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なぜか彼女が薦めたお店は懐石料理とかの高級店……ではなく一般人も訪れるような純和風の定食屋であった。
「僕はこういうのが落ち着くんですよ。それでも祖国に行くとごてごてとした高級感満載のものばかりなんですけどねぇ」
そう言ってロゼはオレンジのトレーをひとつ取り、そこに小松菜のごま和えが入った小皿を載せた。
今、彼女たちは完全にオフということもあり私服になっていた。
サリドはポロシャツにジーパン、またいつものウエストポーチも装着している。
グラムはちょっと派手なアロハシャツにハーフパンツにサングラス。少し浮いてる感じが彼らしい。
ノータの二人も彩り豊かな服装であって、しかし彼女ら二人の服装は両極端でもあった。
まず、フランシスカから見るとボーイッシュな服装だった。クリーム色のチノパンにグレーのシャツ、それにチャックの着いたパーカーを着ていた。
それに比べるとロゼはとても年頃の女の子のような格好をしていて。薄ピンクのブラウスに白のジャケット、オレンジのスカートに黒のニーソックス、ハイヒールといった感じだ。なんとなく、遠くから見ると二組のカップルが仲睦まじくご飯を食べているようにしか見えないが、それは置いておくこととする。
サリドたちが一通り食べ物を選び終え、会計を済まして、混み合う店内を眺めた。
「こいつは混んでるなぁ……。座るとこなんてないぞ」
これはまさかの立ち食い(テーブル無し)のテラス席かと思っていたが、
「なんだ。お前らじゃないか」
不意に後ろから聞いたことのあるような声がかかり、振り返る。
そこには、
「……リーフガット……さん?」
「あぁ。……で、お前らどうした? 席が空いてないと見てとれるが」
リーフガットの言葉にサリドは頷いた。
「それなら、私が食べてる座敷の方にこい。あそこなら人気もなく疎らだからな」
そう言ってリーフガットはすたこらと歩いていった。とりあえずサリドたちも後を追うことにした。
座敷は和風マニアのリーフガットなら大層喜びそうなものばかりだった。
全面畳敷き、掘り炬燵に座布団、茶室まであるのだとか。
そんな部屋にサリドたちはリーフガットに連れられ、やってきた。
「……ほんとに人が居ないですね?」
「あんまり声を大にしては言えないけどここは物好きしか来ないからねぇ」
リーフガットは少しだけ声のトーンを下げて、言った。
「……そういえば、なぜ別国のノータがいるんだ?」
リーフガットは不審に思い、尋ねた。
「申し訳ございません。僕の方からお呼びしたのです」
謝ったのはロゼだった。
「……名前と所属を」
「ロズベルグ・アーケンド・リボルティー。所属はシャルーニュ公国です」
「……なるほど。失礼しました」
名前を聞いて安心したのか、リーフガットはお辞儀する。
「……さ、食べよ。冷えてしまうし」
そんなことを言い出したのはフランシスカだった。
「そうだね。折角作ってくれたものを食べなきゃ。勿体無いもの」
そう言ってサリドは手を合わせる。
それを見てみんなも手を合わせる。なぜか完食したリーフガットもだ。
「「いただきます!」」
一斉に言い、サリドたちは食事を始めた。
次回更新:12/15予定
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