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第28話 ワニ遭遇戦!

 黒の森の中。

 町を襲う気でいるリザードマンの集団を見かけたので退治することにした。


 森の中をかなりの速度で進む彼らはエルフの泉を目指している。

 僕は大きく迂回してその横から近付いた。


 青い鱗で覆われたトカゲ人間たち。その数9匹。

 ワニ人間以外、全員同じに見える。



 僕は大木の陰に隠れながら、そっと狙いを付ける。

 奴らの前方に立方体を想定して、やってくるのを待ち構える。

 まとめて首をはねるつもり。


 彼らは森の下草を踏みつけて進む。

 ――そして。

「じげ――」


「伏せろっ!」


「――んざん!?」 


 ザァンッ!


「ぐあ!」「えは!」「ぐお!」

 3つの首が空を舞った。



 しかし残りのリザードマンたちはワニゲーターの命令に従ってしゃがんで避けている!

 9匹中、3匹しか首をはねられない!


 一撃で全員の首をはねようと欲を掻いたのがいけなかった。

 胴体を狙わなかったのは防具を傷つけないため。

 まさか気付かれるとは!


 距離だってそうとうあるのに。



「ちっ!」

 逃げられたら厄介だ。

 鎧を奪おうなんて考えず、倒すべきだった。


 手当たり次第に小さな次元斬で斬り捨てていく。


 ザンッ、ザザンッ!


「ぎゃあ!」「しゅばあ!」

 地面や、藪ごと2匹斬った。

 辺りに土と葉っぱが散る。



 残り4匹。

 するとワニゲーターが大木の陰に隠れながら叫んだ。

「木の上だ! 逃げ回れ! 擬態だ!」


 ――ぬ。

 この短時間で次元斬の苦手な部分を見抜かれた!?

 四角い空間を想定してそれを切るようにイメージしているので、動き回られると狙いが定められない。



 すると、リザードマンたちが変な行動に出た。

 いきなり服や鎧を脱ぎ捨てて裸になった。

 そしてトカゲのようにするすると木に登る。

 ――木に登りやすくするためか。



 遠慮なく、大木の幹に張り付いたリザードマンの背中を斬る。


 ザンッ!


「ぎゃああ!」

 血まみれになって地面に落ちていった。肉のひしゃげる嫌な音が響く。

 残り3匹。



 ――が。

 他のリザードマンが見えなくなった。

 森の中がしんと静かになる。


 擬態って言ってたような。

 そんなスキル持ってなかったはず?



 僕の背筋が冷たくなる。

 危険感知の知らせが大きくなった。

 ――なにか来る! 場所がばれた!?


 僕は隣の大木へと次元移動した。


 ガッ!



 さっきまで背にしていた大木に突然、両刃の大剣が振り下ろされて幹をえぐった。

 その剣が引き抜かれると、またすうっと虚空に溶けていく。

「――なっ!?」


 なんだあれ!? 剣だけが空を飛んでる!?

 真理眼で目を凝らすとステータスが浮かび上がる。

----------------------------------------

名前:ボス

種族:ワニゲーター【☆☆☆☆】

性別:オス

年齢:18

職業:リザードリーダー

天恵:第六感、豪腕、色欲、

技能:剣術Lv4、水鱗魔法Lv1


詳細……討伐証明部位、尻尾。

リザードマンの進化種。強靭な肉体を持つ。鱗は鉄の鎧よりも硬い。

超猛毒水を飲んで生き延びたリザードマンだけがワニゲーターになるという伝説がある。

----------------------------------------

 本体がいる!

 ――ってことは迷彩だ!

 そうか! カメレオンのように体表の色を背景色と同じにしているんだ!



