表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/32

第13話 イエスロリータハイタッチ!

 村の西にある林に着いた。時刻は昼過ぎ。

 心地よい木漏れ日が差し込んでいる。


 アネッサから薪にしていい木を教えてもらって伐採する。


 曲がった木を2本選んだ。

 次元魔法で枝を落とし、カットした。

 これで村60軒1か月分にはなる予定。


 15分ぐらいで終わった。

 ――もちろん、真理眼や千里眼を使いながら警戒しているため、本気を出せばもっと速い。



 でも、アネッサが目を丸くしている。

「すごいわね……風の魔法かしら?」

「お兄ちゃん、すごい! かっこいい!」

 ニーナは目をキラキラさせて飛び跳ねていた。


「ありがとう。まあ、これぐらいはね」

 辺りを警戒しながら、薪をマジックバッグに収納した。

 子供が行方不明になるような不審な点は見当たらない。


「ちなみに、子供が行方不明になった時間はわかります? 朝とか夜とか」

「バラバラね。一人になったところを狙われたのは確かだけど」

「そうですか。引き続き警戒しておきます」



 一度村に戻って薪を置くと、今度は南東へ。

 ニーナに歌を教えながら10分ほど歩くと、大きな池があった。

 いや、湖といってもいいかもしれない。

 周囲を歩くだけで数十分は掛かりそうだった。


「ここで水を汲むんですか? 西の畑にも?」

「そうよ。南と東の畑にはすでに水路が引いてあるけど、西側の畑は作ったばかりで工事が途中なのよ」

「あれま。治水は一番重要なのに……ああ、子供が行方不明になったせいです?」


「そうね。事件が起きてから捜索や見張りに人を割いたから工事ができなくなってね」

「なるほど……ん?」



 青い水を、なみなみとたたえた湖。

 表面は風によるさざなみで白く輝き、水鳥が3羽浮かんでいる。


 でも、今。

 真理眼を発動中の僕は、4つのポップアップウインドウを見た気がした。

 3羽なのに。


 下を見る。

 透明度が高く、湖底がかなり深くまで見える……。

----------------------------------------

名前:======【☆☆☆】

種族:ヒュージスライムEx

性別:両性具有

年齢:8

天恵:透明、隠密、物理攻撃耐性、水中呼吸、生命探知、食料探知、危険感知、出不精、執着心、ロリコン、ショタコン、

技能:触手Lv3、麻痺電撃Lv2、生物飼育Lv2


詳細……巨大なスライムで水辺を好む。中には水中で暮らせる固体も。触手で獲物を捕まえて体内に取り込む。生き物なら何でも食べる。火に弱い。毒に弱い。可愛い子供に弱い。

 Exになってから他生物を飼う趣味を覚えた。

----------------------------------------


 ――こ。



 こ、



「こいつだぁぁぁ!」



 傍にいたアネッサが目を丸くして僕を見た。ニーナは驚いて飛び上がった。

「ど、どうしたのいきなり!?」「びっくりした、お兄ちゃん!」


 僕は額に手を当てつつ尋ねる。

「アネッサさん、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「何よ、あらたまっちゃって。私今付き合ってる人いないけど?」


「まったく関係ない貴重な情報、どうもです。――スライムってどうやって倒します?」

「言ってくれるわねぇ。そりゃあ油まいて火をつけるのが一番よ。核球や核眼があるタイプなら、それを破壊すれば倒せるわね」


「スライムの体ってほとんど水です? 飲んでも問題ない?」

「毒持ちじゃなければ。生きてる水ともいえるから、手ごろな大きさなら水筒代わりになる種類もあるのよ」

「なるほど」

 岸の縁まで行って覗き込む。



 ――奴は湖の底に沈んでいる。

 透明なので見えないが、真理眼でポップアップの点灯と消滅を使えばサイズがわかる。

 大きさは湖の円周より一回り小さくて、直径700メートルほど。

 ヒュージというだけあってめちゃくちゃでかい。


 水の中なので油をまいても水面に浮いてしまって届かない。

 火魔法も届かない。


 だが、次元魔法なら奴の体に直接火をぶち込める!



「でも、他生物飼育が気になる……ひょっとしたら、生きてる可能性が……」

 変態に触手を与えた結果がこれか。

 水路を使って一人きりになった子供を引き釣り込んでいたのか。



「どうしたの、お兄ちゃん?」

「ニーナの友達、生きてるかもしれない」

「ほんとに!? わーい!」

 茶髪を揺らして飛び跳ねた。


 アネッサが太った体を揺らして首を傾げる。

「どういうこと?」

「この湖の底にヒュージスライムがいます」


「ええ!? ――何もいないわよ? 見間違いじゃない?」

 アネッサが目を凝らしながら呆れていた。 



「まあ、そうでしょうね」

 透明と隠密があるからね。

 隠密はスキルを使うまで気付かれないスキルだから。


 それにしてもロリコンでショタコンとは。業の深い奴。

 ――転生者だったりして。

 いや、さすがに考えすぎか。


 とりあえず、すぐには手を出さない。

 子供たちが生きている場合、こいつを殺すと一緒に死んでしまう可能性がある。



 僕は次元千里眼を駆使して湖をじっくりと見た。

 何も見当たらないが、それでも見る。


 隠しているなら、湖底に穴を掘っているんじゃないか?

