3-3
「ご名答です。……我が名は神殿協会“アサシン部隊”グレイペヤード・ナットレースと云う」
「アサシン部隊……。噂には聞いていたがまさかこの場に現れるとは……」
グレイペヤードの話に最初に答えたのはロゼだった。
「ほぅ! ご存知でしたか?」
グレイペヤードはわざとらしく驚く素振りを見せて、薄ら笑いを浮かべた。
「……当たり前だ。……母を殺した連中だからな」
ロゼは一瞬躊躇いを見せたが、ゆっくりとその自分の言葉と対峙して……そして、決心したのか、ゆっくりと口に出した。
それを聞いてフランシスカは驚きを隠せなかった。よくよく考えれば先程の会話で“母に関する説明”が乏しかったのを思い出せる。即ち、彼女は彼女自身でその記憶を封印していた、ということに為り得る。フランシスカはそんなことを考えていたが、
「母を? ……あぁ、もしかしてあなたシャルーニュ公国の人間ですか」
グレイペヤードは無感動にこう告げた。
「……我々は一応傭兵みたいな役割でしてね。なんと言いますか……、半分神殿協会に仕えて我らが神に信心をしていますが、半分はただの傭兵です。言い方をもっと悪くすりゃ破落戸[ごろつき]です。……そして、あれは任務だったのですよ。私たちの上司神殿協会からの、ね」
「……即ち、母は神殿協会の真意に背いた、とでも?」
「そういうことなんでしょうね。神殿協会の真意に背くなんて相当な罰ですから殺されてもおかしくはない……んじゃないでしょうか?」
そう言ってグレイペヤードはまた薄ら笑いを浮かべた。まるで、ロゼたちを蔑むかのように。
「なるほど……。ならば、」
そう言ってロゼは何処からかサバイバルナイフを取り出し、構え、そしてグレイペヤードに向けて飛び込んだ。
「……でも、ちょっと熱すぎやしませんかねぇ。せめて作戦でも考えればいいものを」
ロゼにはなにが起きたか全く解らなくなっていた。
それもそうだろう。ロゼは今グレイペヤードに両手を捕まれ、抑え込まれているのだから。
「なっ……!! いつの間に?!」
ロゼはただ、驚くことしか出来なかった。
「力だけではなく、ココも使わないとね?」
グレイペヤードは頭の、ちょうどこめかみあたりの位置を指差しながら言った。
「……うぐっ……!!」
ロゼはその後自分でも気づかない内に意識を失い、眠りに落ちた。