かったけど。


 ていうか『ユビック坊や』ってなにさ、それ。

 陰で変なあだ名つけられてたみたいだ。

 そりゃユビックの実収集依頼ばっかりこなしてたけどさ。



 戸惑っていると年配の職員が教えてくれた。

「ワニゲーターは部下を連れて群れを作る、Aランク級の集団モンスターです。集団モンスターとは、ギルドで冒険者たちを召集して討伐団を組織する必要があるモンスターのことです」


 ――マジかっ!

 ゲームで言えば、数十人で討伐するレイド級モンスターだったのか!


 そりゃソロで戦ったら苦労するよっ。

 今思うと、確かにレイドモンスターっぽい動きだったかも。

 15メートルぐらいあった大木を1キロぐらいぶん投げる化け物だったし。

 大剣を振り回しながらも遠距離範囲攻撃までしてくる。



 僕は辺りにいる冒険者たちを眺めた。

 C~Eランクの人たちがいるけど、メインスキルはだいたいLv3ぐらい。


 確かにこの人たちだと単体ではワニゲーターには負けるだろうなと思った。

『剣術Lv4』に『豪腕』、そして『第六感』まで持ってた奴は強すぎる。



 ……でも、ワニゲーターはもっと強いのが来ると言っていた。

 つまりレイドモンスターがこれからも出てくるってことだ。

 やっぱり本格的に戦い方を学ぼう。


 僕は『魔法適正Lv5』があるし『技能経験値上昇』もある。

 人の数倍早く学べるはず。

 一ヶ月はランクポイントは諦めて勉強だ。

 もちろんユビックの実依頼だけは受けてお金を稼ぐけど。



 ギルド内が騒然とする中、年配の職員が紙を差し出してきた。

「はい、こちらが証明書です。カウンターでカードと一緒に出して報酬を受け取ってください」

「わかりました」

 受け取って受付嬢たちのいるカウンターへ行く。


 周りの冒険者たちが僕を見てひそひそ話している。

 これは何かありそうだ。

ようやく10万字です、応援ありがとうございます!

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