第2話 転生キャラ制作
事故で死んだ僕は転生することになり、真っ白い部屋でタブレットPCをいじっていた。
画面下の『転生しますか?』ボタンを押すと新しい画面が現れた。
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名前:
種族:
性別:
年齢:
職業:
天恵:
技能:
残りポイント:300(転生時基礎ポイント100+前世未使用持ち越しボーナス200)
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のっぺらぼうの人物の横に、空欄のステータスが表示される。
『名前』をタップしても反応なし。これは自分で付けるんじゃないのかな。
まあ、それもそうか。
赤ちゃんだって自分では名前付けないんだし。
無視して次!
この300ポイントをいろいろ割り振るんだろうな。
あれ? 前世持ち越し? 200ポイントもあるならマイナス技能を取る必要なかったじゃん!
前世の自分、何考えてたんだか。
ポイントを余らせてるとボーナスが付くみたいだけど。それ狙いか?
何か考えがあったのかも知らないが、32年間も苦渋を舐めた身としては、好き勝手させていただく!
とりあえず『種族』をタップするといろいろ出た。
人間、猫獣人、狼獣人、エルフ、ドワーフ、
妖精、ゴブリン、トロール、蟻、草、木、石、池…………。
物凄い数だ。微生物もある。
さすがに木や石に転生する気にはなれない。
魔族とか魔王はさすがになれないみたいだ。そもそもいないのかもしれない。
やっぱ、人間か。長生きしそうなエルフもいいな。ゴブリンで無双なんてのも楽しそう。
――いや、どうだろう。
転生した先がまた日本みたいな世界だと、おかしなことになる。
どんな世界なんだろう?
画面右上に表示されている『転生先世界一覧』をタップした。
すると候補は沢山あるのに、なぜか一つしか選択できなかった。
『転生先:ミドルアース』
さらにタップしてヘルプを開く。
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【ミドルアース】
すべての世界の中心。この世界を元にしていろんな異世界は作られた。
剣と魔法の中世風世界であり、人間、エルフ、ドワーフ、ゴブリンやドラゴンなど、雑多な種族が住む。最近、闇の勢力が活性化して各地で紛争が起きている。
一年360日の12ヶ月。一日24時間。
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ほう。地球と同じってか、地球のコピペ元かぁ。
各地で紛争ってのはやだなー。できれば楽してひっそりと暮らしたい。
まあ、現代地球規模の紛争じゃなくて、各地で部族同士の小競り合いぐらいだろう、たぶん。
中世風世界なら人口そのものが少ないだろうし。
『エルフ』をタップ。
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【種族:エルフ】
若い姿のまま千年以上生きる種族。多種族と交わらず、隠れ里にてひっそりと暮らす。
100歳までは何があっても死なないため、特殊用途の奴隷として重宝されている。捕まえれば金貨100枚で販売できる。
超長寿、容姿端麗、不老、魔法適正、精霊魔法、精霊言語、を種族ボーナスとして得る。
取得19ポイント消費。
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うぇ……。
なにか相当辛い状況に陥ってる様子。そのせいかポイントも低い。
これだとエルフに生まれても、ずっと奴隷商人に怯えて、隠れて暮らさなきゃいけないな。
せっかくの異世界なのに、それはつまらない。
いろいろ見て回りたいし。遊びたい。
……社会制度的に問題ないならハーレムとかも。
地球でモテなかったぶん、異世界で3倍はモテなきゃ釣り合わないよ。
となると、やっぱり人間だね。ポイント消費は0だし。
あれ? 超人間ってのがあるぞ?
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【種族:超人間】
人と同じ見た目だが、人よりもはるかに年を取りにくい。500年ぐらい生きる場合も。基礎能力が高く、長命と状態異常抵抗と技能経験値上昇が種族ボーナスとして付く。
取得30ポイント消費。
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これ結構いいんじゃない?
数千年だとさすがに飽きそうだけど、まあ300年ぐらい生きられたらこの世界も堪能できそうだし。
一応取得。残り270ポイント。
それからしばらく各種族の情報を見ていった。
時間だけはたくさんあるようなので、いろいろチェックしていく。
ゴブリンやコボルトなどはやはり弱い。その代わりポイントがプラスになったりする。
究極神話竜という種族にはちょっと惹かれた。光属性と闇属性を併せ持つ、最強のドラゴン。寿命は無限で、姿は自在に変えられる。
ただし取得するには1万2000ポイント必要だとか。諦める。
一通り種族を見終えてファンタジー世界なのは理解した。
どうやら人間の国は大きく分けて5つあるらしい。どれも大国。
小国では魔物の侵攻圧力に抵抗できないため、吸収や合併を繰り返して大国になっているようす。
あと冒険者ギルドもあるようだった。
となると『職業』は冒険者だね! 世界を見て回りたい――あれ? 『職業』をタップできない。
そうか。職業ってのはどこかに所属して初めて職に付いたと言える。
まだ生まれる前なんだから、無職ですらないのか。
じゃあ『天恵』と『技能』を取ってしまおう。
天恵は生まれながらに持つ特殊スキルみたいなものらしい。
後天的にも取得が可能だが、神の恩寵を受ける、悪魔に魂を売る、地震や雷に遭って九死に一生を得る、など難易度が高すぎた。
となると、生まれる前に絶対取っておきたいのはあれだ。
物の情報が見れるやつ。
鑑定眼とか鑑識眼とか。……あるよね?
