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そのころ、外では激戦が繰り広げられていた。
かたや世界最強の装備、ヒュロルフターム第三世代。
かたやヒュロルフタームの製造によって発展を妨げられた時代遅れの武器。
勝ち目は、見た目の時点で一目瞭然だった。
「……これほどに、強いだなんて……!!」
『どうやら君は見くびっていたようだな? 第三世代の凄さを』
「……どうして動力源を取り払っても動くことが……」
『「コード・ビースト」』
ヴァリヤーの言葉を聞いてリーフガットは身震いした。
『名前だけなら聞いたことはあるだろう?』
「……いえ、意味すらも知っております」
リーフガットは深く息をついて、
「『ヒュロルフタームの抑えつけられていた真の力を引き出す』コードでしたかしら?」
『そうだ。そのコードをつかえばおおよそ無制限に力を使うことが出来る。しかしデメリットも存在するわけだな?』
「たしか、暴走をする――正確にはヒュロルフターム個別の認識で動く……。だからノータの意志が通用しない」
『その筈だったのだよ。第二世代まではな』
ヴァリヤーが笑いながら、話を続ける。
『もしも、もしもだね。ノータがヒュロルフタームに溶け込んでそれで深いところから操っているとしたら?』
「……!! それは我々人類にとっては禁忌のはず!! どうしてそれができる!! サルベージできなかったらどうするつもりだ!!」
リーフガットは思わず第三世代に向かって叫んだ。
しかしヴァリヤーは声色を変えず、
『禁忌? サルベージ? そんなの関係ないだろう? 今私にとって必要なのは』
『「私にとって使えるか使えないか」だよ』
ヴァリヤーの言葉にリーフガットはうちひしがれていた。
「私は……、こんなやつの下に仕えていたのかっ……!!」
『……疲れたろう? 君には結構重荷を背負わせていたからなぁ』
「……なにを」
リーフガットがふと上を見るとリーフガットに向けて砲口が向けられていた。
恐らく、いや確実に、リーフガットを狙っている。
『君は今の今までがんばってくれたよ。私の計画の為にな。だから思うことなく死ね』
リーフガット目掛けてコイルガンが撃ち放たれる――!!
「……あれ?」
……はずだったのに、肝心の弾丸はリーフガットの体を貫いてもいないし、そもそも発射されたかも怪しかった。
『……なぜだ!? なぜヒュロルフタームのコイルガンが効かない?! この至近距離で撃てば避けられるはずがない!!』
ヴァリヤーが狼狽えていると、
『なにやってんだくそ親父。こんなとこでコイルガンを撃つとか何考えてるんだおまえアホなのか?』
発電所のメガホンごしに声が聞こえた。
『その声は……グラム!! 貴様いったいなにをした?!』
『何をしたって? さぁね。俺は何にもしてねーよ』
グラムは、乾いた笑いの後、
『あぁ。発電機をフル稼働させてコイルガンの弾道を変えるほどの磁力を発生させたことだけかな?』
ガクン!! とヒュロルフタームの機体が揺れる。コイルガンに装填されている金属に反応している。このままだと動きに制限がかかり、簡単に動くことができない。
『……』
ヴァリヤーは考えていた。
(まさか磁力を発生させるとは……。しかもコイルガンの弾道を変えるほど、だと? そんなの無理に決まってる)
しかし。ヴァリヤーは思わずそれだけを口に出した。
(結果的に今、それが為されてしまった!! このままだとまともにコイルガンを撃つことは難しいし、コントロールも不十分になっていく!! さて、どうしたものか……)
「マスター」
不意に、無機質な声が聞こえた。
「う……む」
ヴァリヤーはその無機質な声に曖昧に答えた。
声は、続く。
「マスター。このあと、どういたしましょう。出力をあと14.78%上げれば動力炉を傷つけることなく磁力にとらわれることなく動くことが出来ます」
「……そうか」
「稼働、させますっ」
少女の答えと同時に、コックピットが小刻みに揺れた。
ゴウン、と音が響き、揺れはさらに増す。