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フランシスカは急いでヒュロルフタームから出る。
そしてサリドの方へ一直線に走っていく。
そして、
「サリドっ!!」
「えっ」
振り返ろうとして、サリドはフランシスカに抱きつかれた。
「?!」
抱きつかれたサリドは驚いて、フランシスカの顔を見ようとして、
「見ないで」
その声を聞いて、サリドは顔を見ないで、照れくさそうに笑って、頭を撫でた。
「……俺、狙ってたのに……」
嬉しいのか、悲しいのか、ともかくすすり泣きするグラムは、誰からも放置されていた。
「……ありがとう。あんたの気持ち伝わった」
「それじゃ……」
「返事は、これが終わってからにしてくれないかな。いろいろ整理したいんだ。ただ、これだけは言える」フランシスカはゆっくりと顔を上げ、
「私も大好きだ。サリド」
それを聞いてサリド、顔を赤らめて、言った。たった、一言を。
「ありがとう」
と、泣きながら彼は言った。
「……じゃあ、行くね」
フランシスカは名残惜しそうに、ヒュロルフタームへと戻っていった。
サリドはそれを見て、まだ泣いていた。