 僕は慌てて10メートルほど離れた木の陰に次元移動した。

 息を整えながら考える。


 なるほど。『水鱗魔法Lv1』のスキルで、迷彩状態になれるのか。

 ワニゲーターだけじゃなく、他のリザードマンたちも持っていた。


「でも透明になるわけじゃないんだな」

 それだったら、わかる。



 体がざわざわする、どこからか狙われている。


 一度仕切り直すために、泉に設置したマーカーに飛んだ。


 泉の傍の岩陰で息を潜める。

 そこから次元千里眼でさっきの戦闘があった辺りを見ていく。

 じっくりと。動かない景色を。



 ――見つけた。

「次元斬」


 ザンッ!


 遠くから「ぎゃああ!」と叫び声が響いてきた。

 木の股に隠れていたリザードマンが真っ二つになりながら地上へ落下していった。



 うん。

 確かに森は隠れ場所がいっぱいある。

 どこに何が隠れているかわからないと見つけられない。


 けれど、あの大きな図体が森の木の上に隠れているとわかっているだけで見つけやすい。

 怪しい箇所を真理眼でじっくり見ればステータスウィンドウが現れるのでいるのがわかる。


 擬態する昆虫――例えば、ナナフシだって、いると分かっていればすぐに見つかるけど、知らないと気付かないようなもの。

 こんなところで昆虫採集に明け暮れた勘のよさが役に立つとは。



 さらにもう一匹見つけて斬り捨てた。

 断末魔が森を震わせる。

 残り1匹。


 あの進化種ワニゲーターだけだ。



 攻撃された辺りをじっくりと見ていく。

 ――が、いない。

 

 木の陰、木の上を見てもいなかった。

 ステータスウインドウが開かない。



 どこだ? どこいった?

 それとも逃げ出したか?

 

 でも頭を締め付けるような圧迫感が続いている。

 危険感知が、あいつがまだ僕を狙っていると知らせている。



 泉の傍の岩陰に隠れつつ、思わず呟く。

「あの『第六感』ってのがやばいよね」


----------------------------------------

【第六感】幸運や危険などの見えない予兆を察知する。

----------------------------------------

 僕の持つ危険感知や、盗賊の持つ罠宝探知の最上位版かもしれない。



 また『剣術Lv4』の強敵だ。

 僕が攻撃するたびに手の内を見抜かれていってる感じがする。

 

 普通に次元斬をやっても回避される気がする。

 何か違う戦い方をしないと。

 


 次元魔法に何ができる?

 僕は倉庫からマーカーにした小石をいくつか取り出した。

 鑑定眼がなければただの小石にしか見えない。


 ……マーカーって座標だよね。

 次元移動以外にも使えるんじゃないかな。


 閃くものがあったので、試すことに。

 失敗したら街道沿いの祠に逃げてしまえばいいんだし。



 ――と。

 ちゃぽん、と気の抜けた水音がした。

 はっとして泉を見る。


 緑の木々に囲まれた、25メートルプールより広い青い泉。

 清浄な水面に波紋が一つ広がっていく。

 魚が跳ねたっぽい。



 いや、この状況でその判断は死亡フラグな気がする。


 奴らの移動速度は早かった。

 ひょっとしたらもう泉の傍にまで来ているのかもしれない。

 そしてワニゲーターが様子をうかがうために小石を放ったとも考えられる。



 まずは奴がどこから来るか見抜かないと。

 そもそもどうして泉に隠れているのかわかったのだろうか。

 第六感の直感かな?


「いや、違う」

 奴らは南にある泉に向かってまっすぐ進んでいた。

 そこで僕からの攻撃を受けた。


 ということは、僕が何らかの理由で水を守ろうとしているのは知られている。

 だから攻撃しようと考えたら、あいつは泉に近付こうとしてくる。

 ひょっとしたら迂回してくるかもしれない。



 僕は泉の近くで一番背の高い大木へと次元移動した。

 さらに上へと魔法で移動していく。枝を揺らさないため。


 奴は泉に来るはず。

 それを上から狙う!



 その時、森の中に轟音が響いた。

 ゴゴゴッ、バサバサッ!

