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「……どうなってるんだよ。これ……」
地上に出たサリドとグラムを待ち受けていたのは、黒い球体のようなものから手足が生えたような、ともかく、謎の物体がいた。
「……待ち伏せかよ!!」
そう言ってサリドたちは思いきり走る。
刹那。
ドゴォォォォン!! と地下街の出入口が崩れさる音がした。
「畜生!! あんな街中でコイルガンなんか撃ちやがって!! あれがもたらす磁場がどれほどの影響をもたらすって知らねーのか?!」
サリドは叫びながらもコイルガンの咆哮から逃げるために走る。走る。走る。
「というかだ。サリド!! なんでこんな街中に50m級のヒュロルフタームがいるんだ?! 格納庫にみんな保管されてるはずじゃねぇのか?!」
『これは、私独自の所有物だ』
背後から声が聞こえて、思わずそちらを振り返る。
声がする方向は――ヒュロルフタームからだった。
「なんだ? 最新型のヒュロルフタームには自動音声装置でも着いてるのか?」
グラムは驚いたように言った。
「いや、違うな。たぶんどっかにスピーカーがあってコックピット内のマイクを通じて……」
サリドがそこまで言ったときだった。
『ご名答! まさかそんな簡単に解くとはね。ヒュロルフタームの設計士を目指しているだけある』
スピーカーからまたも嗄れた声が聞こえてきた。
「まさか……親父、か?」
グラムが慌てた素振りで話した。
一瞬の間があって、『私は絶望したよ。まさかお前が素手でヒュロルフタームを倒すことになろうとはな』
「……素手でヒュロルフタームを倒す。このことに何処で絶望を感じるって言うんだよ」
『解らないか? 前にも話したが、人間がヒュロルフタームを倒すことは「あってはならない」のだ。今までヒュロルフタームは最強の存在、と呼ばれていたからな』
「……だからってな、それの結果がこれか?」
グラムはすっかり瓦礫の山となった街を眺めた。
『あぁ。そうだ。世界を元に戻すためにはどんな犠牲を払っても構わん。そして、その先にある事までもな……』
「ふざけんなよ」
グラムは声に抑揚をつけず、ただただ平坦な声で言った。
「なんでてめぇの勝手な野望のせいで街が破壊されなきゃなんねーんだ? 死ぬ必要のない人間が死ななければならなかったんだ?!」
グラムの叫びは地面を微かながら揺らした。
それでもヴァリヤーはひるまなかった。
「言いたいことはそれだけか?」
ただ、それだけを述べて。






