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サリドはリーフガットとの通信を切り、指でオッケーのサインを作る。
それを見てグラムは、「おいおいおいおい。まじであの暴力上官、そんなの許可したのか?!」
「うん。許可、というか反論出来ないようにしといた」
「なんなんだお前、詐欺師の方が向いてるんじゃねえか?」
「ま、そうかもね」
……サリドたちの周りには何もなかった。
最初から、何もなかった。
「つーか、さすがの暴力上官も戦闘中に通信することはない、って思うんじゃねーのか?」
「そこは一種の賭け、ってやつだよ」
サリドとグラムは話ながら森の中を進む。
「にしてもどうすっかなー。ヒュロルフタームの攻略法」
「なっ?! まだ決めてなかったのか!!」
「いや、決まってるんだけど、それじゃあなんか決定打に欠ける気がするんだよねえ……」
「どうするんだよ? 俺に話してみろ」
グラムが言うと、サリドはグラムの耳元で囁いた。
「……ってやつなんだけど、どうかな」
「悪くはないけどそこまで誘き寄せるのが難しいな。失敗したらとんでもねーことになるけど」
「まあ、失敗したら仲良くあの世行きさ。とりあえず敵のヒュロルフタームを探そう」
「お前とあの世行きとか死んでもやだけどな」
サリドとグラムはそう話ながらさらに森の奥へ進んだ。
ズシィィン、と地面を揺らすような音がサリドの耳に届いたのは、そのときだった。
「どうやらお出ましのようだな」
「ああ。じゃあ、グラム。お前が囮な」
「は?! そこはサリド、お前じゃないのかよ!!」
「だって、この作戦の発案者は俺だ。俺にできる時間で考えてある。ということはお前が囮になるほかないだろ?」
「……」グラムは舌打ちして、「解ったよ。じゃあ俺は相手のヒュロルフタームをあの場所に連れていきゃあいいんだな?」
「ああ。よろしく頼むよ」
そう言って、二人は別れた。
――成功したら前代未聞となるであろう、『人間がヒュロルフタームを倒す』作戦のため。