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デモグラフィー  作者: paper driver
旧山梨県甲州市⇒旧山梨県甲府市
10/41

労働の産物⑥

初投稿です、俺は常に前書きでそう述べてきた。

しかしそれも限界だった。ネタは尽きていた。

だが俺は忘れていた。運命の女神は悪戯な救いをもたらすことを。

朝、目覚めた時、時計の針は嘲るように九時五十分を指していた。

仮面ライダー鎧武を見逃した。既にプリキュアも終わっていた時間だった。

自らヒーロータイム考慮して予約投稿したにも関わらず、俺は見事に寝過ごしたのだ。そして見逃した回に限って面白そうな話だったりする。

もはや何もかも手遅れだった。あとはDVD化を待つしか無い。魔女のために捧げる一万発の銃弾のように、たった一話のために時間と金、そして初投稿を捧げよう。

 屋上のドアには吾郎たちが張り付いていた。残りの階は全て制圧したという。


「奴ら、銃を持ってやがる」


 俺はドアから外を覗き見た。屋上にいる人間は三人。内二人は猟銃を持ってこちらに向けている。グレーのスーツを着た男が一人いた。どうやらあれが社長らしい。


「バカ、危ねぇ!」


 吾郎に襟首を掴まれて戻される。すると次の瞬間、散弾がドアの端をノックした。


「ちくしょう、これじゃ近づけない」


 仲間の一人が言った。散弾程度で俺の体は傷つかないが、あえて受ける趣味もなかった。


「下から行く」


 俺はそう言って階段を降りた。


「そこで待機しててくれ」


「下からって、おい」


 俺は五階に降りて、奴らの真下にある窓から身を乗り出し、窓枠を蹴って屋上の端を掴み、ヒールフックをかけて登った。三人は屋上のドアに気を取られて俺に気が付かなかった。処刑のためにわざわざ取り払われたフェンスの一部を潜って、俺は社長の頭上を飛び越えて銃を持った男の頭を蹴り、もう一人の腹を殴り、地面に叩きつけた。


「あんたがここの社長か?」


 グレーのスーツを着た男に問いかける。


「近づくな無職め! 私は社長だぞ!」


 どうやら社長でいいらしい。俺はそいつの胸ぐらを掴んで、俺が屋上へ忍び込んだ破れたフェンス、その奥の処刑台へと運んでいく。


「触るな! 派遣に劣る無職の分際で! 私を誰だと」


「社長だろ?」


 社長を右腕一本で虚空へ吊るす。下には何もない。地面と、こいつが突き落とした哀れな部下の死体以外は。


「お前を地獄へ落とす前に聞きたい。どこからパワードスーツの技術を得た?」


「放せ! 私は社長だぞ! 太陽と月を創造し、大地と動物を作り、世界に『売上』をもたらす神、かつて世界を支配した、企業を支配する一族の末裔だぞ! 私を信じるものは『株式上場』へ行き、従わぬものは皆、解雇されて『刑務所』へ墜ちる!」


「面白い宗教だな。気に入った」


 どうやらパワードスーツ技術の出処は聞けそうもなかった。


「一つ教えてやろう」


 俺は手を放す。社長は回転し、県庁の壁にぶつかりながら地面へ衝突した。


「『倒産』だ」




「カタはついたようだな」


 屋上から社長の死体を眺める俺に、吾郎が言った。


「お前のおかげで、ここもちったぁマシになるだろう」


「吾郎さん」


「何だ」


「俺は日本再生プロジェクトなんて無理な気がしてきたよ」


「日本再生? んなもん無理に決まってるだろ」


 屋上から引き上げる。県庁の壁に張ってある古いポスターには


『がんばろう! 日本』


 と書かれていた。


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人を偉大にするものはすべて労働によってえられる。

文明とは労働の産物である。

  ”スマイルズ「自助論」”

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次は長野へ行こうか、静岡に行こうか……。

明日も六時に予約投稿します。

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