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サリドたちが食事をし終わったのは午後2時を回ったあたりだった。
あんなにロゼに対してぶつくさだったフランシスカも、
「そういえば……栄養管理のことをとやかく言われたりしないの?」
「僕はなんでも独りでやりますから……。やろうと思えば料理だって出来ます」
これくらいの会話も出来るように打ち解けていた。
「そういえばフランシスカさんは家族は?」
「……フランシスカで良いわよ。だから私もロゼと呼ばせて」
「わかりました。ではフランシスカ。家族はいるのですか?」
「結局その質問なのね……。えぇ、兄がひとり。父はあの事故で死んでしまったから兄だけが唯一の親族、かしらね」
「家族がいるっていいことですよねぇ」
ロゼは楽しそうに笑う。そんな彼女の笑みはご飯茶碗よりもワイングラスの方が似合う気もした。
「……どういうこと?」
「いやぁ、お恥ずかしい話ですが、僕は実は現在の王子の異母弟妹なんですよ。父は現シャルーニュ公国国王。母はそこに仕えるしがないメイドでした。……彼は母に恋をして、そして僕が生まれた……。もっともそのころは跡継ぎの論争が激しく、僕は彼から捨てられました。……しかしノータの選出はDNAの検査で行う故に僕だけが選ばれました。まったく、皮肉なものですよね。国王から捨てられた僕が、今や国の最高級VIPなのですから」
場を沈黙が支配した。
「……あの、こんなこと、聞いてごめんなさい」
フランシスカは小さくお辞儀をして謝る。