第1話:マジメ代表小石川くん
自分でもジャンルがよく分かりません…。
楽しんで読んで頂けたら幸いです。
「…部長、今なんとおっしゃったのですか。」
「聞いてなかったのかな…はぁぁ」
そう言うと、部長は溜め息をついた。こういう仕草を女性社員は格好いいと思うのだろう。
部長といっても、僕の上司―二ノ宮部長―は29歳。社内でも一二を争うやり手だ。
「つまりだね…君は少々マジメすぎるんだよ、小石川くん」
「真面目のどこが悪いんですか。」
「いや、悪いとかじゃないんだ。ただ、マジメで普通すぎなんだなぁ、うん」
「駄目ですか。」
体が小刻に震えている。部長の中の何かが壊れたようだ。
「あのなぁ!君には個性がなさすぎるんだよ!マジで!これからは個性の時代だろ!?俺も部長として評価のしようがないわけ!分かる?」
2、3秒の沈黙。
「すまない…取り乱したようだ。さて、本題に入ろうか」
「真面目で個性がないというのが本題ではないのですか。」
「それが違うんだなぁ。君には、引っ越しをしてもらうことにしたんだ。
そう、エイチアパートに!」
エイチアパート…Hアパート…
「僕は卑猥なものは好きではありませんが。」
「いや、そんなんじゃないんだけど。エイチアパート、正式名称は変な人アパート。名前通り変な人が集まる場所だ。君にはそこで個性を学んでもらう」
そう言うと部長はカバンから何枚かの紙を出した。
「これが資料。いきなりだが、君は明日から1ヶ月の間、そこで暮らすのだぁ!」
「はあ。」
「っ驚け!明日かよ!とか思わないのかぁ!?」
「すみません。」
再び部長の中の何かが壊れた。
「…こほん。金は会社の金だから気にしなくていいし、明日ちゃんとトラックが来るからね」
「ありがとうございます。」
急な話だけど、お金のことや準備などは至れり尽せりだ。だから二ノ宮部長は有能なんだと実感した。
しかし、僕には一つ不安なことがあった。
「あの…僕なんかが入っていっていいのでしょうか。」「大丈夫、話はつけといたから。入居してる人も俺の知り合いばっかりだし」
そこまで言うと部長は優しく笑った。僕はもう一度お礼を言って頭を下げた。