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潜水艦から這い出てフランシスカたちがひとつに思ったことはこの異質なコンクリートである。
フランシスカたちを大きく囲むようにあるそれは彼女の頭の中にある情報と差違を生み出す。
「地図ならここは古い倉庫だったはずなのに……?!」
そう。
その、二人を囲むコンクリートは古い倉庫にしては、とても新しすぎたのだった。
「仕方ないですね……。倉庫として通用しない。何があるかもわからない。そんな場所、でいいですね?」
ロゼはそう呟いて、振り返ろうとした。
その時だった。
ガギザザザザ!! と上からナイフの雨が降り注いだ。しかしそれは綺麗にロゼの体を傷つけないようにもなっていたが。
しかし彼女が着る服装は別だ。彼女が着ていたジャケットやスカートはズタズタに切られ、裸体が露になっていた。
「ロゼ!!」
フランシスカは叫んでロゼに近付こうとする。
「近付くな!!」
ロゼは思いきり叫んでフランシスカを制止した。
なぜならまだナイフの雨は止んでいないからだ。そのまま飛び込めば彼女は串刺しとなり確実に絶命することだろう。
しかし、不思議な点がひとつだけあった。
それは、そんなにナイフがまるで雨のように降っているのに、天井には傷ひとつついていない。まるで天井からナイフが“生えてきた”ようだった。
「……スカートを穿くんじゃなかった。可愛さを追求した結果がこれですよ?」
ロゼは自分自身を指差し、自嘲するように笑う。
そして、
「自惚れるなよ。見えぬ敵。絶命させるまでその身を打ち砕いてやる」
ロゼは低く、冷たい声で言った。