『天恵』をタップして見ていく。これも膨大な数のスキルがある。
『身体的天恵能力』の項目かな?
見ていくと『耳が動く』とかまであった。消費1ポイント。
昔クラスで流行ったけど、動かせなかったのは天恵スキルだったせいか。なっとく。
あった!
『天恵能力:眼』の項目にそのものずばり『鑑定眼』があった。消費10ポイント。
あれ? 待って『鑑識眼』もある。消費20ポイント。
んん? 『真理眼』まである。消費40ポイント。
『千里眼』もある。『邪貴眼』『車輪眼』『透白眼』いっぱいあるなぁ。
慎重にヘルプを開いて全部見ていく。
なるほど。『鑑定眼』は物だけ。
『鑑識眼』は、物と魔物、両方。鑑識眼なら死体も物扱いになるらしい。
『真理眼』は物や人、魔物をより詳しく、天恵スキルまで見抜く。
『真理眼』を取ろう。
魔物や盗賊がいる世界なんだし。残り230ポイント。
遠くを見れる『千里眼』や、透視できる『透白眼』も欲しいところだけど、保留。
あとは何がいるかな。
冒険者になるなら、やっぱり魔法がいいな。
地球では魔法なんてフィクションでしかなかったし。剣術は日本にだってあるし。
しばらく天恵スキルを眺めた。
あっ『魔法適正』ってのがある。消費5ポイント。
これがないと魔法が使えないようだ。
取ろう。残り225ポイント。
するとステータス画面の『天恵』欄に『魔法適正Lv1』と表示された。
……レベルがある。
どういうことだろう?
ヘルプでチェック。
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Lvがあるものは最大値Lv5まで上げられます。
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それだけじゃわからない。
Lv1とLv5ではどう違うんだろう?
例えば柔道Lv1と柔道Lv5ならどう違う?
と思いながらタップしたらより詳しいヘルプが出た。
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Lv1が半人前、柔道部に入っても補欠レベル。騎士なら見習い。
Lv2が一人前、柔道部ならレギュラー。騎士なら正所属騎士。
Lv3がベテラン、柔道部ならキャプテン。騎士なら騎士隊隊長。
Lv4が師範や親方クラス。柔道部なら国体優勝。騎士なら王国騎士団団長、総司令官。
Lv5はその業界トップ。柔道なら金メダリスト。騎士なら剣聖や英雄と呼ばれる。
(所属や階級などは、練習量や国の規模によって変化します)
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ふ~ん。なるほど。
前世の僕で考えると、単純作業Lv2だったので一人前。あのまま工場で働き続けたらLv3になってベテランになってたのか。主任ぐらいかな。
でもそこ止まり。
学力半人前ってのがきついんだけど。
勉強は頑張ったつもりなのになぁ。
マンガやアニメ結構見たのに、オタク知識もにわかレベルなのがつらい。
ほかに何か原因があるのかもしれない。
とりあえず魔法適正を最大まで上げよう。
Lv2に10ポイント。Lv3に20ポイント、Lv4に40ポイント、って……めっちゃ消費する!
やっぱりLv5には80必要だった。合計150ポイント。
これ前世未使用分がなかったら取れなかったな。
それだけ強いスキルってことか。
まあ、取得したスキルはキャンセルできるし、試しにやってみよう。
残りポイントは75ポイント!
どんな魔法があるんだろう?
『技能』をチェック。
魔法は『火魔法Lv3/5』『水魔法魔法Lv3/5』『風魔法Lv3/5』『土魔法Lv3/5』『光魔法Lv3/5』『闇魔法Lv3/5』があった。
属性魔法っぽい。
5ポイント払うだけでLv3がいきなり取れる。ベテランだ。
魔法適正Lv5のおかげらしい。
6種類全部取って30ポイントか。
う~ん、でも器用貧乏になりそうだな。
それぞれをLv5にするとなると、大変そうだし。
僕にとってはこの転生は、ボーナスみたいなものなんだから、できるだけ楽したい。
何かほかに魔法はないのかな。
見ていると『精霊魔法Lv3/5』『神聖魔法Lv3/5』『生活魔法Lv3/5』『死霊魔法Lv3/5』『錬金魔法Lv3/5』『竜呪魔法Lv3/5』などに続いて『次元魔法Lv3/5』があった。
タップしてヘルプを見る。
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【次元魔法】
空間を切ったり繋いだりできる特殊な魔法。使いこなすには魔力よりも、とびきりの想像力が必要。何ができるかすら体系的にはわかっておらず、経験も積みにくい。そのため使用者はほとんどおらず、無価値な魔法とされている。
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ほー。面白そう。
魔法使いとしてベテランでも、発想が貧弱だと使いこなせないってわけか。
でもこれ、使いようによってはマジックボックスを作れたり、テレポートできたりするんじゃ?
待てよ……? 空間を切って繋ぐなら、遠くを見たりだってできるはず。建物の中だって。
さっきの千里眼や透白眼がいらない。
――取ろう。
いろいろ知識はあるんだし、僕なら使いこなせる気がする。
Lv3取得には5ポイント、Lv4は10、Lv5は20。計35ポイント。
なんか低い?
試しに火魔法を見てみるとLv3は同じ5ポイントだが、Lv4は25、Lv5は50。計80ポイント必要だった。
次元魔法は微妙な魔法とされているから、その分取得ポイントが低くていいんだな。
師匠とかもいないだろうからLv上げられなさそう。
残り40ポイント。