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第25話 異世界ハーレム

 夕暮れ時の町を、ミウと手をつないで買い物して回った。

 パンや野菜を買い終えると、彼女が尋ねてくる。

「ユートさん、何か食べたいものってあります?」


「ん~、あっ、そうだ。鳥を串に刺して焼いたのが食べたいな」

 ――前から気になってたアレ。


 ミウが、顔を緩めて笑う。

「あれ、おいしいですよ! この街の名物なんで!」

「そっか。じゃあ、行こう」

「はいっ! あたしのおごり、です!」

 

 彼女は笑いながら僕の手を引っ張っていく。猫耳が元気に動いている。

 ――なんだか、恋人同士みたい。ちょっとフローリアに申し訳ない。

 そんなこと考えたら、少し頬が熱くなった。


       ◇  ◇  ◇


 買い物を終えてヒルダの店に戻ると、エクスキュアポーションはできていた。

 ガラス瓶に入った黄色い液体。

「はいお待ち。落とすんじゃないよ」

「ありがとうございます、ヒルダおばあちゃん!」

 ミウが宝物を抱えるように胸に抱く。


「ミウ、よかったね。早くニャスカさんに飲ませよう」

「はい、すぐに……。あぁ、ようやく手に入った……よかったぁ。ユートさんは命の恩人です。本当にありがとうございますっ!」



「たいしたことじゃないさ。これからもよろしくね」

「はいっ!」

 満面の笑みで頷く。茶髪がふわりと揺れた。

 ――僕の力からするとたいしたことしてないけど。

 なんだか打算的なことも忘れて、笑顔に出来てよかったと素直に思った。


       ◇  ◇  ◇


 ミウの住む長屋に帰ってきた。

「お母さん、ただいま~」

「おかえり、ミウ――えっ!?」


 ミウの母ニャスカは、ミウを見たまま寝床の上で固まっていた。

 その視線はミウの首元――次元首輪に注がれている。


 ミウが顔を真っ赤にして手を振って否定する。

「あ、あの。これは違うの! パーティーとしてもらっただけで……その、ユートさんには、そういう気が全然ないからっ」



 ニャスカは寝床の上に起き上がると、僕をジロッとにらみつけた。

「ちょっと、ユートさん。いったいどういうことです?」

「えっと、あの……深い意味はなくて。装備してもらったほうが便利だから……」


「そんなにうちのミウが可愛くないとおっしゃるのですかっ!」

「え、違います……ミウはとっても可愛いと思いますよ」


「だったらなぜ婚約を約束したと言わないのですか。首輪をしてたらミウは他の男性から声をかけられることがなくなってしまうではありませんか」


 ――ああ、確かにそうだ。

 ミウの結婚のチャンスをダメにしてしまいかねない。

 まあ、母として怒るのはごもっともかな。



 申し訳なくて、頭をかきつつ謝る。

「勘違いさせてごめんなさい。どうしてもミウをもらうことはできないので、腕輪か指輪にします」

「なぜです? 獣人だからですか?」

「それは違います。獣人だからって差別しません。むしろ人間よりかわいいです。でも……」


「なんです?」

「実は……ほかに好きな人がいるんです。だから、ミウをもらうわけには……」

 ――さすがにエルフが好きだとは言えなかった。



 ところが、ニャスカは妙な顔をして首をかしげた。鳩が豆鉄砲食らったような顔。

 隣にいるミウも変な顔をしている。


 ニャスカは瞳を細めつつ尋ねてくる。

「それがなぜ、ミウがもらえないことになるのです?」

「なるのでは?」

「え?」

「え?」


 ――なんだろう。

 今、ものすごい考えのズレというか、意思疎通のズレを感じる。


 必死で考える。

 なにがおかしいのだろう?

 ……まさか。



 おそるおそる尋ねる。

「えっと、ひょっとして男の人が何人も妻を娶るのは許されてるのでしょうか?」 

「なに当たり前のことを言ってるのですか? ――ひょっとして常識がない人?」

 もの凄く胡散臭いものを見る目で見られた。


 ミウが慌てて割り込んでくる。

「あの、お母さん! ユートさんは魔物に襲われたときに怪我をして、記憶があやふやになってるんです!」

「あら、そうだったの……それじゃあ、仕方ないわね。ええ、養えるならいくらでも一夫多妻で構わないのよ」



 僕は思わず、拳を握り締めた。

 ――ハーレムきたー!

