13
サリドとグラムはグランモーレの一階にある小綺麗なカフェテリアにいた。
カフェテリアは宿屋グランモーレの下請けで経営しているらしく、シスターが作戦会議をするなら、とそこを教えてもらったのだった。
「さて……ヌージャヤックか。大分距離があるな」
グラムはインスタントのコーヒーを旨そうに啜った。
「そこに行くには街道を使えば行けるかな。2日もすればいけれると思う」
サリドは携帯端末の画面に出てくる色々な情報を指で滑らせていった。
「……これは結構厳しいな……。姫様の症状が何時まで持つか、あのシスターも解らないって言ってたし……。簡単に済めばいいんだけどな」
グラムは先程頼んだフィッシュ&チップスを一欠片手に取り、それをサワークリームのソースにつけて口に放り込んだ。味は先ず先ずだが腹に入ればどうってことないし第一あの戦場で味わった軍用レーション消しゴム風味に比べればこの料理は世界三大珍味に等しいものを二人は感じていたのであった。
「……それじゃあ向かうか」
グラムは皿を適当に一ヶ所に集め、席を外した。
サリドも頷いて席を立った。
二人はここまで来るのに乗ったトラックに乗ることにしておいた。シスター・ビアスタが最新鋭の乗用車を用意してくれたものの、二人は今まで乗っていた車の方がいい、とそれを丁重に断った。
二人は今長い長い砂漠の上を走っている。太陽がまるでオーブンのように熱線を容赦なく二人に押し当てていた。
「畜生……。こりゃ熱いな……。まさかこんな砂漠があるなんて」
グラムは悔しがったのかアクセルを強く踏み込み、車のエンジンが轟音を上げた。
「まぁそう言わずに。これ使う?」
サリドは涼しそうな笑顔でグラムに何かを渡した。
それは、透明な薄い膜だった。正確に言えばその膜はさわると少し冷たくて、柔らかかった。例えるならば、ゼリーのような感触で。
「さっきシスターにもらったんだ。熱中症予防のフィルムで、所謂メンソール系の薬効成分を寒天に溶かし込ませたものなんだって。軍用のサプリメントと言って訳の解らない工業製品使うよりこっちの方がいいから、と。ま、よく言うオーガニックってやつ?」
「……それは意味が少し違わないか?」
グラムはそう言いながらサリドから貰った膜を額に付けた。