 その上から自分の体で密閉している。


 でも、そうなると透明なんだから穴が見えるはず。それがない。



 ――いや、これは。

 湖底に大きな岩が見えた。直径10メートルほどの平たい岩。

 岩を被せて穴を隠している!?


「アネッサさん、行方不明になった子供は今のところ何人ですか?」

「5人よ。村の人以外に行方不明になってたらわからないわね」

「そうですか……」



 あの岩の下に5人いるとして、どれぐらいの深さなのか。

 適当に空間を切り取ってワープさせても、ヘタしたら真っ二つなんてことに。

 この村の子供だけじゃないかも知れないし。


 岩の周りを見て回る。

 周辺の湖底をよーく見ると、ところどころに隙間がある。


 ――そうだよね。飼っているペットは見たいもんね。

 光がないと見れないもんね。


 となると、中は上の岩より広そうだ。


 う~ん。

 いい方法が浮かばないな。

 湖は深いから、相当水圧が掛かってる。

 スライムを倒してからすぐに助けようとしても、そのまま水圧に押しつぶされる危険性がある。



 その時、ぴんっと閃いた。

「あ! だったら、水を抜けばいいのか」

「え?」「何言ってるの、お兄ちゃん?」


 ――次元倉庫なら水だけを入れることが出来るし。

 でも何トンあるんだ? さすがに一つの倉庫には入らないかも。


 今のMPは4000ほど。

 2200消費して新しく倉庫を2つ作った。

 めまいがしたけど、ギュット目をつぶって耐える。



「じゃあ、いきます――それっ!」

 まずは岩を倉庫に転移させた。

 スライムが支えている可能性が高いので。


 湖底に大きな穴が出現した。

 ――やっぱり!



 続いて水を同じ倉庫に入れる。


 ごごごごごっと音を立てて湖の水が消え去った。

 一つの倉庫に全部入った。



 後に残るのは、きらめく透明なスライム。


 二人が声を上げる。

「ウソ!? なんて大きさ!」「ひゃああ! 怖いよぅ!」


 スライム本体自体は透明だが、体表に残った水滴が光っている。

 水が急に無くなって、ヒュージスライムは体を震わせた。



 そしてヒュージスライムを次元移動!

 湖の北側に転移させた。


 平地に巨体がなだらかな半球状に聳えてプルプル震える。

 驚いているらしい。



 すかさず指差す。

「――次元連斬」


 ザザザザザァンッ!


 どこに核があるかわからないので滅多切りにした。



 ――と。

 ごごごっとスライムの体が弾けて水分があふれ出した。

「やべっ!」

 

 予備の倉庫にヒュージスライムを吸い込んだ。

 きれいさっぱり。



 湖底に目を戻すと、直径5メートルほどの大穴がしっかりと開いていた。

 水没はしていない様子。


 二人は呆然としている。

「なんて魔法なの……ユート、すごいわ……」「うん、しゅごい……」

 アネッサは信じられないといった目付きで「今のは、風と水? この子、2属性持ちなの?!」とブツブツ言っていた。



「行きましょう――危ないからニーナちゃんはここで待ってて」

 僕は足を滑らさないように湖の底へ降りていく。


「う、うん。気をつけてね、お兄ちゃん」

「待って、私も行くわ」

 どすどすと巨体を揺らしてアネッサもあとからついてきた。



 魚がびちびちと跳ね回る湖の底を、穴に向かって歩きながら考える。

 ――生きていてくれたらいいんだけどな……。

 スライムにとっての他生物なので、人間とは限らないかもしれないと今更ながらに思っていた。


 隣を歩くアネッサも顔が緊張で強張っている。

「無事だといいわね」

「そうですね」



 穴の縁に立つ。

 おそるおそる中を見下ろした。


 ――そこには、呆然と空を見上げる6人の少年少女がいた。

「よかったぁ、生きてる……ん? 6人?」


 よく見ると、一人は猫耳に尻尾を生やした、猫獣人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コミカライズが二巻まで発売中の新作をどうぞ!

追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【コミカライズ&書籍化!】

勇者をクビになったおっさんが、天使のようなヒロインをゲットして、ダンジョンマスターにもなって、いろいろ自由に生きていくお話です。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