 あ、でも。


「それは、獣人だけですか? 人間も一夫多妻制ですか?」

「どの種族もみんなそうよ。ドラゴンは一夫一妻制と聞いたことがありますが、強いから例外ですね」


「わかりました。ミウには世話になってます。これからもいい関係を続けたい。ただ、僕の好きな人がなんて言うかわからないので、その間だけ待ってもらえますか」


「まあ、いいでしょう――ユートさんのように稼げる人は大勢を幸せにする義務がありますから」

「義務ですかっ!? 女性としては嫌ではないのですか?」

 あまりにも考え方が違いすぎて驚くしかない。



 ニャスカは悲しげな眼差しでミウを見る。

「私が男を選ぶ目がなかったばっかりに、この子には苦しい辛い生活をさせてしまいました。魔物が徘徊している中で持続的に稼げる人は素敵なことです」


 ――なるほど。

 確かに危険が多いから稼げないし、稼いでも不慮の事故ですべてを失うのか。


 まあ、できるだけ善処したいところではあるけど。

 むしろ、秘密を守ってもらうためには、ミウを妻にするのもありかもしれない。

 一番信頼できる他人が夫婦だろうし。

 ……別に打算的に考えているだけであって、決して猫耳と尻尾が可愛いからって理由じゃないから。たぶん。



 するとミウが母親に近付いた。

「そんなことより、これ! エクスキュアポーション! ようやく手に入ったの!」

「まあ、ミウ! 本当に手に入れてくるなんて! ありがとうね」


「ううん。お礼はユートさんに言って。お金払ってくれたのも、ユビックの実をくれたのも、全部ユートさんなんだからっ!」

 そして今日一日のことを全部話した。

 もちろん、秘密はぼかしつつ。



 話の間、ニャスカは目を丸くして僕を見ていた。

 話が終わると、苦笑しながら首を降る。

「頼りなく見えるのに、本当に素晴らしい方ね。この若さで強くてお金を稼げるなんて。ぜひともミウを幸せにしてやって欲しいわ」


「出来る範囲で、頑張ります」

 なんだろう、幸せという言葉が重く感じた。

 でも嫌じゃなかった。



 それから夕飯を食べた。屋台で買ったできあいの物が多いけれど。

 パンに新鮮なサラダ。

 柔らかいパンは高いらしい。ミウが奮発していた。


 焼き鳥は予想以上のおいしさだった。

 弾力のあるぷりぷりした身に、甘辛いタレが染み込むように絡んでいる。

 地球の焼き鳥とは少し違うけれど、これはこれでおいしかった。



 食後にはニャスカがエクスキュアポーションを飲んだ。

 顔色がみるみるうちによくなっていく。

「よかったですね」


「ありがとう、ユートくん」

「ユートさんのおかげです……うぅ」

 またミウは涙ぐんでいた。



 それから夜も遅くなり、寝ることになった。

 三人で川の字になって寝る。


 真っ暗の中、僕は天井見上げながら考える。

 ――フローリアになんて言おう。

 エルフも一夫多妻制なのかな。違ったらどうしよう。

 それだけが心配だった。



 なかなか眠れないので、倉庫に入れた小石を全部マーカーにした。

 いろいろ使い勝手があるように思えた。


 それから次元倉庫を二つほど作った。

 MPを沢山消費したので、急速に疲れが押し寄せる。

 ようやく眠れそう。


 ――あ、待って。

 このまま寝たらまたフローリアが裸だ。

 なんとか、服を着せた状態にしないと。


 でも考えても考えても、彼女の究極な裸体が脳裏に浮かんで、どんな服装も霞んでしまった。

 あれほどしなやかな均整の取れたプロポーションは見たことない。

 それでいて巨乳だし。



 でも、なんとかしないと嫌われる。

 昨日の夢ではさらに嫌われたかもしれないし。


 裸以上に強烈な服を想像することで、対処しようとした。

 いろいろ考えているうちに眠りへと落ちていた。

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