 と激しい音が鳴る。


 とっさにそちらを見た。

 泉から少し離れた森の中。

 次元千里眼で鬱蒼と生い茂る木々や緑の藪をくまなく探す。

 けれどワニゲーターどころか虫一匹いない。

 当然、ステータスウィンドウも出ない。



 なんの音だろう?

 木の枝が折れるような音だったけど。

 音がしたのに怪しいものがない。

 

 木々の根元に生える低木の茂みまで見てみた。でも何もいない。

 何か音がする魔法でも使って注意を引き、本人自体は反対側から来てるとか!?


 それからしばらく、探す、空振り、また音、の繰り返しが過ぎた。



 僕はこのままじゃ埒が明かないと思った。

 音はだいたい定期的に鳴っていたので、次の音が鳴る頃を見計らって、目をぐいーんと上へ伸ばすイメージをした。


 上空から森を眺める。

 青空が映り込む楕円形の泉。

 上から見ると密集した木々が緑の絨毯のように見えた。



 次の瞬間、森が動いた。

「なっ!?」

 よく見れば、1本の木が、木のままで移動していた。


 でもただの木だ……って、まさか!


「あいつ、大木の下に入り込んでスネークしてたのかっ!」


 まさか大木ごと移動していたとは!

 枝や茂みなどの細部を探すことに気を使いすぎて、『木』そのもののおかしさに気がつかなかった!

 なんという大胆な「だるまさんが転んだ」だった。

 


「でも、その下にいたらすぐには逃げられないね。もらった」

 僕は狙いを定めて土や木の根っこごと、斬る!


「――次元ざ――!」


 ブゥゥンッ!


 僕が言い終わる前に大きな質量が風を切った。


 大木が、飛んできた。 

 僕のいる木に向かって丸ごと飛んできた!


「くっ!」

 ――むしろチャンスだ!

 手に持っていた小石を投げる!

 一つは地面へ。もう一つは青空へ。


 そして大木が当たる直前、投げたマーカーに次元移動した。

 空へ投げたマーカーのところへ出現した。

 頬に風が当たる。まるで空を飛んでいる気分。

 いや、落下を始めている。



 すぐに森を見下ろす。

 投げられた大木が周囲の木をへし折っていたため、奴の居場所が見通せた。

 姿勢を崩したワニゲーターが見えた。


 奴が何かを察知して空を見上げる。

 目が合った。


 ――でも、もう遅い。

「次元斬!」


 ザンッ!



 ワニゲーターは避けようとしたが崩れた体勢ではワンテンポ遅れる。

 草や根っこを切り飛ばし、土が舞う!


「ぐわぁぁぁ!」

 奴の断末魔が響いた。



 僕は重力に引かれて落下していく。

 すぐに地面に投げたマーカーへと移動した。

 足への衝撃はほとんどなく着地できた。


 ……運動エネルギーは次元移動すると消失するのだろうか。

 また今度調べよう。


 それにしても……危なかった。

 どうなっただろう?



 泉の周りを見る。

 僕が直前までいた大木の先端がぽっきりと折れていた。


 数十メートル向こうには、緑の絨毯だったはずの森に穴が開いていた。

 木々が巻き込まれて倒れている。

 投げられた大木も、大人数人でよくやく手を回せる太い幹が真ん中から裂けていた。

 


「僕が攻撃する直前に投げてきたんだね。どんだけ怪力なんだよ――あ、そうか」

 そういやワニゲーターは『豪腕』て天恵スキルを持ってた。

 それで、こんな芸当ができたんだ。


 地面に倒れたワニゲーターを遠くから眺める。

 右腕と右足が切断され、お腹が切り裂かれていた。

 だが、まだ生きている。


 ――すごい。あの状態でも直撃を避けたのか。


 僕は血と落葉にまみれた奴に止めを刺すため、森の中を歩いていった。

次話更新はあさって6日です。

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