表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FORSE  作者: 巫 夏希
『小人はガリバーにはかなわない』――グラディア侵略戦
2/207

「今日も平和だなあ……」


と薄い緑の迷彩服に身を包んだサリドという黒髪の少年は、背伸びをしながら、言った。


「……おーい。さぼるなよ。サリド」


隣でしゃがんでせっせと草をむしっている男は言った。


金髪で、無精髭を顎に生やしたその男はラッキーストライクのタバコでもくわえて、黒いサングラスをかけている方が、よっぽど似合う気がした。


だがしかしその男はあろうことか(というのはとても失礼だが)サリドと同い年の16歳。未成年である。


少年の名は、グラムという。


「わかったよグラム。でもね。俺は朝の背筋伸ばしをしないと一日が始まらないんだよ」


「よく言って。そんなことを30分もやってるくせにか?」


グラムは皮肉るようにサリドを笑った。


「所詮、戦争はヒュロルフタームとFORSEの戦いだ。人間の兵隊など、いらなくなった。」とか偉そうに言ってたのはどこの誰だったか。


確かに、戦争はなくならなかった。


それは、だれにだって解ってる。



ヒュロルフタームという存在が。



世界の戦闘のシステムを変えた。



「でも、ヒュロルフタームは最初は平和的活用だったんだぜ? 核戦争があって人間が住めなくなった地上を作り直すための」


「そうなのか?」グラムは今まで抜いた草を綺麗にひとつにまとめながら、「でも、実際は違うじゃねえか。ヒュロルフタームが平和的活用の為に作られたってんなら、今俺らはこんなところにいないぜ?」


そうだな、と頷いてサリドは遠くを見る。


そこからは綺麗な青空と大きなコンクリートの建物が一、二個が見えるだけだった。


「にしてもさ」


「ん? どうしたサルド」


「腹減った」


サリドの言葉を聞いたと同時に二人の腹の音がぐうと鳴る。


「……どうせレーションだしなあ。あのくそまずいレーション食うなら雪とか食ってたほうがマシだぜ」


グラムは立ち上がり、腰をぽんぽんと軽く叩きながら、言った。


「そうだよなー。せめて鹿とかいりゃな。塩焼きとかうめーんだろうけど」


「それがこのグラディアのだめなとこだよな。グラディアの、しかもこのへんは農牧なんてやっちゃいねえから鹿どころか生えてるのは野草だらけだよ」


ぶつくさ言いながら、グラムは自分の服にかけてあったホルダーから袋を取り出す。


袋を開け、そこからだしたのは白い小さな正方形の形をした何か。


それをグラムは口に入れる。


「うーん。やっぱ口の渇きをなくすには水がいいよなー。こんな唾液を出させるために、わざとカラカラのもの食わせるなんてな。そのうち唾液すらもでなくなるんじゃねーの?」


「そうとはいってもさー。やっぱ唾液にも限度があんじゃねーの? だからそれはあくまでも一時的なやつで、長期間の喉の乾きを癒すのは無理とかどうとか、開発した学者が教鞭で言ってたぜ」


サリドは近くにあったスコップを地面に突き立て、言った。


「そうだな。ともかく戻ろうぜ。昼飯がなくなっちまう」


「あのくそまずいレーションでも食わなきゃ力になんねーしな」


そう言って二人は基地に戻った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