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共依存


 私が「ここなっつぱーりぃ☆」のしらゆきになる前は、スクールカーストの真ん中の方に居るようなタイプの学生だった。なんかチヤホヤされたいから、という理由でアイドルを志したが挫折し、自ら地下アイドルを名乗るようになった。自分の足で色んなイベント企画者に声をかけては撃沈した。そんな折に今の事務所に拾ってもらった。


 しかしまあ、現実とは無情である。


 何故かは知らないが、私より容姿が優れていないのに、私よりも売れているアイドルの方が多い。グループの中では一番私の人気が低い。交通費もろくにもらえないのに辺鄙なところでイベントがある。ギャラが著しく低い。野外イベントに出演するまでの設営等の準備時間を含め、同じ時間だけコンビニでバイトしてる学生の方が確実にお金が貰えている。理不尽な条件ではあるが、事務所の意向や命令を聞かないとグループから「不審な卒業」をさせられる上に事務所から追い出されるから、ただ黙って言われた通りにしている。というか、もっと売れればいいだけの話なのだが。


 そんな私にも、一定のファンがいる。どこで握手会をやっても熱心に追いかけてきてくれるのだった。

 彼はフリーターをしているようで、稼いだ金を捻出し、グッズ、CDを購入したり、地方イベントにも遠征してきてくれる。地下アイドルとしてよりも、むしろ、彼らのためにステージに立っていると言う方がしっくりくるような気がする。


 地下アイドルは、ファンとアイドルとの距離が非常に近いのも魅力の一つである。それゆえに起きた悲しい事件などもあるが、正直人気も知名度もない私には関係のないことだと思っていた。


 そう、所詮アイドルとファンだと思ってたのに。



 都内の某ライブハウス。別にバンドを組んで活動してるわけではないのだが、知名度の低い地下ドルには、100人入るか入らないか位のハコで丁度良い。


「しらゆきたそ〜!」

「視線ちょーだい〜」

 

 私の名前を何度も呼んでくれる熱心な私のファンの顔はもう覚えた。彼らも彼らで、私に認知……つまり顔を覚えてもらいたくて、彼らなりに頑張ってるらしい。ライブハウスは、最前列と演者の距離感が非常に近く、真ん中の列にいる人の顔もある程度分かる。


「今日はありがとう♡」

「またきてね!」

「大好き〜!」


 観客、ファンのみんなにありったけの感謝を伝えるために、笑顔と愛想、そしてコアな自分推しの人間達に『視線』を振り撒く。それは彼らを悦ばせるクスリの様なものなのかもしれない。



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