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「いえいえ、元はと言えば僕が話を切り出したからですよ。あなたは悪くありません」
そう言ってロゼは笑った。まるで、それは天から地を眺め、微笑む天使のようにも見えた。
「さぁさぁ、とりあえず二人とも、これからどうする?」
サリドが話を切り出した。
二人は同時に首を傾げた。まるで、どうするって? と言いたいばかりに。
「さっきロズベルグさんの方のボディーガードに確認を取ったのよ。こちらで行動を共にさせてもいいか、ってね。そしたら快く許可してくれたわ」
リーフガットが今は古い形態である折り畳み式の携帯電話を、ポケットに入れて、言った。ポケットの外から出た湯呑みを象ったキーホルダーが揺れる。
「……、」
「じゃあ、一緒にどこか回らない? ロゼ」
二人の反応は両極端であったが、ロゼはフランシスカの発言を聞くと、我に返って、
「あ、ええ。それもいいですね」
ロゼは堅苦しい言い回しで言った。何処と無く忙しない感じがしたがそれがフランシスカ以下に気づくことはない。
「じゃあ、六時までに帰ってきてね。それからは、トレーニングや調整を行うから」
リーフガットの発言に二人は頷いた。
さて、
「とりあえずどこに向かう? ロゼ」
「そうですね。ウエストエリアでカーニバルをやってますが、そちらに行きますか? それともセントラルターミナルの海底トンネルに行けばそこでしか見れない魚が見れますよ。もしくは……」
「ストップ。ロゼ」
フランシスカから停止命令が出てロゼは訳が解らないながらも、言葉の砲撃を停止する。
「どうしました? 体調が悪いですか。確かにこの頃はお腹が痛くなるけど」
「黙って。そうじゃないわ」
「……?」
「……、まぁ、とりあえず、セントラルターミナル? だっけ? にある海底トンネルに行きましょう。何処に行くかはそれから考えるわ」
フランシスカはそう言ってロゼと手を繋いで歩き出した。
ロゼがあまりよくわからずフランシスカの顔を見ると頬が紅潮しているのが見てとれた。
「……な、なによ」
「友達が、居なかったのか?」
「……、」
ロゼの言葉にフランシスカは小さく頷く。
「今まで友達なんて出来なかったから……。私は今まで研究所にいたし、そういう学校に通ってた。それに気づいたらもう私はヒュロルフタームなんていう人造人間型兵器に乗せられていた。名目上は人間だけど、そんなわけはない。あれは“バケモノ”よ。あれを人間と呼ぶ方がおかしいわ」
フランシスカは泣きそうな目でロゼに訴えていた。