魂の病④
LoLをダウンロードしましたが、アップデートが中々終わらないので初投稿です。
数日続いた晴天も今日で打ち止めだった。どんよりとした厚い雲が空を覆い、霧のような雨がもどかしく降った。悪くない。適度な薄暗さと見通しの悪さはむしろ俺にとって好都合だった。雨風が強くなれば、奴らも自由に飛ぶことは出来なくなる。
しかし俺はヒカルをビルに残すことにした。不安は残ったが、来られても足手まといだったし、雨の中を連れまして病気になられたら俺には打つ手がない。
俺は外に出て建物の影から影へ移りながら、富士宮市の奥へと入っていった。
まずは話の分かる人間に接触することが肝要だ。甲州市民のように、鉄パイプを振り下ろさず、散弾銃を撃たず、ゆっくりとこちらの話を聞いてくれる人間だ。今、この日本からゆっくりと絶滅しつつある生き物だ。
南ずっと進んでいく。地図によれば、そろそろ富士宮市の中心部に辿り着く頃だった。色々な店やマンション、ビルだったものが並ぶエリアだ。典型的な日本の都会な街、といった風情だった。日本の都市は、どこへ行っても金太郎飴のように似たような光景になるのだろうか。
かつて栄華を誇った都市も、廃墟となってしまえば水源から遠く、また道路に覆われて作物が育たない住みにくい場所だった。だからあまり期待は持たなかったが、果たしてそこには人がいた。俺は驚いて、ビルの影から、ビルの中へそっと忍び込み、二階から彼らの住居を観察した。彼らは廃墟となったショッピングモールを自分たちなりに改良して住んでいるようだった。しかし俺が驚いたのはショッピングモールではなくそこに住む人々のことだ。
彼らは白人種だった。
この時代、EUは崩壊し、再びお互いをにらみ合っている。アメリカも内政で手一杯のさなか、日本に干渉する余裕を失っていた。それが日本の片隅に住み着いている。もっと事情を知っておく必要があった。外交問題に発展すれば、日本再生プロジェクトどころではない。
「日本再生? そんなの無理に決まってんだろ」
吾郎の言葉が蘇る。減少していく人口、崩壊していく都市、失われる技術、だが俺は首を縦に振るつもりはない。例え明日、アーマゲドンが起ころうとも俺は最後まで調査を諦めない。俺はそのために作られた装置だからだ。
ビルを降りる。彼は昨日のジェットスーツを着た奴らの一味か、それとも撃たれた家族の仲間か。俺はショッピングモールへ近づいた。ここまでこそこそ隠れておきながら、結局は出たとこ勝負で行くしか無い。玄関をノックして、どうもこんにちわだ。それが国勢調査というものだろう。
「ハロー?」
ショッピングモールの入り口へ入って俺は呼びかけた。吹き抜けには大勢の人々がいた。一瞬の沈黙、その直後にざわめきが起きる。
「Chinês! Chinês!」
「Onde um soldado está? 」
どうやら彼らの国語は英語ではないらしい。三十秒もしない内に俺の調査は失敗に終わった。建物の奥から銃を抱えた男や女が現れた。
「邪魔したようだな」
俺は踵を返してショッピングモールを出た。背後から銃弾が襲いかかる。姿勢を低くして道路へ飛び出し、狭い路地をめがけて走る。追われたままヒカルの待つビルに向かうわけには行かなかった。俺の能力なら皆殺しにすることも可能かもしれないが、時間がかかりそうだし、俺の仕事は調査だった。それにまだ俺をバラバラに出来る武器を隠し持っていないとも限らない。特徴的なエンジン音が辺りに響いた。昨日のジェットスーツが曇り空を背景にしてビルからビルへと飛び移っていた。これで逃げるのがまた難しくなった。
今回の調査でわかったのは、奴らは外国語を離し、白人種であり、ジェットスーツを持ち、銃で武装し、俺を見ると襲い掛かってくることだった。あれだけの装備を揃えて運用する技術と資源の出処が気になったが、それは後に回すことにした。とにかく今は逃げることだけを考えた。
ガラスを破って手近なビルの中へ入る。迷路に放り込まれたハツカネズミのように、俺は必死に出口を探し求めた。
三階の窓を破って、対面のビルに飛び移る。奴らが俺を人間だと思っている内は通用するトリックだ。二、三棟、ビルからビルへと飛び移った後に入り組んだ路地へ入り、尾行を確認しながら俺はヒカルのいるビルへと帰った。
「ヒカル! 久保だ! 無事か!」
俺はビルの三階にいるはずのヒカルに呼びかけながら、階段を登って部屋に入った。そしてガン、と何かで頭を殴られた。
「谁来了!」
聞こえた言葉はまたしても日本語ではなかった。
モチベーションが下がってきちゃったヤバイヤバイ(焦り)
読んでくれる人のためにも完結させなきゃ……(使命感)